2015.07.10.12.03
ある夜のことだ。
ベッドにはいってうとうとしていると、父が部屋にはいってきた。
ぼくの顔を一瞥してこういった。
「なんだ、まだおきていたのか」
「ねむくないのか、ねむれないのか。そうか」
ひとりごとをいいながら、勉強机のわきの椅子をひきよせて、ぼくのそばにすわりこんだ。
はくいきがくさい。また、よっているのだろう。
「じゃあ、おまえがねむくなるまではなしでもするか」
勝手にむかしばなしをはじめた。
絵本や童話が必要なとしではもう、とっくにない。
だが、よっぱらいの父にさからうのが得策でないことも、充分に承知している。
彼のすきにさせる。
父がかたるおはなしは、昔話の主人公夫妻のわかいころの物語だった。彼らが老いとしをとるまえの、独身時代のエピドードだ。
きっと即興のくちからでまかせだろう。
よって呂律もまわらないうえに、前後のつじつまがあわない。まったくのでたらめだ。
どうでもいいはなしだった。
だが、だまってそれをきいていた。
なにかをぼくにつたえたかったのだろう。
ふたりが一緒にくらすまえで物語は中断した。ぼくがねむるよりもさきに、彼のほうがさきにねむりこけたのだ。
だから、ながれてきた桃をひろうのが、父の創作のヒロインなのかは、わからない。
その夜が、彼にあったさいごなのだ。
桃もながっれぱなしできっと、海まででて、そこでくさりはてるのだろう。
[the text inspired from the song "Ain't It Fun" from the album "Paramore
" by Paramore]
ベッドにはいってうとうとしていると、父が部屋にはいってきた。
ぼくの顔を一瞥してこういった。
「なんだ、まだおきていたのか」
「ねむくないのか、ねむれないのか。そうか」
ひとりごとをいいながら、勉強机のわきの椅子をひきよせて、ぼくのそばにすわりこんだ。
はくいきがくさい。また、よっているのだろう。
「じゃあ、おまえがねむくなるまではなしでもするか」
勝手にむかしばなしをはじめた。
絵本や童話が必要なとしではもう、とっくにない。
だが、よっぱらいの父にさからうのが得策でないことも、充分に承知している。
彼のすきにさせる。
父がかたるおはなしは、昔話の主人公夫妻のわかいころの物語だった。彼らが老いとしをとるまえの、独身時代のエピドードだ。
きっと即興のくちからでまかせだろう。
よって呂律もまわらないうえに、前後のつじつまがあわない。まったくのでたらめだ。
どうでもいいはなしだった。
だが、だまってそれをきいていた。
なにかをぼくにつたえたかったのだろう。
ふたりが一緒にくらすまえで物語は中断した。ぼくがねむるよりもさきに、彼のほうがさきにねむりこけたのだ。
だから、ながれてきた桃をひろうのが、父の創作のヒロインなのかは、わからない。
その夜が、彼にあったさいごなのだ。
桃もながっれぱなしできっと、海まででて、そこでくさりはてるのだろう。
[the text inspired from the song "Ain't It Fun" from the album "Paramore
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