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2008.06.03.20.12

せみ

ある暑い夏の午下がりの事でした。
当時、ぼくが暮していた、路地の向かいに住む同学年のMくんが、ぼくの家に駆け込んできたのは。

モノクロのブラウン管の向こうでは、甲子園の接戦が流れ、蒸し暑い室内をさらに蒸し暑くするかの様に、古ぼけた扇風機が五月蝿いおとをたてて回っていました。食べ終えたばかりの素麺汁は既にかたされて、ぼくの母が台所で洗い物をしています。テーブルの上には、飲みかけの麦茶が入ったガラス・コップだけが置かれています。

「これは、なんだろう?」

大慌てで汗だらけのMくんの掌には、茶色いかたまりがそっと置かれていました。何故ならば、その茶色いかたまりは、ぼくの指先がほんの少しでも触れると、壊れてしまいそうな程の、脆い存在だったからです。

ぼくの母はふたりの会話にはおかまいなしに、ガラス・コップに注ぎ入れた麦茶をMくんにさしだします。

「いまにもはしりだしそうだな」
「いきているんだろうか?」

その茶色いかたまりは、よく観ると何かに似ています。

images

せみにんげんかな?」
「せいかくにはちるそにあゆうせいじん!!」

よくみると、その歪んだ身体は上から下へと大きな裂け目があって、中ががらんどうであることが観てとれます。

「きっとさくせんにしっぱいしてしょけいされたんだ」

怪獣図解で覚えたばかりの、宇宙からの侵略者とその哀れな末路を、二人とも想い描いていたのでした。

次回は「」。
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