2015.04.19.10.42

この作品に横溢しているのは、ギター (Guitar) とビート (Beat) と、ヒロイズム (Heroism) だ。
凄く解り易い。
と同時に、極めて危険な状態に陥っている事も確かなのだ。
キリング・ジョーク (Killing Joke) と謂うバンドは、ポスト・パンク (Post-punk) の文脈の中から登場したバンドのなかのひとつであって、しかもポスト・パンク (Post-punk) と謂う字義の通りに、その言葉で括られる同時代のバンドとは殆ど提携した事はない。
パンク (Punk) と謂うムーヴメントの次世代と謂う意味合い以上の定義を、ポスト・パンク (Post-punk) に委ねないのならば、それは至極当然の話だ。
そんな呼称で呼び慣わされているバンド群の、音楽的な共通解を求めても、納得のゆくモノを見いだす事は不可能時に近い。
むしろ、音楽以前の要素に彼らの近似値を見いだす事の方が容易い様にも、思える。
それは、その時代を活きる人間の活きるべき有様とでも謂えば、良いのであろうか。
20世紀の終わり (End Of A Century) にあって、しかもその直前にメルクマール (Merkmal) としての1984年 [参照:ジョージ・オーウェル (George Orwell) 著『1984年
デタント (Detente) と謂う語句は囁かれているが東西の両陣営も健在であるばかりか、ベルリン (Berlin) はまだ東西に分割 (Berliner Mauer) [1948~1990年] されたままだ。
そんな時代のそんな土地に棲む人間の、危機意識を過剰に表出した結果が、ポスト・パンク (Post-punk) と謂う音楽である。
これはオーバーな表現なのだろうか。
そしてそれをさらにデフォルメしてみせたモノのひとつが、本作に収録された彼らの楽曲『エイティーズ (Eighties)』 [先行シングルとして1984年に発表] なのである [本作収録曲の『ヨーロッパ (Europe)』も同様]。
例えば、『エイティーズ (Eighties)』が10年後に曲名を変えて『ナインティーズ (Nineties)』となっても、いまのこの年に『トゥエンティーズ (Twenties)』となっても、恐らく、楽曲としての消費期限や賞味期限 (Shelf Life) は変わらない筈だ。この楽曲のプロモーション・クリップ (Promotion Video Clip For "Eighties") に登場する人物やそこで縮図となって登場する挿話は差し替えられるかもしれないが、今でも実は、有効なメッセージとして機能する可能性は、充分にある。
[10年、否、半世紀近い時間が経過しても、全くもって事態は変わっていないどころか、もしかすると、より慢性的な悪化へと加担してしまっているのかもしれない。でも、だからと謂って、それに個人レベルで対処し得る処方箋と謂うモノは、殆ど、進捗していないのだ。]
だから、本来ならば『エイティーズ (Eighties)』を始め、この作品に収録された楽曲はどれも、もっとメイン・ストリーム (Main Stream) でロックンロール・アンセム (Rock And Roll Anthem) 的な評価の許で、永遠のスタンダード・ナンバー (Standards Music) としての地位を得られたのかもしれない筈なのだ。
それが何故、出来なかったのか。
ひとつにはあまりにも、同時代に添い寝をしすぎてしまったから、とは謂えるのではないか。
当時、トゥー・マッチに思われたモノがそれ故に、普遍性を与えられるかと謂うと、それは逆だ。
と、同時に、その感覚はヨーロッパ (Europe) と謂う一地域のみで流通可能な思考 / 志向であったのかもしれない。
ひとつには本作品に続く作品群の方向性が彼らのファンの納得のいくモノではなかった事 [次作『漆黒の果て (Brighter Than A Thousand Suns)
本作品のメロディアスな部分、ロマンチシズム (Romantik) が、後に続く作品では、バンド本来の魅力である暴力的なリズム感を削いでしまっているのだ。
そして、そこで喪われてしまったキリング・ジョーク (Killing Joke) 的なアプローチを、後に続く米インダストリアル・ロック (Industrial Rock) 勢が巧妙に引き継いだからでもある。
ミニストリー (Ministry) のアルバム『ザ・マインド・イズ・ア・テリブル・シング・トゥ・テイスト (The Mind Is A Terrible Thing To Taste)
そして、米インダストリアル・ロック (Industrial Rock) 勢が引き継ぐと同時に排除したのが、本作品に溢れかえるヒロイズム (Heroisum) だとぼくは思っているのだけれども、如何だろうか。
一度は解散の憂き目にあった彼らが再結成し、1994年発表の『パンデモニウム (Pandemonium)
開き直ったと謂えば聴こえは良いが、彼らの核心にあるなにかが忘却されてしまっている様にも聴こえる。
キリング・ジョーク (Killing Joke) にしてキリング・ジョーク (Killing Joke) に非ず。全く異なったバンドの作品群だと思えば、純粋に愉しめるのだけれども。
[旧くからの彼らのファンがかつて本作品を、そう評していた事をふと憶い出した。]
ものづくし(click in the world!)150. :"NIGHT TIME" by KILLING JOKE

"NIGHT TIME
Side one
1. NIGHT TIME 4:55
written by Killing Joke (C) E. G. Music Ltd. 1985
2. DARKNESS BEFORE DAWN 5:18
written by Killing Joke (C) E. G. Music Ltd. 1985
3. LOVE LIKE BLOOD 6:48
written by Killing Joke (C) E. G. Music Ltd. 1985
4. KINGS AND QUEENS 4:38
written by Killing Joke (C) E. G. Music Ltd. 1985
Side two
1. TABAZAN 4:34
written by Killing Joke (C) E. G. Music Ltd. 1985
2. MULTITUDES 4:56
written by Killing Joke (C) E. G. Music Ltd. 1985
3. EUROPE 4:35
written by Killing Joke (C) E. G. Music Ltd. 1985
4. EIGHTIES 3:50
written by Killing Joke (C) E. G. Music Ltd. 1984
JAZ COLEMAN Keyboards / Vocals
GEORDIE Guitars
PAUL RAVEN Bass Guitars
PAUL FERGUSON Drums / Vocals
Recorded and mixed at HANSA TONSTUDIOS,
Berlin, August and September 1984
Produced by CHRIS KIMSEY
for Wonderknob Ltd.
Engineered by BRIAN McGHEE and THOMAS STIEHLER
Personel BRAD NELSON, ALEX ZANDER, FIL. E.
Sleeve ROB O'CONNOR and KILLING JOKE
photography JEFF VEITCH
(C) 1985 E. G. Records Ltd.
(P) 1985 E. G. Records Ltd.
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