FC2ブログ

2013.11.17.11.08

『彩 [エイジャ] (AJA)』 by スティーリー・ダン (Steely Dan)

images
これまでに、何度も何度も聴いた事だろう。そして、恐らく、何度も何度も聴く事になるだろう、これからもずっと。

それは必ずしも、ぼくだけではないと想う。
恐らく、それはこの作品を手に取った誰しもに、あった事だろうし、今でも充分にある事だろうし、そしてまた、この作品を聴いた事のないヒトにも、充分にあり得る事だと、ぼくは想う。

その理由はなにか、何故、そうなるのかと、自問しても決して納得のいく解答は出てこない。
だからと謂って、それを口実にして、さも永遠の名盤であるかの様に、ほざいてみるのも馬鹿馬鹿しい話なのだ。
そんな事しか宣う事が出来ないのならば、誰にも知らせずにこっそりと、たった独りで繰り返し繰り返し、聴いていれば良い事なのだ。それを糊口としているのならば、尚更だ。

[知っている限りのデータとあらんかぎりの情報を羅列したとしても、それは一見異なるアプローチの様にも想えるが根は同根、何も語らないのに等しい筈だ。]

そんな呪詛を放っていても致し方ない。
手前のけつの穴は、ひとつ (Chickens come home not to.) で充分だ。

だから、とりあえずの今日、ぼく個人にとってのそれを書き綴ってみようと想う。
今日、という時間を指定してみたのは、単に、明日になれば、ここにこれから書く事を総てひっくり返してしまいたい衝動にかられる可能性も充分にあるからだ。
つまり、それだけ、あやふやであいまいで、確たるモノも、核たるモノも、自分自身の中にないからなのである。

この作品を聴いていけば、いくつもいくつも、何度も何度も、美しい瞬間や素晴らしい瞬間に出逢える。
だけれども、それは決して、それらを統合するアルバムというかたちに結実しない。
ばらばらで、こなごなで、そして、見事なまでに美しい。
まるで、砕け散ったガラスの破片が美しい様に、そして、それを可能な限り、元の状態に配置し直しても、決して、割れる前の瞬間が顕われない様に。

神は細部に宿り給う (God is in the details. / Der liebe Gott steckt im Detail.) という言葉がある。
と、同時に、木を観て森を観ず (You cannot see the wood for the trees.) という言葉がある。

この作品は正にそれだ。
しかも、敢えて謂えば、森を観る事、ないしは、森を観せる事を、拒んでいるのではないだろうか。

恐らく、この作品の制作に関わった誰もが、その魔手に捕われていたのではないだろうか。
それは、たった1曲の、たったひとつのフレーズを紡ぎ出す為にのみ、呼び集められた参加ミュージシャン達だけの事ではない。
きっと、当時のスティーリー・ダン (Steely Dan) のふたり、ドナルド・フェイゲン(Donald Fagen) とウォルター・ベッカー (Walter Becker) [それに加えてプロデューサーのゲイリー・カッツ (Gary Katz)] も、同じ事だ。彼らを含めて誰一人、そこから自由だったモノはいないのだ。

何故ならば、この作品で勝ち得た手法をいくら駆使したとしても彼らは、同じ作品を2度と創り得なかったからだ。

勿論、誰でも知っている様に、本作発表の3年後の1980年、スティーリー・ダン (Steely Dan) 名義としては7枚目、"彼ら"としては2枚目の作品『ガウチョ (Gaucho)』は、発表されている。
だけれども、それはまるで二卵性双生児 (Fraternal Twins / Dizygotic Twins) の様に、似て非なるモノだ。

スタジオという魔術的(Magickal) な空間でいくら錬金術 (Alchemy) に耽ったとしても、この作品の再現は出来ないのだ。そして、それと同様な理由で『ガウチョ (Gaucho)』の再現も出来ない。
彼らが解散したのは、恐らく、そんな理由だろう。仮令、メンバー個々人に問題があったとしても、しかもそれがオフィシャルな理由とされていても、だ。

だから、再結成もスタジオとは離れた場所、ライヴ空間から始まった [1993年のスティーリー・ダン (Steely Dan)・フィーチャリング・ウォルター・ベッカー (Walter Becker) & ドナルド・フェイゲン(Donald Fagen) 名義のツアーとその成果『アライヴ・イン・アメリカ (Alive In America)』] のでもあるし、そこで喜々として自身の作品の稚拙なコピーにも勤しめている訳である。
と、放言するのは暴言だろうか。
でも、それ以前の彼らと、それ以降の彼らは、全くの異なるバンドとして評価すべきだし、せざるを得ない様な気がするのだけれども、如何だろうか。

本論はここまで。
ここから先は、余談である。

アルバムが発表されたのは1977年。
真っ黒な闇の中に一閃、朱と白が織りなす彩は大変に美しく、アルバム・タイトルを『彩 [エイジャ] (AJA)』としたのも、納得出来るモノだ。当時の、ぼく個人の中では、「彩」という1文字の漢字は、それだけに分ちがたく、長らく、「彩」という邦題も、本国指定のモノとばかりに思い込んでいた程だ。
それは勿論、朱と白を織りなしている主役が、山口小夜子 (Sayoko Yamaguchi) というモデルだから、というのも影響している。とは謂っても、山口小夜子 (Sayoko Yamaguchi) 自体を知ったのが、この作品を通じての事だった様にも記憶している。
つまり、当時から、参加ミュージシャンの煌びやかな名前に混じって、それと同等、もしくは場合によってはそれ以上に、山口小夜子 (Sayoko Yamaguchi) という名前が、この作品を語るいくつもの言説の中で、打ち出されていた様に想えるのだ。

だからこそ、ぼくは非常に困惑した。

アルバム・ジャケットを飾るヴィジュアル、つまり、あの闇と朱と白のせめぎあいに、果たして、山口小夜子 (Sayoko Yamaguchi) という身体は必要なのかどうか、と。山口小夜子 (Sayoko Yamaguchi) である必然性はあるのだろうか、否、山口小夜子 (Sayoko Yamaguchi) でなくてもいい、ひとりの女性の身体が必要なのだろうか、さもなければ、このヴィジュアルは、単純なグラフィック処理では決して、産み出せない様な代物なのだろうか、と。

もしも、山口小夜子 (Sayoko Yamaguchi) がこの作品のヴィジュアル表現をひとえに纏うのであるのならば、このジャケット制作の際のフォト・セッションでの産物がいくつも、宣材物のヴィジュアルとして、あらゆる場所に登場してきても不思議ではないのだ。否、むしろ、そうすべきなのだ。

にも、関わらずに、それは殆ど、登場しなかった。
それはさも、参加ミュージシャンと対等にその名前が併記されたのと同じ様に、楽曲制作での彼らの扱いと全く対等に、ヴィジュアル・イメージをも扱われている様にも想えた。

つまり、先程の思考とは逆、このギター・フレーズは、このフィル・インは、このベース・ラインは、そこに名前が記載されているミュージシャンでなければ産み出し得ないモノなのだろうか、それは全くの別人であっても代替可能なモノなのではないだろうか、そんな疑義をも、ぼくに抱かせ占める様なモノなのである。

1980年代後半以降、英国を中心にして、スティーリー・ダン (Steely Dan) の末裔を名乗る、いくつもの音楽ユニットが登場したのは、もしかしたら、その時のぼくと同じ様な感慨を彼らが抱いていたからではないだろうか。
音楽を制作するのには、バンドと謂うフォーマットは必須のモノではない。楽曲を構成するいくつもの要素は総て、ナニカと代替可能なモノなのだ。優れた演奏者も、ここでは必ずしも必要ではない。
そんな認識が産まし得たモノなのかもしれない。

images
ただ山口小夜子 (Sayoko Yamaguchi) のフォト・セッションに関しては、唯一の例外として、1978年発表の『グレイテスト・ヒッツ (Greatest Hits)』に日本盤のみの仕様 [収録曲目曲数も違う] として、その際のモノと想われるバスト・ショットが起用されている。
そして誰もが想う様に、このバスト・ショットは必ず『彩 [エイジャ] (AJA)』を想起させえるモノだけれども、決して。『彩 [エイジャ] (AJA)』に貫かれた美意識を一切、踏襲していないのだ。

ものづくし(click in the world!)134. :
『彩 [エイジャ] (AJA)』 by スティーリー・ダン (Steely Dan)


images
彩 [エイジャ] (AJA)』 by スティーリー・ダン (Steely Dan)

1. ブラック・カウ 5:08
 BLACK COW
2. 彩 [エイジャ] 7:56
 AJA
3. ディーコン・ブルース 7:33
 DECON BLUES
4. ペグ 3:55
 PEG
5. 安らぎの家 5:32
 HOME AT LAST
6. アイ・ガット・ザ・ニュース 5:04
 I GOT THE NEWS
7. ジョージー 4:31
 JOSIE

ORIGINAL LINER NOTES : Michael Phalen, Steve Diener President, ABC Records
For Re-issue Liner Notes : Donald Fagen & Walter Becker, 1999

BLACK COW
Drums : Paul Humphrey
Bass : Chuck Rainey
Electric Piano : Victor Feldman
Clavinet : Joe Sample
Guitar : Larry Carlton
Synthesizer : Donald Fagen
Tenor Sax : Tom Scott
Backup Vocals : Clydie King, Venetta Fields, Sherlie Matthews, Rebecca Louis.

AJA
Drums : Steve Gadd
Bass : Chuck Rainey
Guitars : Larry Carlton, Walter Becker, Denny Dias
Electric Piano : Joe Sample
Piano : Michael Omartian
Percussion : Victor Feldman
Synthesizers & Police Whistle : Donald Fagen
Tenor Sax : Wayne Shorter
Backup Vocals : Donald Fagen, Tim Schmit.

DECON BLUES
Drums : Bernard Purdie
Bass : Walter Becker
Guitars : Larry Carlton, Lee Ritenour
Electric Piano : Victor Feldman
Synthesizer : Donald Fagen
Tenor Sax : Pete Christlieb
Backup Vocals : Clydie King, Sherlie Matthews, Venetta Fields.

PEG
Drums : Rick Marotta
Bass : Chuck Rainey
Electric Piano : Paul Griffin
Clavinet : Don Grolnick
Guitar : Steve Khan
Solo Guitar : Jay Graydon
Percussion : Victor Feldman, Gary Coleman
Lyricon : Tom Scott
Backup Vocals : Michael McDonald, Paul Griffin.

HOME AT LAST
Drums : Bernard Purdie
Bass : Chuck Rainey
Guitar : Larry Carlton
Solo Guitar : Walter Becker
Piano and Vibes : Victor Feldman
Synthesizer : Donald Fagen
Backup Vocals : Donald Fagen, Tim Schmit.

I GOT THE NEWS
Drums : Ed Greene
Bass : Chuck Rainey
Piano, Vibes and Percussion : Victor Feldman
Guitar : Dean Parks
Solo Guitars : Walter Becker, Larry Carlton
Synthesizers : Donald Fagen
Backup Vocals : Michael McDonald, Clydie King, Venetta Fields, Sherlie Matthews, Rebecca Louis.

JOSIE
Drums : Jim Keltner
Bass : Chuck Rainey
Electric Piano : Victor Feldman
Guitars : Larry Carlton, Dean Parks
Solo Guitar : Walter Becker
Synthesizers : Donald Fagen
Percussion : Jim Keltner
Backup Vocals : Donald Fagen, Tim Schmit.

HORNS ARRANGED AND CONDUCTED BY TOM SCOTT
Saxes / Flutes : Jim Horn, Bill Perkins, Wayne Shorter, Pete Christlieb, Plas Johnson, Tom Scott, Jackie Kelso.
Brass : Chuck Findley, Lou McCreary, Slyde Hyde.

LEAD VOCALS : DONALD FAGEN

RHYTM CHARTS PREPARED BY : Larry Carlton, Dean Parks, Michael Omartian in collaboration with the composers

BAGMAN : Leonard Freedman
PRODUCTION COORDINATOR : Barbara Miller
Covert Operations : Karen Stanley
SOUND CONSULTANT : Stuart Dawson
HEMIOLAS, HOCKETS, MANERIES OF GARLANDIA, ETC. : Andrew Frank
PROTECTION : Irving Azoff

ART DIRECTION : Oz Studios
DESIGNED BY Partricia Mitsui and Geoff Westen
COVER PHOTO : Hideki Fujii
PHOTOS OF DONALD FAGEN AND WALTER BECKER : Walter Becker, Dorothy A. White

Steve Gadd and Michael McDonald appear through courtesy of Warner Bros. Records, Inc.
Chuck Rainey appears through courtesy of A&M Records, Inc.
Victor Feldman appears through courtesy of Caribou Records.
Lee Ritenour appears through courtesy of Zembu Productions.
Wayne Shorter appears through courtesy of Columbia Records, Inc.
Tom Scott appears through courtesy of Ode Records.

All selections (C) 1977 ABC Records / Dunhill Music, Inc. (BMI). Used by Permission. All Rights Reserved.
All selections : Words and Music by Walter Becker and Donald Fagen.

RECORDED AT : Village Recorders, West L.A. ; Producer's Workshop, Hollywood ; Warner Bros. North Hollywood Recording Studios ; ABC Recording Studios ; Sound Labs, Hollywood ; A&R Studios, N.Y.C.

ENGINEERS : Roger Nichols ; Elliot Scheiner ; Bill Schnee ; Al Schmitt.

ASSISTANT ENGINEERS : Lenise Bent ; Ken Klinger ; Linda Taylor ; Ed Rack ; Joe Bellamy ; Ron Pangaliman.

EXECUTIVE ENGINEER : Roger Nichols

MASTERED BY : Bernie Grundman at A&M Studios, Hollywood.

PRODUCED BY GARY KATZ

Digitally remastered by Roger Nichols at Digital Atomics, Miami

Reissue Coordination : Beth Stempel
Reissue Art Direction : Vartan
Reissue Design : Mike Diehl

(P) 1977 (C) 1999 MCA Records, Inc.

ぼくが所有している国内盤紙ジャケットCD [アーティスト監修による最新デジタル・リマスター版と記載]では、大伴良則 (Y. Otomo) によるライナー・ノーツ、『ドナルド・フェイゲン & ウォルター・ベッカーによるライナーノーツ』 [訳:奥田祐土]、『原盤ライナーノーツ』 [文:マイケル・ファレン、スティーヴ・ディーナー [ABCレコード社長] 訳:橋本ユキ] ならびに歌詞対訳 [対訳:橋本ユキ] 掲載のブックレットが封入されている。
関連記事

theme : おすすめ音楽♪ - genre : 音楽

adventures of t. g. chaung | comments : 0 | trackbacks : 0 | pagetop

<<previous entry | <home> | next entry>>

comments for this entry

only can see the webmaster :

tackbacks for this entry

trackback url

https://tai4oyo.blog.fc2.com/tb.php/1299-51a96ed0

for fc2 blog users

trackback url for fc2 blog users is here