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2014.02.28.10.48

Hush

夜、自室でくつろいでいると、いきなり背後からなにものかにおそわれる。その突然の行為におどろいていると、そのもの達に猿轡をかまされ、からだじゅうをがんじがらめにされて、そのまま、かつぎだされる。じたばたするまぎわももちろん、たすけをもとめるてだてもない。かれらが用意してあったくるまにほうりこまれて、いずこともしれぬところへとつれだされる。

そんなゲームが流行ったのは、ぼくたちの高校生時代だ。

当時のぼく達はみな、ひまをもてあまらせていた。だからといって、かねはない。
アルバイトは禁止されていて、その上で、入学当初からすでに大学受験の準備が始まっている。夜、繁華街で遊びほうけるのには、親や教師の眼が五月蝿いばかりなのだ。
青春を、こんなうすよごれたことばは大嫌いだがこう書けばあんただって納得するだろう、謳歌すべきぼく達は、なかば、軟禁状態だったのだ。学校、予備校、自宅、そのみっつをぐるぐるまわりに収監されているだけなのだ。

よくかんがえてみれば、ぼく達はとっても臆病だったのかもしれない。自分一人のちからで、そんな環境からぬけだすための術も考えも、一切、わきあがりもしなかったのだから。
こんな日常はいやだいやだといいながら、その日常にどっぷりとつかりこんで、そのぬるま湯から出るに出られなかったのが、ぼく達なのだ。

だから、なかば強引に、非日常の鳥羽口にたってみる必要が、ぼく達にはあったのだ。しかも、それは、純粋にエンターテイメントとして存在している必要があったのだ。

このゲームがいつ、はじまったのかはわからない。
そしてだれが最初にはじめたのか、だれが最初の犠牲者なのか、いまとなっては、記憶は曖昧なままだ。

多分、クラスのいじめっこ達数名が共謀して、クラスのいじめられっこを誘拐したのだろう。

ルールは簡単だ。
誘拐する側から誘拐される側に事前に告知はする。これは犠牲者が大騒ぎして、おもわぬ大事件に発展させない為だ。ただ、いつ、どこで、犯行が執行されるのかだけは告げられない。そこまで事前に解ってしまっては、誘拐される側も、面白くないのだ。
なお、誘拐されたモノは、次回、誘拐する側のメンバーのひとりになる事が約束されている。これがあるおかげで、誰もが否応もなく、共犯者となるのだ。
抜け駆けや告げ口は一切、許されない。それは、このゲームに限った事ではない。

どんな手順で誘拐するか、それは、実際に誘拐する側がたてる計画次第だ。
そして、当然のように、ぼく達は、その計画を練りに練って、とてつもなくすばらしい誘拐計画に仕立て上げるのに、腐心するのだった。

誘拐した犠牲者を、その人物の自宅のそと、例えばガレージで解放してしまえば、それだけだ。
だから、誘拐した後、どこまでつれだすのか、どこへつれだすのかが、肝心なのだ。

あるチームは、郊外までくるまをはしらせて、その夜おこる流星群の乱舞をみてきた。
あるチームは、夜通し、ポルノ・ムーヴィーを鑑賞した。
あるチームは、後輩からの告白と交際の申し出の場をお膳立てた。

たわいもない、だけど、そんな愉快なイヴェントをあつらえるのに、このゲームはとっても有効に機能していたのだ。
そうして、それぞれの役回りがクラスを一巡する頃に、あの事件が起きたのだ。

[the text inspired from the song “Hush” from the album “Shades Of Deep Purple” by Deep Purple]


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