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2014.11.25.12.23

ろすとわーるど

小説『失われた世界 (The Lost World)』[作:アーサー・コナン・ドイル (Arthur Conan Doyle) 1912年発表] は、小学生の学級文庫 (Classroom Library) に収蔵されていたジュブナイル版『うしなわれた世界』 [訳:土居耕 (Kou Doi) 岩崎書店 (Iwasaki Shoten) :但しこちらで紹介されているモノとヴィジュルが異なる] で読んだ。以前、こちらで紹介した小説『ドウエル教授の首 (Zaveshchaniye professora Douelya / Professor Dowell's Head)』[アレクサンドル・ベリャーエフ (Alexander Belyayev) 著 1925年発表] のジュブナイル版『合成人間ビルケ』 [馬上義太郎 (Magami Yoshitaro) 訳 井上洋介 (Yosuke Inoe) 岩崎書店刊] と、同じシリーズだ。
つまり、ぼくはそこに収められていた同シリーズの作品を次から次へと読み倒していた様なのである。

粗筋としては至って簡単で、南米 (South America) の奥地に、ジュラ紀 (Jurassic Period)~白亜紀 (Cretaceous Period) そのままの恐竜 (Dinosaur) 達が棲息している事が発覚し、探検隊 (Expeditionary Party) を結成してその地を訪れると謂うモノである。

その際の読後感としては、その時季にやっぱり読んでいた小説『地底旅行 (Voyage au centre de la terre)』 [作:ジュール・ヴェルヌ (Jules Verne) 1864年刊行] のジュブナイル版 [恐らくそれらとは異なるシリーズなのは確かだけれども訳者や出版社は流石に憶えていない] と同工異曲 (It Is To Be Cut From The Same Cloth.) だなぁ、くらいの感慨しか持っていなかった様な気がする [こちらで描写される地底行の中にも恐竜 (Dinosaur) 達は出現するのだ]。
むしろ、吃驚したのはその作者がシャーロック・ホームズ・シリーズ (Canon Of Sherlock Holmes) [18871927年間に発表] の作者と同一人物であると謂う事であって、しかも、そのシリーズを発表した後年の作品である事の方がむしろ意外だったのだ。推理小説 (Detective Story) と謂う新しいジャンルで成功する前の、試行錯誤 (Trial And Error) 時代の作品であると説かれれば、まだしも、なのだったのだが。

だからと謂って、この作品が面白い面白くないと謂う観点からの、感想ではないのだ。その当時、読んでいたサイエンス・フィクション (Science Fiction) と謂うジャンルの作品は、『合成人間ビルケ』 [馬上義太郎 (Magami Yoshitaro) 訳 井上洋介 (Yosuke Inoe) 岩崎書店刊] も含め、小学生のぼくにとっては文字通りの奇想天外 (Totally Unexpected) な作品ばかりだったからである。
現在の視点から謂えば、スチーム・パンク (Steampunk) とも断定出来てしまえる様な、ジュール・ヴェルヌ (Jules Verne) 作品においても、である。

むしろ、小説『失われた世界 (The Lost World)』[作:アーサー・コナン・ドイル (Arthur Conan Doyle) 1912年発表] は既に古典的な佇まいを、小学生のぼくの視点から観ても、帯びていた様なのだ。

実際問題、シャーロック・ホームズ・シリーズ (Canon Of Sherlock Holmes) [18871927年間に発表] が推理小説 (Deteictive Story) としての古典であるのと同様に、この作品もサイエンス・フィクション (Science Fiction) の古典であるのは間違いはない。
だが、ぼくが指摘したいのは、そおゆう教科書的なモノからではない。

人外魔境 (Uninhabited Area) の、未開の土地に、現代文明の恩恵を受けた人間達が、故意もしくは偶然によって接し、そしてそこで手に入れたモノをそのまま、おのれ達が暮らす大都市にもってきてしまう。当初は、物の見事に蹂躙ないしは服従せしめていたそのモノがある日突然、彼らの手から逃れ、大都市に破壊と恐怖をもたらす。
そんな物語が、日常的にぼく達の世界に、溢れかえっていたからだ。

東宝 (Toho)~円谷 (Tsuburaya) 作品で謂えば、映画『モスラ (Mothra)』[本多猪四郎 (Ishiro Honda) 監督作品 1961年制作] がそれに当たり、大映 (Daiei Film) のガメラ・シリーズ (Gamera Series) で謂えば、映画『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン (Gamera vs. Barugon)』[田中重雄 (Shigeo Tanaka) 監督作品 1966年制作] がそれにあたる。第一次怪獣ブーム (Kaijyu Boom I) を受けて制作された日活 (Nikkatsu) の映画『大巨獣ガッパ (Gappa, The Colossal Beast)』[野口晴康 (Haruyasu Noguchi) 監督作品 1967年制作] もそうだし、不可抗力 (Inevitable Accident) だが連れてきてしまったと解釈できるのであるのならば松竹 (Shochiku) の映画『宇宙大怪獣ギララ (The X From Outer Space)』[二本松嘉瑞 ( Kazui Nihonmatsu) 監督作品 1967年制作] もそうだ。

否々、国内の特撮怪獣ばかりではない。上に書いた映画作品と前後して、スクリーン (Screen) やブラウン管 (Cathode‐ray Tube) で体験したモノを上げていけば、同様のドラマツルギー (Dramaturgie) に従っているモノはいくらでも出てくる。
映画『大巨獣ガッパ (Gappa, The Colossal Beast)』[野口晴康 (Haruyasu Noguchi) 監督作品 1967年制作] と同趣向の [と謂うか元ネタの] 映画『怪獣ゴルゴ (Gorgo)』[ユージン・ルーリー (Eugene Lourie)監督作品 1961年制作] もあれば、西部劇 (Western) 時代のメキシコ (Mexico) を舞台とした [その結果、別の意味でのリアリティを獲得した] 映画『恐竜グワンジ (The Valley Of Gwangi)』[ジェームズ・オコノリー (Jim O'Connolly) 監督作品 1969年制作] もある。
冷静に考えれば、怪獣映画の原点と目される映画『キングコング (King Kong)』[メリアン・C・クーパー (Merian C. Cooper)、アーネスト・B・シェードザック (Ernest B. Schoedsack)監督作品 1933年制作] ですら、そうなのだ。大猿 (Big Aep) キングコング (King Kong) とヒロイン、アン・ダロウ (Ann Darrow) [演:フェイ・レイ (Fay Wray)] との間に発生する擬似恋愛的な感情から映画『美女と野獣 (La Belle et la Bete)』[ジャン・コクトー (Jean Cocteau) 監督作品 1946年制作] をも彷彿とされるが、ベースとなっているのは、秘境スカル・アイランド (Skull Island) からそこで最も強い怪物を連れ帰りニューヨーク (New York) で見世物にしようと謂う発想なのだ。

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と、昂奮気味に得々と書き綴ってはきたが、小説『失われた世界 (The Lost World)』[作:アーサー・コナン・ドイル (Arthur Conan Doyle) 1912年発表] では都市破壊そのものはない。秘境探検の成果でありその証拠として翼竜 (Pterosaur) プテロダクティルス (Pterodactylus) を連れ帰るだけで、しかも、彼は公開されるや否や、あっというまに大空へと帰ってしまうのだ。
都市破壊までも描かれるのはその小説を原作とした映画『ロスト・ワールド (The Lost World)』[ハリー・O・ホイト (Harry O. Hoyt) 監督作品 1925年制作] での事だ [上記掲載画像はそのポスター (The Poster)]。

だけれども、文明人が未開の地に向かったその鏡の反面の様に、その土地の生物が文明の最先端の土地に連れてこられ、その土地の人々に驚嘆を与えると謂う構図は、既にその小説の中で完成しているのだ。

それを考慮に入れれば、アーサー・コナン・ドイル (Arthur Conan Doyle) を、ジュール・ヴェルヌ (Jules Verne) やハーバート・ジョージ・ウェルズ (Herbert George Wells) と同様に、サイエンス・フィクション (Science Fiction) の開祖という地位を与えても、いいのではないかなぁ、とぼくは想う。

次回は「」。

附記:
映画『ロスト・ワールド (The Lost World)』[ハリー・O・ホイト (Harry O. Hoyt) 監督作品 1925年制作] が完成した当初、アーサー・コナン・ドイル (Arthur Conan Doyle) はその作品をドキュメンタリー (Documentary) だと謂って知人に公開したらしい。
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