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2013.10.06.15.26

これもまた悪い夢の続き 57.

こんな夢をみた。

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The poster for the movie "Le Diable au corps" directed by Claude Autant-Lara

父の死から、およそ10年がすぎている。
あれ以来、実家に省っていない。忙しいというのも理由のひとつだし、めんどくさいというのも心情のひとつだ。それに父の葬儀の後、さしたる冠婚葬祭もない。父の墓参を口実に促す術もあるのかもしれないが、そんな催促は一蹴するのにきまっている、ぼくは。

事後処理という名目の、そしてさしたる目的もない出張を命じられる。しかも事後処理だけに、そのてはずをそこで終えてしまえば、しばらくは閑職となる。ていのいい厄介払いかもしれない。肩を叩かれているのかもしれない。

だから、10日程やすみをとって、帰省することにする。出張の往復の通り道にあるのも、理由のひとつだ。

なにもかわっていない。
10年間という不在の期間はこともなげに圧縮されて、実家に辿り着いたその瞬間から、母はいいたい放題だ。小言はいつまでたってもやまず、こまかい用向きはつぎからつぎへと指図され、荷をとく暇もない。座る暇もないぼくなのだ。そして、その一方で母は絶えず動き回り、やすむという言葉を知らない。
なにもなかったかのように万事はすすみ、忘れられているのは10年間だけではない。まだ幼い頃のぼくに馴染みの光景が次から次へと展開されている。

夕飯の支度がはじまる頃からひとりの見知らぬ女性があらわれる。長年の母の知り合いのようにふるまい、用意が整ったときには、ぼくのとなりの席に彼女がいる。
おとうとの同級生だという。かれはいつものように学校に残されているのに違いないと、屈託もなくわらう。
だから、弟の帰宅をまたずに喰いはじめる。

ききたいこと、きくべきなこと、きいてもいいことかもしれないことは、やまほどある。だがそれを彼女にぶつけるのは、なんだか、躊躇われることばかりだ。母と彼女のあいだはまるで、10数年もつづいているかのような雰囲気で、ぼくと彼女が初対面であることは、どちらも厭わない。
まるで、昨日も一昨日もそして明日も明後日もこうして、彼女におかわりをよそってもらう、そんな素振りなのだ、まるで。
それにも関わらずに、いや、それだからこそかえって、へどもどしどぎまぎしてしまっている。なぜなら、ぼく自身の高校生時代では決してありえないものであるし、もし仮にそれがありえても決して、こんなふうにぼくの恋人がぼくの自宅にあらわれる様な状況は、避けた筈に違いないからだ。

最初の晩は、そんなふうに終わる。
それ以降、起きたい時に起き、寝たい時に寝、出かけたい時には行く先も告げずにでかける日々が続いた。母の小言といいつけられる用件が煩わしいからだ。
ただ、誰にもあうつもりもなかったし、夜にでかける用向きもなかったからいつも、決まった時間には帰宅している。いつもとは違ってここでは、晩飯が用意され、決まった時間に食事が始まるからだ。

そんな数日を過ごしているうちに、次第に妙なことに気づく。それをそのままのみこんでしまえば、やっぱり10年は経っていたのだなという感慨にふけるのかもしれないが、それはあまりに呑気だ。
むしろ、母の健康や精神状態をいぶかしむべきなのだ。

鏡台脇のゴミ箱をふとのぞくと、そこに呑みかけのペットボトルが放り込んである。
座った食膳のテーブルには、ながい髪の毛がおちている。しかも、染められたそれは、母のものではない。
なんだか雑なのだ。ぼくがそんなことをしたら、頭ごなしにどなりつけるのが母だ。たがが緩んで来たのだろうか。

そんな心配をおとうとに話す。
ただ、あまりにも露骨にぼくの心配事を告げるのは躊躇われた。話し方によっては、同居しているおとうとを非難する口調になってしまうからだ。
そんなこちらの憂慮がつたわったのかどうか、おとうとはだまってぼくのはなしを聴いている。
そして最後に一言、「あの歌の歌詞は知っているよな」とだけ、言い放つ。

もちろん、知っている。だが、それはどうだと、いうのだ。
そう言いかけて口籠ったのは、彼が言いたいのは歌のことなんかじゃあない。
おそらく、彼はすべて了解済みなのだ。ぼくの気に病む母の行動の、その理由を承知しているのだ。
だから、「ああ」とひとことだけ発して、その場はそれっきりだ。

母がわかい男、しかも、ぼくと同世代かそれよりもさらにした、とつきあっていると知ったのは、その後だ。

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The single of "If You Love Somebody Set Them Free" from the album "The Dream Of The Blue Turtles" by Sting
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