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2008.05.20.21.11

すえつむはな

末摘花(The Safflower)」は、紫式部(Murasaki Shikibu)の『源氏物語(The Tale of Genji)』54帖のうちの第6帖にあたり、物語の主人公光源氏が出逢う姫君の呼び名でもある。
光源氏が18~19歳、前帖「若紫(Lavender)」に初登場した紫上[10歳前後]を自邸に迎えたばかりの頃で、姫君「夕顔」の怪異な死に遭遇したばかりの頃の挿話である。

物語そのものは、自他ともに認めるイケメン[既に死語か?]でヤンエグ[書いてて気恥ずかしいぞ?]な高級官僚が、セレヴ[この言葉もなぁ~]なお嬢様の不幸に乗じてモノにしてしまおうとしてみたら、ちょっとどころか大変にヴィジュアルに御不自由されている方[と婉曲的に表現してみました]だったというお話。
こうやって、現代に置き換えてリライトしてみたら、とっても安っぽい物語になってしまったのだけれども、実際のところ、『源氏物語(The Tale of Genji)』54帖の中でも、数少ない光源氏の失敗談であり、滑稽譚であると同時に、当時の精一杯の艶笑譚でもあるのだ。
実際、本帖の最後で、己の失敗を自嘲するかの様に、幼い紫上姫君「末摘花」の似顔絵を描いてやったりしているのだし。

ところが、物語がこれで終わっていれば、単なる一挿話ですむところを、紫式部(Murasaki Shikibu)はその後の姫君「末摘花」の行く末をきちんとフォローしてあるから不思議である。
光源氏須磨(Suma)~明石(Akashi)と流謫の身にある頃[第12帖「須磨(Suma)」~第13帖「明石(Akashi)」]は、一途に光源氏を待って寂しい哀れな侘び住まいを過ごし、その光源氏が復権すると同時に、彼の自邸に招き入れられる[第15帖「蓬生(The Wormwood Patch)」]。
光源氏との初めての逢瀬から数えると、約10年という年月が経過している。

単なる失敗談であり、滑稽譚であると同時に、当時の精一杯の艶笑譚にするつもりだったのならば、こういう脇役のフォローはしない。では、何故、姫君「末摘花」にこういう半生をあてがったのか? 
というのが、実はここで書こうとしている本題なのです。

それは恐らく、『源氏物語(The Tale of Genji)』が最初から長編小説という設定の基に書かれたからではないから、だろう。54帖が順番に第1帖から書かれたのではなくて、光源氏という名うてのイケメンでヤンエグでセレヴな高級官僚を主人公にした恋愛短編小説の連作を書き進めるうちに、次第にその主人公の悲劇的で宿命的な生涯を描く様に転じたのではないだろうか?[イケメンでもヤンエグでもセレヴな高級官僚でもないけれども、相当な技量を顕示した歌詠みを主人公に据えた恋愛短編小説の連作ならば、『伊勢物語(The Tales of Ise)』があります]
例えば、光源氏を主人公に据えた怪談[第5帖「夕顔(Evening Faces)」]を書いてみたら、そこに登場する生霊とは誰かを、宮中文学サロンで話題となって、その解決篇として、葵祭での車争いで有名な第9帖「(Heartvin)」を執筆する事になった、というような。

だから、姫君「末摘花」のその後の境遇も、読者つまり宮中の女御更衣から、求められての事ではないだろうか?

但し、例示した「夕顔(Evening Faces)」は、物語全体に置ける役割が「末摘花(The Safflower)」とは桁が違う。
夕顔(Evening Faces)」に登場するタイトルロールの姫君「夕顔」は、前々帖の「帚木(The Broom Tree)」での有名な"雨夜の品定め"を受けての登場人物であるのだし、その一方で、姫君「夕顔」の遺児である姫君「玉鬘」は『源氏物語(The Tale of Genji)』後半で描かれる悲劇の中心をなす重要な人物として登場する。
第5帖「夕顔(Evening Faces)」は、そういう意味では、単なる怪談エピソードというよりも、『源氏物語(The Tale of Genji)』全体の主幹をなす挿話なのだ。

ぢゃあ、何故、単なる失敗談であり、滑稽譚であると同時に、当時の精一杯の艶笑譚で終わる筈の、物笑いの存在すれずれの姫君「末摘花」が、最終的には光源氏の自邸に招かれて、経済的に救済されるのかというと...。

多分、彼女の様なちょっとどころか大変にヴィジュアルに御不自由されている方で、哀れな境遇の女御更衣が作者紫式部(Murasaki Shikibu)の周囲に数多く見受けられたから...。彼女たちへのこころの救済として...。

と、ここで書いてしまうと、世の婦女子に顰蹙をあびてしまうのでしょうか?

なお、ここまで書き進めてきた事は、学問的な裏付けがあってのものではありません。単に空想力の翼を広げてみただけです。
ご了承ください。

images

ところで。
「末摘花」キク科(Compositae)の植物、紅花(Safflower)の異名。最初、黄色い花を咲かせるが、次第に紅色に染まる。その花から紅色の染料をつくる事が出来る。

次回は「」。
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