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2008.03.04.21.13

のーちらす

ノン・フィクションNon-fiction)という、当時の僕にとって耳なれない言葉がサブ・タイトルに入っている岩崎書店ジュヴナイルJuvenile : Young Adult Fiction)の数々をみつめて、さっきからずうっと悩んでいた。
もうすぐ、予鈴のチャイムが鳴って、昼休みも終るだろう。早く今日借り出す本を決めて、図書係に提出しなきゃ...どうしよう、どうしよう、......ほら、鳴った。
その時僕は、さっきから悩んでいた『コンチキ号漂流記(Kon Tiki)』ではなくて『原子力潜水艦ノーチラスUSS Nautilus, SSN-571)』の方を、慌ててひっつかんで、図書借り出しの手続きをしてもらった。
小学校中学年の、晴天のある日の事です。

その時、僕が借り受けた本『原子力潜水艦ノーチラスUSS Nautilus, SSN-571)』は、同名の米原潜が1958年に行った潜航状態での北極点North Pole)通過の物語をドキュメントしたものなのだけれども、その原子力潜水艦の名前は、かのジュール・ヴェルヌJules Verne)創造によるネモ艦長Captaine Nemo)なる人物が、操舵した潜水艦ノーチラス号Nautilus)から、その名を採っている。
海底二万里Vingt mille lieues sous les mers)』『神秘の島L'ile mysterieuse)』と、ふたつの小説にネモ艦長Captaine Nemo)共々ノーチラス号Nautilus)は登場し、重要な役割を演じている。また、ディズニーDisney)の映画『海底二万哩20000 leagues under the sea)』や『SF巨大生物の島Mysterious Island』を始め、様々な映像作品に、この艦長とその潜水艦が出演している。

この『原子力潜水艦ノーチラスUSS Nautilus, SSN-571)』を借り出した当時の僕は、そういった事実を果たして認識していたのかどうか、今では、思い出そうとしても思い出せない。ただ、判っている事は、その後、図書室で『コンチキ号漂流記(Kon Tiki)』を読もうとした事は一切なくて、ジュール・ヴェルヌJules Verne)~H.G.ウェルズHerbert George Wells)から始って、SFの古典的名作のジュヴナイルJuvenile : Young Adult Fiction)を読みふけった、と、書き記しておけば、ここでは、それで充分だろう。

ネモ艦長Captaine Nemo)のノーチラス号Nautilus)は、その後に続く、シービュー号Seaview)[from 『原子力潜水艦シービュー号(Voyage to the Bottom of the Sea)』]やスティングレイStingray)[from 『海底大戦争 スティングレイ(Stingray)』]や轟天号Atragon)[from 『海底軍艦Atragon)』]やわだつみ[from 『日本沈没Japan Sinks)』]の始祖だけれども、彼と彼が操舵する潜水艦は、決して、海洋冒険のヒーローとそのスーパー・マシンでは、決してない。
さかしまA Rebours)』の主人公デ・ゼッサントDes Esseintes)の住む住居の様に、この世のしがらみThis Mortal Coil : fromハムレット 第三幕第一場 / Hamlet, Act III, Scene 1, line 67)から己自身を隔絶させて、独り孤独な感興に耽り込む為の、自閉装置にすぎない。それは、産まれ出づる事を拒否した胎児が夢観る夢を保証する為の、いわば、夢孕む子宮なのだ。
つまり、ネモ艦長Captaine Nemo)は冒険家というよりも耽美者。敢て言えば、科学者。しかもその上に、接頭辞的にmadがつく科学者なのだ。
だから、ネモ艦長Captaine Nemo)は、彼に先行する多くの耽美者や科学者と同様に、己の描いた夢を追い求め、しかしながら、その夢の中に安住すらさせてもらえずに、その夢によって破滅してしまう。

images

ここに掲載する画像は、海中を潜行するノーチラス号Nautilus)船窓より海中を臨むネモ艦長Captaine Nemo)の勇姿(Captain Nemo observing a giant octopus from the viewing port of the submarine Nautilus)。この画像は、ここで描かれている室内が、潜水艦内部というよりも、あたかも、水中生物の行動を観察している科学者の実験室か研究所の様相を呈している。

ところで、ネモ艦長Captaine Nemo)とノーチラス号Nautilus)の衣鉢を継ぐ者がいるとしたら、一体、それは誰だろう? 先に挙げたラインナップの中では、大日本帝国海軍Imperial Japanese Navy)再興を謀る轟天号Atragon)[from 『海底軍艦Atragon)』]艦長神宮司八郎大佐が最右翼だけれども、そのアナクロニズムAnachronism)と誇大妄想(Megalomania)的なヴィジョンで言えば、彼に対峙するムウ帝国皇帝には、負けてしまう。つまり、映画『海底軍艦Atragon)』という物語は、ふたりのネモ艦長Captaine Nemo)的な人物が相対死を謀るという物語なのだけれども。
では、神宮司八郎でもムウ帝国皇帝でもないとしたら、誰だろうか?
敢て言えば、潜水艦を国家にしたてあげた海江田四郎艦長[from 『沈黙の艦隊』]だろう。彼の操舵する日本初の原子力潜水艦が、かの原子力潜水艦ノーチラスUSS Nautilus, SSN-571)同様に、潜航状態での北極点North Pole)通過の物語を達成したというのは、あまりに暗合を感じる。それは僕だけだろうか?
尤も、海江田四郎艦長[from 『沈黙の艦隊』]がネモ艦長Captaine Nemo)と異なる所以は、彼が説く"独立戦闘国家「やまと」"を遂に貫徹し、新しい世界構成のヴィジョンを描き切ったという点にあるのだけれども、ほら、それは彼の操舵する潜水艦が「やまと」と名乗っているからに他ならない。つまり、海江田四郎艦長[from 『沈黙の艦隊』]は、滅亡の危機から人類を救い得たあの「ヤマト」を操舵した、古武士の様な艦長のイメージをも踏襲しているからなのだ。

だから、あの小学校中学年の晴天のある日、『原子力潜水艦ノーチラスUSS Nautilus, SSN-571)』ではなくて『コンチキ号漂流記(Kon Tiki)』を選んでいたとしたら、その後の僕は今とはずいぶんと変わったものになってるのかもしれない。

次回は「」。
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