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2015.07.24.12.29

Could You Be Loved

粛清は終わった。
自室にもどった王は、溜息をついた。

主犯の裁縫師ふたり、かれらを紹介した廷臣、やつらのおためごかしに追従したもの、そしておれのおろかさをあげつらったあの餓鬼、すべては処刑した。

もう、ここにはだれもいない。
智慧のあるものはその智慧にふりまわされ、智慧のないものはそいつらに唯々諾々としたがう。結果、この国のありとあらゆるものがおれをなきものとした。
みなごろしだ。

やつらがあいしたのはおれではない。
おれのもっているものをあいそうとしたんだ。
やつらがおれにあいされたいとねがったことはない。
おれのてにしたものにあいされようとしただけだ。

王様ははだかだ。

まだ、みみにこびりついていやがる。
あらってもあらっても、まだきこえる。
いっそのこと、このみみを。

真実はすべてをまるはだかにする。
そうじゃない、けっして、そうじゃない。
ばけのかわがはがれたら、おれがはだかだった。そういうことだ。

王は先程から、おなじところをいったりきたり、逡巡してばかりです。
そのとき、扉をたたく音がします。
誰何した王にむかって、扉のむこうからこうこたえるのがきこえます。

「道化です」

そうです。彼こそたったひとり、王の粛清のてをのがれたもの、なぜならば、彼だけは王をわらうことをゆるされていたからです。
そして、彼は扉のむこうで、こうかたるのです。

「王よ、道化とかすのです。おのれのおろかさをわらわれたものがいきのこる唯一の方法です。おろかものとなって、いきるのです。いまや、あなたは世界いちのおろかもの。おろかものの王なのです。それをほこりとしていきるのです」

「わたしがあなたにしたがいましょう。なぜならば、あなたこそが道化の王、わが王なのですから」

[the text inspired from the song "Could You Be Loved" from the album "Uprising" by Bob Marley And The Wailers]


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