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2014.10.19.10.01

『ポーキュパイン [やまあらし] (PORCUPINE)』 by エコー & ザ・バニーメン (ECHO & THE BUNNYMEN)

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彼らには、ユー・ツー (U2) になれなかったバンド、と謂う認識がある。
だが、ただ単純に謂ってしまえば語弊があるのは事実だ。ユー・ツー (U2) を目指し、ユー・ツー (U2) になれなかったバンドはごまんとあるのだし、しかもそれは過去の出来事ぢゃあなくて現在進行形 (Present Continuous) だ。

1983年の冬、レコード店に行けば、本作品とユー・ツー (U2) の第3作『ウォー [闘] (War)』[1983年発表] が並べて掲示されている。それは、輸入盤店 (Import Disc Shop) と謂う様な限られた極端な店舗ばかりではなく、一般のレコード店に行っても、その洋楽コーナーに行けば、同じ様な光景が観られた筈だ。
当時のぼくが通う大学生協 (University Co-operative Associations) でもやっぱり同じ様に配置されていて、ぼくが所有しているレコード (Gramophone Record) が日本盤である事から思い起こせば、そこでぼくは購入したんぢゃあないのだろうか [割引された生協 (University Co-operative Associations) 価格ならば、割安で販売されている輸入盤 (Import Disc) とさして価格差は生じない筈だから]。

並べられているのは、同時期に新作が発表された英国のバンドであると謂う理由以上に、どちらも冬のイメージを強く押し出していたからだ。
ユー・ツー (U2) はそこからのシングル・カット曲『ニュー・イヤーズ・デイ (New Year's Day)』と、ゲイトフォールド・カヴァーのインナーで雪景色に佇む4人の姿を追っている。
そして、エコー・アンド・ザ・バニーメン (Echo And The Bunnymen) に関しては謂わずもがな、である。

しかも、両者の作品を聴けば、それぞれが引用している冬と謂うモノ、雪というモノの認識が、全くもって対称的である事に気がつく。つまり、それぞれの音楽感、世界感と謂うモノが全くもって対称的であるのだ。
それはコアなそれぞれのファンでなくとも、当時の音楽シーンに習熟しなくとも、これら2作品を聴き比べれば、誰もが気づかざるを得ない様な、解りやすいモノだ。

つまり、その結果としての、レコード店舗でのディスプレイである訳なのだ。

それならば、その事を十分に認識していれば、エコー・アンド・ザ・バニーメン (Echo And The Bunnymen) はユー・ツー (U2) とは全く異なる思考と志向と嗜好をもったバンドである故に、拙稿冒頭の様な感慨とは無縁な筈なのだ。
にも関わらずに、そんな様に想えてしまうのは、彼らはザ・スミス (The Smiths) にもザ・キュアー (The Cure) にも成り切れなかったからだ。

そして、その原因を、それぞれのバンドの主導的な立場にある3人、つまり、エコー・アンド・ザ・バニーメン (Echo And The Bunnymen) のイアン・マカロック (Ian McCulloch) と、ザ・スミス (The Smiths) のモリッシー (Morrissey) と、ザ・キュアー (The Cure) のロバート・スミス (Robert Smith) と、彼らの資質の差異として捉えるのはとっても簡単な事なのだけれども、果たしてそれで目出度目出度の大団円にしてしまってもいいのだろうか。

また一方で、斬新でスリリングなギター・プレイを聴かせてくれる新世代の [と謂うのは、ソロ・パフォーマンスやギター・テクニックを駆使するかつてのギター・ヒーローとは異なる位相 (Topology) に彼らがいたからだ] ギター・ヒーローとして、ダニエル・アッシュ (Daniel Ash) [バウハウス (Bauhaus) 在籍 : 当時、以下同]、キース・レヴィン (Keith Levene) [パブリック・イメージ・リミテッド (Public Image Ltd) 在籍]、ジョン・マクガフ (John McGeoch) [スージー・アンド・ザ・バンシーズ (Siouxsie And The Banshees) 在籍] に対峙する存在として、ユー・ツー (U2) のジ・エッジ (The Edge) やエコー・アンド・ザ・バニーメン (Echo And The Bunnymen) のウィル・サージェント (Will Sergeant) を引っ張り出す事も出来てしまう訳だけれども。

[そおゆう結論でよければ、彼らをザ・フォール (The Fall) にもなれなかったバンドと、断罪する事も出来るんだよ。イアン・マカロック (Ian McCulloch) とザ・フォール (The Fall) のリーダー、マーク・E・スミス (Mark E. Smith) と比較して、ね。]

だから、この辺りは、エンターティメント・ビジネス (Entertainment Bussiness) との関わり方とも関係するわけだから、そう簡単には結論づけは出来ないし、してもいけない事なのだ。
ぼく自身の課題として、ここではこれ以上、言及はしない。

彼らの作品群の中では、個人的には本作品が最高傑作であって、その次作『オーシャン・レイン (Ocean Rain)』 [1984年発表] は糞だと思っている。
名曲『キリング・ムーン (The Killing Moon)』が収録されている事によって次作を推す声も強いのは知ってはいるが、あの作品は駄目だ。
彼らの音楽は、冬や雪に象徴され得る様な、厳しい現実に相対して、どんどんと自己の内面に降りていこうとする音楽だけれども、その作品では、そんな自分たち自身に酔っている趣が強い。
本作品ではそれが際どい直前で回避されている。
ふたつのシングルカット曲『バック・オブ・ラヴ (Back Of Love)』と『ザ・カッター (The Cutter) 』に聴けるシャンカール (Shankar) のヴァイオリン (Violin) が、彼ら自身の奏でる音楽ときりきりと鋭い軋轢を産んでいて、それが作品全体にいい意味での緊張感をもたらしている。
次作『オーシャン・レイン (Ocean Rain)』 [1984年発表] はそれを見誤ってしまったのだ。

ものづくし(click in the world!)144. :
『ポーキュパイン [やまあらし] (PORCUPINE)』 by エコー & ザ・バニーメン (ECHO & THE BUNNYMEN)


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ポーキュパイン [やまあらし] (PORCUPINE)』 by エコー & ザ・バニーメン (ECHO & THE BUNNYMEN)

Side 1
1. ザ・カッター THE CUTTER (3:52)
2. バック・オブ・ラヴ BACK OF LOVE (3:12)
3. ホワイト・デヴィル MY WHITE DEVIL (4:40)
4. クレイ CLAY (4:13)
5. ポーキュパイン [やまあらし] PORCUPINE (5:56)
Side 2
1. ヘッズ・ウィル・ロール HEADS WILL ROLL (3:31)
2. ライプニス RIPENESS (4:48)
3. ハイアー・ヘル HIGHER HELL (5:03)
4. ゴッズ・ウィル・ビー・ゴッズ GODS WILL BE GODS (5:25)
5. ブルーア・スカイズ IN BLUER SKIES (4:32)

■制作:キングバード

イアン・マカロック [ヴォーカル、リズム・ギター]
ウィル・サージェント [リード・ギター]
レス・パティンスン [ベース]
ピーター・ディ・フレイタス [ドラムス]

解説 大貫憲章
All lyrics transcribed by Linda Hennrick

"PINING FOR THE PORK OF THE PORCUPINE."

SHANKAR ARRANGED & PLAED STRINGS.
THE BUNNYMEN PLAYED NEARLY ALL OTHER INSTRUMENTS.
PRODUCTION BY IAN BROUDIE "KINGBIRD" AT ROCKFIELD & AMAZON STUDIOS.
MIXED AT AIR & MARCUS.
ENGINEERS … DAVE BASCOMB, PAUL COBALD, COLIN FAIRLEY, DAVE WOOLLEY, STEVE SHORT & STEVE PRESTIGE.
ALL COMPOSITIONS BY SERGEANT / McCULLOCH / PATTINSON / De FREITAS.
ZOO MUSIC / WARNER BROS. MUSIC LTD.

PRODUCTION, KINGBIRD.
PHOTOGRAPHY, BRIAN GRIFFIN.
DESIGN, MARTIN ATKINS.
(C) 1983 A Korova recording..
Distributed by WEA Records Ltd..

MANAGEMENT C/O KOROVA RECORDS ,

ぼくの所有している国内盤LPには、上記の通り、Jan. 23 '83付けの大貫憲章 (Kensho Onuki) の解説が掲載されている。
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