this night wounds time, No Self Control

2014.04.11.13.23

No Self Control

いずれにしろ、時間の問題だ。
もえつきるか、大激突、さもなければ、空中分解。
その前に、このおれはどうなるのか。
いきたままその瞬間をむかえるもよし、おのれの不運をののしりながら自殺するもよし、そのまえに正気をうしなって、発狂するも失神するも、おこのみしだいだ。

なんだ、すくない選択肢だな。

遺言は出発の際に、撮られている。万一の場合をおもんばかって撮影されたあれが、もうすぐ公開される。台詞は手渡されたものだった。今回のミッションの貴重なこと、そしてそれに携わる名誉のおおきさ、しかもそれを任命されたのがこのおれだと謂う幸運。
安っぽい原稿だ。
真実は封印する。だが、そのかわりのものはすべて、おまえのものだ。
つまりは、そういうことだ。

大陸から発射されたこの機は、惑星の周回軌道にのれぬまま、おちることになった。
それをふせぐてだても、おくらせる方法も、ここには一切ない。
おれをのせたまま、ゆっくりゆっくりと、そして、確実におちてゆく

みをよこたえて、しずかに最期のときをむかえようとしてもすぐにめざめてしまう。
一体、あれから幾時間が経過したのか、あれから幾日が経過したのか。
3日、1週間、10日、それとも1ヶ月。否、まだ、数時間、数分のことかもしれぬ。

計器は既におのれの無能をさらけだし、時計すらも満足に廻っていない。
華氏374度。湿度98%。
冗談を謂っていやがる。それとも、出来損ないのサイエンス・フィクションの様に、おれが変身したのか。
ここには鏡もないし、窓もない。
一体、あれからどのくらい時がたったのか、そして、あとどのくらいの時があるのか、一切、解らないのだ。

ああ、かあさん。ごめんな。
なんにもできなかったな。
でも、あんたの息子は名誉の戦死を遂げる。
あんたはその母親だ。
はえある母親なんだよ。
それで、我慢してくれ。

[the text inspired from the song “No Self Control” from the album “Peter Gabriel” by Peter Gabriel]