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2008.04.29.19.53

むてき

霧笛(Foghorn)」と、書くと裕次郎(Yujiro Ishihara)や圭一郎(Keiichiro Akagi)や(Akira Kobayashi)や(Joe Shishido)な、往年の日活無国籍アクション活劇を思い起こす方々もあるかもしれない。
残念でした。
レイ・ブラッドベリ(Ray Bradbury)の短編『霧笛(The Fog Horn)』。彼の初期の傑作ばかりを集めた短編集『ウは宇宙船のウ(R Is for Rocket)』に収められている珠玉の掌編のお話です。

この物語の語り手である主人公と相棒のマクダン(McDunn)が、霧深い灯台で過ごした一夜の物語。破壊と恐怖の向こうで到達する事の出来る、悲哀と寂寥の物語でもある。

本作品のプロットをそのまま、作者の旧友であるレイ・ハリーハウゼン(Ray Harryhausen)が換骨奪胎して制作したのが、映画的なカタルシスに満ちた、かの映画『原子怪獣現わる(The Beast From 20,000 Fathoms)』で、この作品がさらに映画『ゴジラ(Godzilla)』への助走となるというのは、有名なエピソード。

images

但し、レイ・ハリーハウゼン(Ray Harryhausen)から円谷英二(Eiji Tsuburaya)、そしてそれ以降の映像作家がこの作品から汲み取ったのは、人智を超えた巨大生物の恐怖や畏怖であって、彼らはそれを描く為の手法として巨大生物による破壊と混乱と殺戮の描写へと、その道を選んだのだ。
だから、その破壊と混乱と殺戮の使徒(Angel)である彼らが、何の為に、何を意図して、その様な破壊行為に及ぶのか、というテーマは次第にスポイルされてゆく。
つまり、その生物に潜む破壊衝動の、その理由やそれに至る思考回路が理解出来ないが故に発生する恐怖や畏怖を描く物語が次第に増えていったのだ(映画『ジョーズ(JAWS)』以降に顕著になるのだと思うのだけれども)。
また、ゴジラ(Godzilla)・シリーズでは、それは天災の様にいずれ来るものとして、ゴジラ(Godzilla)への防衛手段を如何に構築するのかという描写をリアリズム化した世界観を提示する方向へと物語はシフトしていった。
それは、映像的なカタルシスをより強調する方向であって、映像にリアリティを要求するのならば、理解しがたい他者の内心の、そのもって回った理由づけや動機は、不純物の様な存在でしかないのも事実ではある。

しかしながら、太古の眠りから目醒め、平穏無事な悠久の地を放棄して、何故、彼らは人間世界を目指すのか。
原子怪獣現わる(The Beast From 20,000 Fathoms)』以降、それを主題とした物語は衰退の一途を辿る。
何故ならば、不幸にもそれを主題として、しかも、完成度の高い物語を、この掌編でレイ・ブラッドベリ(Ray Bradbury)が描ききってしまったからに他ならないからだ。しかも、この作品が描き得たものは、映像化が究めて困難な代物なのだ。

この作品が描き得たもの、それは孤独である。

恐怖の一夜を体験した語り手は、灯台守からさっさと足を洗って、堅気の生活に埋没してしまう。まぁ、これは、かのワトソン君(John H. Watson)始め、物語のナレーターという職業は、俗物の固まりみたいな人物でなければ勤まらないから、これはこれでよい。
彼らのほんのちょっとした好奇心があるからこそ、我々読み手は異様な事件を擬似体験し異常な心理状況を擬似体験する事が出来るのだ。

それよりも、考えなければならないのは、もう一人の主人公、マクダン(McDunn)が、昨日の続きの様に、恐怖の体験を一顧だにせずに、灯台守としての生活をさらに続けていく事だ。

彼もまた、掌編に登場した巨大生物同様に、孤独なのである。
しかも、彼の孤独は、他者と交わる事によって癒す事の出来るものではないのである。
それは、かのエイハブ船長(Captain Ahab)やネモ艦長(Captaine Nemo)が、人間界を捨てて、人智を超えた脅威との遭遇のみに、己の生を費やした、その感情と共通するものなのだ。

だから、マクダン(McDunn)を理解しようとする行為が、本作を読む事なのである。

次回は「」。
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