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2014.02.14.10.36

Far Away

ある夏の日のことだった。
遅い朝食をくいおわったころ、教え子が数名、遊びにきた。

いたずらざかりのおとこのこたちばかり、ひとりが手土産のすいかを抱えている。
男所帯のひとりぐらし。なにもない部屋でこれをくうのも無粋だろう。
せまい玄関でおちつかないかれらをまたせてそのまま、身支度をしてでかけることにした。
すいかも一緒だ。

角をまがるたび、通りをわたるたびに、じゃんけんをする。まけた子がその間、すいかを運ぶのだ。
こうすれば、そのさきでたべるすいかはおいしいのにちがいない。

そんなのんきなことを考えながら歩いていると、ひとりの子がぼくに文句をいう。
「先生は、なんで、じゃんけんに参加しないのですか」
普段からはしっこい、その子だ。だれもが都合よく忘れていた事をおもいださせる。

だからといって、すなおに彼のいうとおり、競技に参加するのも、無粋というものだ。
ポケットから一枚、とりだして彼にわたし、その先にある駄菓子屋の場所を教えてやった。
ぼくもちょうど、のどがかわいてきたからだ。

案の定、千円札をにぎりしめた彼を先頭に、全員が一斉に駆け出した。
すいかはぼくの足許におきざりだ。

すいかをぶらさげたぼくが駄菓子屋に着く頃には、全員がのみおわっていた。そして、わずかばかりのおつりと缶ビールひとつ、手渡された。ほんとうにはしっこいやつだ。
もし仮に、ぼくが彼と同級生だったのならば、おもいっきり、とっちめてやりたい程だ。

その缶ビールをのみのみ、ようやく、目的地の沢に着いた。ここの清流ですいかを冷やしながら、しばらく、かれらと遊んでいようという算段なのだ。
ここにはむしもいるだろうし、さかなもおよいでいるかもしれない。
ぼくがかれらのご機嫌をとらなくとも、かれら自身でなんとかするだろう。

おおはしゃぎのかれらをよそに、ぼくは石をほうった。
ほうられた石は数回、水をきってとぶ。
その数をかぞえながら、文庫を一冊、よみさしをもってきていないのを後悔した。

[the text inspired from the song “Far Away” from the album “All The Right Reasons” by Nickelback]


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