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2014.12.02.12.31

どくたー・きりこ

ドクター・キリコ (Kiriko) は、 マンガ『ブラック・ジャック (Black Jack)』 [作:手塚治虫 (Tezuka Osamu) 19731979週刊少年チャンピオン連載] の登場人物。全242話のエピソードのうち、ここのつの物語に登場している。


彼が登場する挿話のひとつ、第56話 (Episode The 56th.)『ふたりの黒い医師 (The Two Doctors Of Darkness)』のその表題が語っている様に、主人公ブラック・ジャック (Black Jack) [本名:間黒男 (Kuro Hazama)] の鏡面の様な存在だ。
ブラック・ジャック (Black Jack) が高度な外科手術 (Surgery) の技量で、決して助かる見込みのない、瀕死のモノの命を救済するのに対し、ドクター・キリコ (Kiriko) は、そのモノが決して助からないが故に、苦痛と恐怖を取り除く為に、安楽死 (Euthanasia) を施す。
だから、同じ患者に対して召集された現場でふたりは何度か遭遇し、それぞれの"医療方針 (Treatment Plan)"が全く異なるが故に、敵対し、そして対立をする。

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ブラック・ジャック (Black Jack) [左] の行手を阻むドクター・キリコ (Kiriko) [掲載画像はこちらから]

単純に考えれば、医療行為 (Medicine) としての安楽死 (Euthanasia) と謂う概念や存在はあり得るのだろうかと謂う疑義を作者である手塚治虫 (Tezuka Osamu) が表象させたとも考えられるし、それ以上に、医療行為 (Medicine) のすぐそばを常に併走する死 (Death) そのものを表象させたとも考えられる。

だけれども、何故、その為に、ドクター・キリコ (Kiriko) と謂う登場人物を必要とするのであろうか。
例えば仮に、主人公であるブラック・ジャック (Black Jack) 自身が、選択肢のひとつとして安楽死 (Euthanasia) の可能性ないしは必要性を欲する様なさもなければ検討せざるを得ない様な、極限的な状況 (Grenzsituation) を描く物語や主人公の葛藤を描く物語があっても良かったのではないだろうか。

そんな物語を描かなかった [もしくは描こうとはしなかった] 手塚治虫 (Tezuka Osamu) と謂う作者の資質に、その答えを求めるのは簡単だ。
ヒューマニズム (Humanism)、その一言だけで、ここまで綴ってきた様な疑義を足蹴にする事が可能なのかもしれない。

だけれども、この作品を連載時から読み耽ってきた様な読者や、この作品の歴史 [特に成立過程] を知っている様な読者ならば、気が付いている筈だ。
マンガ『ブラック・ジャック (Black Jack)』 [作:手塚治虫 (Tezuka Osamu) 19731979週刊少年チャンピオン連載] はヒューマニズム (Humanism) に根ざした物語として連載が開始されたとは、必ずしも謂えない事を。

マンガ『ブラック・ジャック (Black Jack)』 [作:手塚治虫 (Tezuka Osamu) 19731979週刊少年チャンピオン連載] の連載開始時の手塚治虫 (Tezuka Osamu) は不遇時代にあって、その当時の少年少女達の認識では、旧い、既に終わった、一昔前の漫画家であった。
だから、この作品も長期の連載を予定したモノとは謂えず、読者からの反応如何によっては、いつ打ち切りにあっても良い様な扱いだった。つまり新進作家の初の連載と同様のもてなしを手塚治虫 (Tezuka Osamu) は受けて立ったのである。この物語が1話完結の読切作品であるのも、恐らく、そんな事情からなのであろう。

だから、物語の主人公であるブラック・ジャック (Black Jack) も正体不明の謎の医師 (Doctor) として描かれており、しかも彼の描写は、現在の認識とは真っ向と違う、悪役としてのそれだった。
つまり、物語のなかに存在するブラック・ジャック (Black Jack) のパブリック・イメージ (Public Image)、篦棒な医療技術を盾に、超高度な外科手術 (Surgery) を弄んで、法外な治療費 (Health Expenditures) をせしめる悪徳無免許医 (A Doctor With No Medical License)、それがそのまま彼自身のキャラクター設定であったのだ。
つまり、マンガ『ブラック・ジャック (Black Jack)』 [作:手塚治虫 (Tezuka Osamu) 19731979週刊少年チャンピオン連載] と謂うのは、一種のピカレスク・ロマン (Novela picaresca) として連載が開始されたのである。

それが連載が継続されるに従って、主人公の内面や彼が辿った生涯や医師としての動機や経歴が描かれて行くのに従って、当初の設定とはそぐわない部分がいくつも出てくる。
ピノコ (Pinoko) と謂うコメディ・リリーフ (Comedy Eelie) が登場したのも、その一因だ。

そうやって、はじき出された個性のいくつもが、マンガ『ブラック・ジャック (Black Jack)』 [作:手塚治虫 (Tezuka Osamu) 19731979週刊少年チャンピオン連載] に登場する数多くの医師達 (Doctors) に発見する事が可能であり、その最もおおきく抽出されたモノが、恐らく、ドクター・キリコ (Kiriko) と謂う登場人物へと結晶化されたのではないだろうか。

次回は「」。
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