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2014.01.17.11.11

Bela Lugosi's Dead

滅びゆく種族だった。そしてその一切を象徴しているのが彼だった。

闇は奪われた。
信仰も宗教も、喪われて既に久しい。
かつては恐怖の象徴だったその存在が総て、白日の下に曝けだされた。

原因は、ある種のウィルスだった。
それに感染する事によって総てはひきおこされる。

一時的な仮死状態を経た保菌者は、極端な負の走光性をおびる。太陽光をおそれるのだ。
一方で食欲が極端に減退し、通常の食事をうけつけなくなる。消化器の能力が極度におちるのだ。
その結果、保菌者は、液体もしくは流動性のある高濃度のタンパク源を摂取する必要にせまられる。

そんな、にわかには信じがたい病状が、迷信をうみ、信仰をよび、そして、宗教が利用した。
かれらをかたる恐るべき逸話と物語は、それに便乗したのにすぎない。

種族、と書いた。いまや、種族ではない。
単なる病人、患者だった。

ウィルスは、生体どうしの接触感染によってのみ、伝染する。
感染者の行為が、夜の闇とともに語られるのも、そんなところによるのだろう。

感染源であるウィルスの発見と、その感染経路がわかれば、あとは一気に解決にむかった。
いまだ、ウィルスそのものへの確実な特効薬はない。
だが保菌者を徹底的に隔離することによって、その対策は効果をあげている。

ただ問題は、この病気にまつわる、いくつもの伝説や迷信が、保菌者つまり患者のこころをまどわしていることだった。
すくなからぬ精神疾患が、患者の大多数をわずらわしているのである。
自身を人間でないなにか、超越的ななにか、反社会的な悪のなにか、そんなものと同一視しているのである。

だがそれも、徹底的なカウンセリングと半ば強制的なマインド・コントロールによって、治療の効果はあげている。
殆どの患者は、感染性の病魔におかされたと理解しているのである。

だが、はたして彼はどうか。
病院から逃れ、官憲の追手を逃れ、ついにここまでやってきた。

西からふたつの月がのぼる。
地球から数億光年の彼方、いくつもある植民星のひとつだ。
彼はなにをしようとしているのか。

夜はこれから。
地球時間でいえば、70数時間。
その間、闇が支配するのだ。

[the text inspired from the song “Bela Lugosi's Dead” from the their debut single “Bela Lugosi's Dead” by Bauhaus]

images
for the movie “The Hunger1983 directed by Tony Scott,
feat. Catherine Deneuve and David Bowie,
Bela Lugosi's Dead” performed by Bauhaus

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theme : 今日の1曲 - genre : 音楽

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