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2013.12.06.13.07

Voyage To The Bottom Of The Sea

深く深くしずかにしずかに、そしてどこまでもどこまでも。
おれは無限の谷間へとおちてゆく。

ひとひとりはいるだけの精一杯の空間のなかの、たったひとつの座席に座っておれはひとり、世界の涯とやらにむかって、真っ逆さまにおちてゆく。

憶いだすのは、学生の頃に読んだ入門書のたぐいさ。
光速で動いているエレヴェーターのたとえ話。その主人公がいまのおれさ。
もっともそこで語られている事象のいくつかは、その主人公には皆目、見当もつかない事だらけ。
主人公というよりも、単なるモルモット。博士ではなくて、彼が産んだ怪物の役目さ。

肉親とはとうの昔に、縁がきれていた。
おんなにはなにも告げずに、ここまできた。
いまにもうすぐ死ぬのだろう。

誰もが今回の実験の成功を堅く信じている。そして、その成功とは、おれがこの中で圧死する事だ。
そんなことを考えているのはおれだけではない。だれも黙しては語らぬが、ひとつの死が成就する瞬間を、全世界が固唾をのんでみまもっているのだ。
おれには願ってもない話さ。

英雄のままに死ぬ。
英雄として死ぬ。

スキャンダルも不祥事も、発覚するのは、おれが死んだあとだ。

なんにんもつかまるだろう。なんにんかは死ぬかもしれない。
だが、それすらも、おれには一切、関係のないことだ。

おれがその最初の犠牲者であることに、かわりはないのだから。

[the text inspired from the song "Voyage To The Bottom Of The Sea" sung by Frankie Avalon from the soundtrack album "Voyage To The Bottom Of The Sea" for the theme song for the movie "Voyage To The Bottom Of The Sea" 1961 directed by Irwin Allen.]


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