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2013.10.11.14.46

Nothing To Lose

その惑星の、唯一の知的高等生物は単性生殖だった。

そんな生態系は、この星々のなかでは決して珍しくはない。だが殆どの場合は、そういった星の生態系総ては単性生殖によって繁殖している。進化の綾を考えてみれば、それは半ば必然だ。
だがその惑星だけは、生態系の頂点にある知的高等生物だけが、単性生殖によって次代を産み育てているのである。

彼らの永い歴史を繙けば、その謎はすぐに解決する。
彼らも最初から単性生殖ではなかったのだ。
我々とおなじように、両性があり、その一対一の交尾によって、生殖が営なわれていたのである。

彼らが知的高等生物として、いくつものコミュニケーションのツール、つまり我々のことばでいえば言語や文字を産み出し、我々と同等、もしくはそれを凌駕する文明と文化を築き始めたある時代のことである。
ふたつあるうちの一方の性、我々に比していえば雄の出生率が極端に減少し始めたのである。

原因と考えられるものは、いくつかあったようだ。そして、それらの原因に対する対抗処置は、なんどもなんども試みられたようである。
だがそれは、一時的なその場しのぎでしかなく、雄の出生率低下に歯止めをかけることはできなかった。
徐々に、雄は減少していったのだ。

と、同時に、遺伝子操作によって、雌同士の生殖を可能とする研究が発表される。
その研究の成果ははなばなしく、すぐさまに、この問題の唯一の解決策として、諸手をあげて歓迎される。
倫理上もしくは信仰上、宗教上の問題点が克服されるのも、時間の問題だった。

激しい宗教的な対立もあったと記録されている。一部の過激な、保守的な教団によるテロリズムまがいの行動も散見したようだ。
また、教祖の子をもうけることが一切の信仰のあかしとするような、ひとりの雄を教祖とするカルト集団もいくつも誕生した。
だが、どのみち両性生殖を信仰していても、その信者たちの間に、実際に雄が産まれない以上、孤立化し、そのまま、根絶するしかなかった、また、後者にあっては産まれた雄の継承問題がそのまま集団の分裂をうながして、カルトのさらなるカルト化となって、遅かれ早かれ自然消滅していった。

いずれにしろ、この惑星は問題解決の総てをその研究成果にすべてを委ねたのである。
最初は、外科的な施療が必要だったものが、あらたな研究や開発によって、投薬のみで可能となる。
社会的な規範や風俗、もちろん法制度も、ありとあらゆるこの惑星のシステムが雌同士の、生殖と出産、育児、教育、産業、はては相続までをも、是認するものとして再構築されていったのである。

その結果、減少の一途を辿る雄の問題を顧みるものは一切なく、かれらは衰亡の道を辿っていったのだ。

[the text inspired from the song "Nothing To Lose" from the album "Kiss" by Kiss]

images
For the single "Shout It Loud" of B-side, "Nothing To Lose"
from the album "Alive!" by Kiss

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