2014.01.10.09.40
仮眠をとっているぼくをおこして、やつがいう。
「いくぞ」
事態は膠着していた。それしかわからない。連絡も絶えて久しく、ただ、一週間に一度、補給だけは欠くことはなかった。
それだけがさいわいだった。と、同時にそれだけがわずらわしかった。
一週間に一度、やってくるやつらが後方であって、その反対側が前線。つまり敵だ。
ぼくたちはただやみくもに、めのまえにいるはずの敵を追っているだけなのだ。
それは一見、ただしいようにおもわれる。
だけれども、ぼくたちは、味方から逃げようとしている、そんなふうにおもえてしかたがない。
敵を追っているはずのぼくたちが実は、追われているのだ。
だがそれも数ヶ月前までのはなしだ。戦況がぼくたちの側にあったときのできごとだ。
いまはもう、まったくみうごきがとれない。
すべてがどろぬまのなかにはまり、ぬいたはずのあしがおりるのは、結局、もとのあなだ。
しずまないためにあがいているのか、しずんでしまいそうだからあがいているのか、それとも、しずんでしまうためにあがいているのか。
もう、それすらもわからない。
ぼくはおおきなのびをして、いう。
「で、どこへ」
ぼくの問いに、かれはせせら嗤う。
それがこたえだった。
[the text inspired from the song “Ahead” from the album “The Ideal Copy
” by Wire]
「いくぞ」
事態は膠着していた。それしかわからない。連絡も絶えて久しく、ただ、一週間に一度、補給だけは欠くことはなかった。
それだけがさいわいだった。と、同時にそれだけがわずらわしかった。
一週間に一度、やってくるやつらが後方であって、その反対側が前線。つまり敵だ。
ぼくたちはただやみくもに、めのまえにいるはずの敵を追っているだけなのだ。
それは一見、ただしいようにおもわれる。
だけれども、ぼくたちは、味方から逃げようとしている、そんなふうにおもえてしかたがない。
敵を追っているはずのぼくたちが実は、追われているのだ。
だがそれも数ヶ月前までのはなしだ。戦況がぼくたちの側にあったときのできごとだ。
いまはもう、まったくみうごきがとれない。
すべてがどろぬまのなかにはまり、ぬいたはずのあしがおりるのは、結局、もとのあなだ。
しずまないためにあがいているのか、しずんでしまいそうだからあがいているのか、それとも、しずんでしまうためにあがいているのか。
もう、それすらもわからない。
ぼくはおおきなのびをして、いう。
「で、どこへ」
ぼくの問いに、かれはせせら嗤う。
それがこたえだった。
[the text inspired from the song “Ahead” from the album “The Ideal Copy
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