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2015.06.23.12.47

きてえいいち

表題に掲げた木手英一 (Eiichi Kite) は通称キテレツ (Kiteretsu)。藤子・F・不二雄 (Fujiko F. Fujio) 作のマンガ『キテレツ大百科 (Kiteretsu Daihyakka)』 [19741977こどもの光連載] の主人公である。
この木手英一ことキテレツ (Eiichi Kite aka Kiteretsu)、ぼくから観ればどう観ても、藤子・F・不二雄 (Fujiko F. Fujio) 自身の投影にしか観えない。

と、ばっさりと書いてしまうと、あまりにも大雑把な断定にしか聴こえないから、多方面から苦情や非難が飛んできそうだ。

ひとつには曰く、藤子・F・不二雄 (Fujiko F. Fujio) 作品の子供向けマンガのどれにも、作者自身の投影と思われる登場人物達が登場しているでしょう、と。

それはそうなのだ。

マンガ『オバケのQ太郎 (Obake No Q-taro)』 [19641966週刊少年サンデー連載] の大原正太こと正ちゃん (Shota Ohara aka Sho-chan) しかり、マンガ『ドラえもん (Doraemon)』 [19691986小学館の学習雑誌連載] の野比のび太ことのび太 (Nobita Nobi aka Nobita) しかり、そこに登場する、勉強が苦手で運動が苦手でいじめられてばかりいる少年は総て、作者である藤子・F・不二雄 (Fujiko F. Fujio) の少年時代がそのまま反映されている。
そんな彼らの基に、折口信夫 (Shinobu Orikuchi) 的な言説を弄べば稀人 (Marebito) とも呼べるQ太郎 (Q-Taro) やらドラえもん (Doraemon) やらが顕れて、勉強が苦手で運動が苦手でいじめられてばかりいる少年にほんのすこしばかり、これまでとは違った小さな騒動や事件が起きていく。その結果、少年を含めた周囲の人物達が少なからぬ影響を受け、彼らにあらたな方向性や人間性が芽生えてゆくのだ。
藤子・F・不二雄 (Fujiko F. Fujio) の描く子供向けマンガは、非常におおきな視点から観れば、総てその様なモノとして総括出来る。
それ故に、木手英一ことキテレツ (Eiichi Kite aka Kiteretsu) が作者の投影である事は、自明すぎる程の自明な事なのである。

だからぼくは、最初に投じた文章を次の様に謂い換えたいと思う。

木手英一ことキテレツ (Eiichi Kite aka Kiteretsu) は、ぼくから観ればどう観ても、盟友であり終生のライヴァルでもあった藤子不二雄 (A) (Fujiko Fujio (A)) から観た藤子・F・不二雄 (Fujiko F. Fujio) そのままに思えて仕方がないのだ。
更に謂えば、藤子不二雄 (A) (Fujiko Fujio (A)) の自伝的マンガ『まんが道 あすなろ編 (Manga Michi)』[19701972週刊少年チャンピオン連載] に登場する、才野茂 (Shigeru Saino) こそ、木手英一ことキテレツ (Eiichi Kite aka Kiteretsu) ではないだろうか。そんな気がするのだ。
謂うまでもなく、才野茂 (Shigeru Saino) とは藤子不二雄 (A) (Fujiko Fujio (A)) によってその作品世界の為に、藤子・F・不二雄 (Fujiko F. Fujio) をモデルにして創造された人物だ。

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マンガ『まんが道 あすなろ編 (Manga Michi)』[19701972週刊少年チャンピオン連載] には、次の様なエピソードが登場する。
主人公である満賀道雄 (Michio Maga) [彼こそ作者藤子不二雄 (A) (Fujiko Fujio (A)) の曲がりなき投影である] と才野茂 (Shigeru Saino) が出逢って間もない頃だ。ふたりの共通の趣味がマンガである事を知った彼らは、才野茂 (Shigeru Saino) の手製の幻灯機 (Magic Lantern) で発表する為のマンガ作品を競作する事になる。
その際に才野茂 (Shigeru Saino) は、自身が発表する作品『天空魔 (Tenku-Ma)』に向けて、その作品の中心となる新兵器"天空魔 (Tenku-Ma)"の、三面図 (Three-view Drawing) を引くばかりかそれを基に模写用の模型をも作成してしまうのだ。
才野茂 (Shigeru Saino) の、そんな努力と技術に裏付けられた創造力 [と想像力]、そしてマンガにかける熱意に、満賀道雄 (Michio Maga) は自らのそれらの至らなさを思い知らされるのだ。
[掲載画像はこちらから、満賀道雄 (Michio Maga) [左] と才野茂 (Shigeru Saino) [右] :『天空魔 (Tenku-Ma)』のエピソードを紹介するのに相応しい画像が発見できなかったので、才野茂 (Shigeru Saino) の機智の一端が集約されているモノにした]。

この挿話での才野茂 (Shigeru Saino) を想い出す度にぼくは、自身の先祖であるキテレツ斎 (Kiteretsu-Sai) が遺した書物『奇天烈大百科 (Kiteretsu Daihyakka : Kiteretsu Encyclopedia)』を基に、コロ助 (Korosuke) を始め次から次へと、奇想天外な発明品を作りつづけてきた木手英一ことキテレツ (Eiichi Kite aka Kiteretsu) こそが才野茂 (Shigeru Saino) であり、作者である藤子・F・不二雄 (Fujiko F. Fujio) ではないだろうか、と想えて仕方ないのだ。

そしてこんな事も想うのだ。

ふたりの藤子不二雄 (藤子・F・不二雄 (Fujiko F. Fujio) and Fujiko Fujio (A)) の完全な共作であるマンガ『オバケのQ太郎 (Obake No Q-taro)』 [19641966週刊少年サンデー連載] では、タイトルそのままにQ太郎 (Q-Taro) が主人公だ。作者の投影とも思われる大原正太こと正ちゃん (Shota Ohara aka Sho-chan) はあくまでも脇役だ。異世界から顕れた稀人 (Marebito) であるQ太郎 (Q-Taro) がこの世界で起こす齟齬や軋轢の、とばっちりをまるまるひっかぶる場所に、最も近い位置にいる。
これがマンガ『ドラえもん (Doraemon)』 [19691986小学館の学習雑誌連載] では逆転現象が起きる。タイトル・ロールであり稀人 (Marebito) であるドラえもん (Doraemon) は最早主役ではない。彼は本来の主人公である野比のび太ことのび太 (Nobita Nobi aka Nobita) に、これから彼が起こすであろう騒動の動機、即ちひみつ道具 (Gadgets, Medicines, And Tools From The Future) を与える役に過ぎない。
それがマンガ『キテレツ大百科 (Kiteretsu Daihyakka)』 [19741977こどもの光連載] ではさらに加速する。主人公である木手英一ことキテレツ (Eiichi Kite aka Kiteretsu) が総てを [文字通りに] つくりだしているのだ。本来ならば稀人 (Marebito) としての地位にあるべきコロ助 (Korosuke) すらも木手英一ことキテレツ (Eiichi Kite aka Kiteretsu) による製造だ。
[あらかじめ念押ししておくけど、ここで展開すべき論説を単純にする為に、他の藤子・F・不二雄 (Fujiko F. Fujio) 作品に言及していないだけだ。マンガ『パーマン (Perman) [19661968週刊少年サンデー連載] を忘れている訳ぢゃあない。]
だからもし仮に、藤子・F・不二雄 (Fujiko F. Fujio) に早すぎる死が訪れなければ、もうひとつの『まんが道 (Manga Michi)』、つまり藤子・F・不二雄 (Fujiko F. Fujio) 版『まんが道 (Manga Michi)』が登場したのではないだろうか、と。

次回は「」。

附記:
才野茂 (Shigeru Saino) 創作のマンガ『天空魔 (Tenku-Ma)』に登場する新兵器"天空魔 (Tenku-Ma)"はマンガ『まんが道 あすなろ編 (Manga Michi)』[19701972週刊少年チャンピオン連載] に登場する幾つかのカットを観ると、まるで松本零士 (Leiji Matsumoto) のマンガ『宇宙戦艦ヤマト (Space Battleship Yamato)』 [19741975冒険王連載] のタイトルロールか、映画『惑星大戦争 (The War In Space)』[福田純 (Jun Fukuda) 監督作品 1977年制作] に登場した大魔艦 (Daimakan) の様なヴィジュアルだ。
だからと謂って、それらが才野茂 (Shigeru Saino) の『天空魔 (Tenku-Ma)』のパクリだ云々とか謂うのは筋違いで、その逆もまた然りだ。
それ以前に映画『海底軍艦 (Atragon)』 [本多猪四郎 (Ishiro Honda)) 監督作品 1963年制作] と謂う作品もあるし、第一、その原作は押川春浪 (Shunro Oshikawa) の小説『海島冐險奇譚 海底軍艦 (Kaito Boken Kidan : Kaitei Gunkan)』であって、1900年に発表されている。
つまり、戦後間もない頃に小学生だった才野茂 (Shigeru Saino) がおのれの創造の翅を思いっきり広げた結果、登場したとしても決して不思議ではない代物なのだ、才野茂 (Shigeru Saino) 創造の兵器、天空魔 (Tenku-Ma) とは。
つまり、マンガ『まんが道 あすなろ編 (Manga Michi)』[19701972週刊少年チャンピオン連載] の作者である藤子不二雄 (A) (Fujiko Fujio (A)) が、映画『海底軍艦 (Atragon)』 [本多猪四郎 (Ishiro Honda)) 監督作品 1963年制作] に触発されてその作品に天空魔 (Tenku-Ma) なる兵器を描いてしまったとも、必ずしも謂い難いのである。
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