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2014.09.05.07.02

I want To Hold Your Hand

彼はおのれをのろっていた。そして、こんな運命をあたえた天と地をも。
もう3日もなにもくっていない。

かろうじて水だけはのめた。はらばいになり、足許の土をなめるのだ。みずたまりがあればなおさらのことだ。
その際、りょうの腕はたかくあげていなければならない。もしもまんがいち、その土にふれたとたん、それはそのまま黄金になってしまうからだ。

彼をすくうものはだれもいない。彼にてをさしだすものはだれもいない。
むすめも、妻も、腹心の部下も、黄金になってしまった。だからいまや彼のすがたをみると、だれもがにげさってしまう。

いやちがう。とうまきに彼のゆくえをおっている。彼がふれれば黄金ができる。そのおこぼれにあずかろうと、だれもが彼のあとをおう。

王とはなばかりのものなのだ。それをいやというほどしらされている。ただのかざり、なにもしらぬ阿呆にてっしてれば、だれもがうやまう。だが、富をみずからがうむとなると、途端にその地位をほうりだされる。しかも、その富をつかうすべがいまのおのれには一切、ないのだ。
ただの阿呆だ。いや、それ以下かもしれぬ。

いっそ、この右腕をおのが胸にあててみようか。おそらく、一瞬にして、心の臓は黄金へとかわり、またたくまにおのれそっくりの黄金の像ができるのにちがいない。そして、またたくまに、欲のつらのはったあいつらに解体されてしまうのだ。

そうおもうとくやしくてたまらない。
そして、それだけが彼がいまだにいきてさすらっている口実なのだ。

[the text inspired from the song "I want To Hold Your Hand" from the album "The Beatles 1962 - 1966" by The Beatles]


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