2007.07.06.22.40

明日2007.07.07.は一千年に一度のセブンセブンセブンの日。これにちなんで『祝!40周年記念 ウルトラセブン大賞』が発表されたそうです(記事はこちら)。
その大賞受賞者はメトロン星人。『最優秀宇宙人』賞もあわせて受賞した。
この他には、『最優秀怪獣』部門にエレキング。
『最優秀メカニック』部門にはウルトラ警備隊の特殊車両、ポインターが各々受賞した。
この選考には、殆ど異論はない。前後篇一時間に渡ってウルトラセブンを苦しめる元祖合体ロボキングジョーや、ウルトラセブンを磔刑(The Crucifixion)に処してしまったガッツ星人等にも目移りしてしまうが。
にも関わらず、メトロン星人の受賞に関しては、諸手を挙げて賛同します。何故なら、彼が登場した『ウルトラセブン
『ウルトラセブン
ここ数週間、様々な大事件や大事故が頻発する。そして、それら大事件大事故の加害者や関係者が、ある特定の街の住人に限定される事が判明する。ウルトラ警備隊が偶然入手した、その街で販売されている煙草の中から、地球上には存在し得ないある結晶体が発見される。その結晶体には、それを吸引した人間に凶暴な殺意と悪感情を発生させ、狂暴化させる成分が含まれている事が判明する。友里アンヌ隊員(演:ひし美ゆり子)とモロボシ・ダン(演:森次晃嗣)=ウルトラセブンは、その街に急行し、煙草の進入経路の捜査を開始する...。
巨大怪獣や巨大ロボット、もしくはそれに代わる大量殺戮兵器を使用する事なく、人間どうしの信頼関係や感情的な絆を断ち切るという、メトロン星人の作戦自体が秀逸。しかも、その作戦の媒体(=メディア)が、当時の日本人が殆ど嗜んでいた煙草であるという点も優れている。
逆に言えば、現在の煙草を廻る評価の凋落を目の当たりにしたら、旧い作品となってしまった事は否めないけれども、かつては煙草は平和と友好を現すシンボル(例:American Indian Pipes (Calumet))だった事を憶い出せば、脚本を手掛けた金城哲夫の意図するものそれ自体は、充分すぎる程よく伝わる筈だ。
しかし、それよりももっと大事な事は、現実とくうそう(=SF)の接点。モロボシ・ダン(演:森次晃嗣)=ウルトラセブンが、妖し気な男性を追跡して入り込んだアパートメント。その一室に、メトロン星人が待ち構えている。そして二人は、あたかも小津安二郎(Yasujirou Ozu)作品の様なフレーミングで、ちゃぶ台を挟んで対峙する。ロー・アングル(Low Angle Shot)で凝視される、胡座座りのヒーローと侵略者の対話。これがこの作品の真骨頂だ。
物語の展開だけを考えれば、例えば、アパートメントの扉を開け放った瞬間に、まばゆいばかりの輝きに満ちた、異星人のコクピットが待ち構えていた。それでも、いいわけで。
しかし、金城哲夫=実相寺昭雄はそれを採らずに、現在の作品のかたちにしてしまう。
何故だろう?
物語の本筋にはあまり密接ではない、葬儀に参列する友里アンヌ隊員(演:ひし美ゆり子)を執拗に追い続ける視線の存在や、川崎の工業地帯を模した街並とそれを真っ黒に浮かび上がらせる紅く燃える夕焼けの空や、どこか悪い夢を観続けている様な映像美で本作品は綴られている。勿論、それを実相寺昭雄という映像作家独特の映像美だと言えばそれまでだが。
ps:現実とくうそう(=SF)の接点を考えるには、これも金城哲夫が脚本に関わった『ウルトラマン
ps 4 ps:遅きに失しているかもしれませんが、ソガ隊員(演:阿知波信介)のご冥福をお祈り致します。
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