fc2ブログ

2014.08.29.07.56

Hotter Than Hell

これはあるおもいで。数十年前のことだ。

めがさめる。おそいあさ。
いつものようにだれもいない。ふたりとも出勤した。
食卓には、メモと新聞紙、ふたつとも今日のメニューだ。
ざっとめをとおしてメモは無視する。冷蔵庫にあるものを勝手にあさる。
くちいっぱいにほうばりながら、もうひとつのメニューをひっくりかえすとおおきな広告がめにはいる。
地元校応援のメッセージと、協賛スポンサーの雁首がいくつも並んでいる。

窓という窓をすべてあけはなつと、むっとする熱気と8月の日常がとびこんでくる。
おおどおりの喧騒、こどものなくこえ、ピアノ・レッスン。そして、せみ。
はすむかいの建築現場はいまはしずかだ。いや、そこからけたたましいラジオがきこえる。
大歓声を背景にカキン、金属音とともにおとこの絶叫ばかりがこだまする。

自室にもどって机にむかう。
つみあげられた参考書問題集、無造作にならんだ鉛筆と赤ペンと定規、けしごむ、蛍光ペン。
はじめるのは昨夜からのつづき。本番まで半年はきった。全国模試は3日後なのだ。

サイレン。さっきからがなりたてていたラジオも沈黙する。
かったのはどっちだ。違う。正午だからだ。
黙祷、その声が必要以上におおきくひびく。

時がとまったかのようだ。
せみだけがないている。まるで、この夏が永遠につづくかのように。

そして、白熱。
熱風が一面をやきこがして白濁、しろい闇が訪れる。

あれから数十年、復興がさけばれ、日常がおしよせる。
あの日のことをおぼえているものはもう、だれもいない。
だのに、ぼくはずっとここにたちつくしている。

いくあてもない。とりつくあいてもいないのだ。

[the text inspired from the song "Hotter Than Hell" from the album "Hotter Than Hell" by Kiss]


関連記事

theme : 今日の1曲 - genre : 音楽

a song for you | comments : 0 | trackbacks : 0 | pagetop

<<previous entry | <home> | next entry>>

comments for this entry

only can see the webmaster :

tackbacks for this entry

trackback url

https://tai4oyo.blog.fc2.com/tb.php/1559-b7199bf5

for fc2 blog users

trackback url for fc2 blog users is here