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2013.09.15.02.58

"mothership connection" by PARLIAMENT

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1アーティスト1作品というのが慣行的になっているこの連載だけれども、それを踏まえて考えてみると、果たしてこの作品でいいのだろうか、という逡巡は、こうして記事を書き始めている今も、続いているのだ。

勿論、キャリアも実績も充分にある彼らだけれども、その永さと蓄積された結果を観てみれば、駄目な作品は明らかに駄目だったりする。勿論、そうした"駄目な作品"も出逢った時季や出逢い方、もしくは聴き方や関心の持ち様に依っては、充分に大事な作品にも重要な作品にもなり得る。
それは、一般論として語る事も出来る、よくある話ではあるけれども、彼らの場合、サンプリング音源やリミックス音源として、つまり、楽曲単位、作品単位とは違ったかたち、素材としての音楽というアプローチの方法論もあり得る訳だから、尚更の事なのである。

ちょっとミクロな視点に脚を運びそうになっているから、慌てて脚許を正して、マクロ視点で語り直す。

彼らの場合、この作品のアーティスト名であるパーラメント (Parliament) である作品群もあれば、もうひとつの母集団であるファンカデリック (Funkadelic) としての作品群もある。
このふたつの名称は本来、レコード会社との契約上発生する諸問題をクリアする目的と、それぞれの音楽へのアプローチ上の重心や比重の差異、つまりヴォーカリゼーションなのかインストルメンタルなのか、コーラス・グループなのか演奏グループなのか、そのいずれを選択するかによって、名称を違えていた筈なのである。
[そしてもしも、それを重要視するのならば、メンバー構成やアンサンブル編成は本来ならば全く異なったモノになる筈なのに、主要メンバーの殆どは重複している。]
しかも、それが一時的ではあれ、P- ファンク・オールスターズ (P-Funk All Stars) なる名称の下に行動していた時季もあったし、それがさらに進展して今では全くの同一体、パーラメント / ファンカデリック (Parliament-Funkadelic) という呼称となっている。

彼らを知らぬモノからみれば、まるでオーストリア=ハンガリー帝国 (Osterreichisch-Ungarische Monarchie) [18671918年] の様なダブル・スタンダード (Doppelmoral) を抱え込んでいる様にも観えるが、実際にそう観てしまっても致し方ない。
かの帝国がハプスブルグ家 (Haus Habsburg) という由緒正しい君主が統治する一方で、文化も言語も異なる多民族によって構成された国家であり、それ故にこの帝国は、第一次世界大戦 (Erster Weltkrieg) [19141918年] の敗北を受けて、内包する問題を解決する事が出来ず、モノの見事に瓦解する。
それと同じ様な問題が、パーラメント / ファンカデリック (Parliament-Funkadelic) には常に内包されているのである。

ちょっとマクロな視点に脚を運びそうになっているから、慌てて脚許を正して、ミクロ視点で語り直す。

パーラメント / ファンカデリック (Parliament-Funkadelic) は、総てがジョージ・クリントン (George Clinton) の個性から始まったモノであり、彼が率いている、彼のバンドである、と謂う事は可能だし、一般的にはそう信じられている。
だけれども、それは例えば、フランク・ザッパ (Frank Zappa) のそれやサン・ラ (Sun Ra) のそれとは随分と違う。彼と"彼のバンド"の直系の祖にあたる上に、参加メンバーも一部重複するジェームス・ブラウン (James Brown) のそれとも違う。

先に挙げたさんにん、フランク・ザッパ (Frank Zappa) やサン・ラ (Sun Ra) やジェームス・ブラウン (James Brown) が、自身のバンドに於いて、ナニを行いたいのか、ナニを行ったのか、それはあまりに明瞭である。
彼らの音楽を現実のモノと鳴り響かせる為にのみ、彼らのバンドは機能していた。彼らはそれぞれのバンドにおいて専制君主として存在し、参加メンバーは彼らの頭脳にある音楽を現実化させる為にのみ存在する婢にすぎない。有り体に言えば、彼らにとって、メンバーの頚の挿げ替えなど、容易いモノなのだ。

だが、ジョージ・クリントン (George Clinton) の場合は、そうではない。参加メンバーの度量や技術、発想や行動力に随分と依存しているのだ。彼はバンドにおいては君主なのかもしれないが、そのあり方は一見、専制君主の様に観えて、それを裏付けるモノがない様に観える。
これが"君臨すれども統治せず (Rex regnat et non gubernat)"ならば、極めて民主主義的な佇まいになるのだけれども、残念ながらそうでもない様なのだ。
しかも、それはぼく達の様な外部にあるモノよりも、内部にあるモノ、つまり参加メンバーにとって、より強くそう思わせるナニかがある。
だから、脱退したメンバーとの確執は常にそこにある。

いや、辞めたモノがどう騒ごうが、本来ならば、ぼく達にとっては、野次馬的な興味以外は沸かない筈のモノだけれども、問題は、その人物が辞める事によって、音楽的な完成度が著しく低下してしまうという事があり得る事だ。
つまり、パーラメント / ファンカデリック (Parliament-Funkadelic) というバンドは、参加メンバーの構成によって、その完成度が著しく左右されてしまうのである。

ある意味、下手なジャズよりも、ジャズなのである。

だから、きちんと構成されたスタジオ・レコーディング作よりも、ライヴ・レコーディング作の方が遥かに面白い事も充分にあり得る訳だし、しかもその上に、正規に発表されたそれよりも、未発表音源的なモノの方がさらに面白い場合もあり得る訳だ。
それに、彼らのライヴは黒人音楽の伝統に則ったパッケージ・レヴューの構成を [あれでも] [かなり異形のパッケージ・レヴューだけれども] 採っているから、代表曲や重要曲は、ライヴ・アルバムに限って謂えば、殆どの場合、重複している。

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そういう観点を語っていると、ぢゃあ、『ライヴ!! Pファンク・アース・ツアー (Live : P-Funk Earth Tour)』 [1977年発表] が最大公約数的に、その条件を呑んでいるのではという疑義も産まれるし、実際にそう想う場合もないではない。
バンドとしての絶頂期にリアル・タイムで発表されたLP2枚組 [当時] のライブ盤である。
だけれども、この作品を聴いていつも想うのは、腹八分目で納得しなければならない、という事なのだ。つまり、LPに収録という時間的な制約が足枷になっている様に想えて、仕様がないのだ。
バンドとしてのピークが終わってしまっていたとしても、参加メンバーの程度が堕ちていたとしても、だらだらだらと、垂れ流されていく演奏を聴いている方が、彼らを体験する場合、より相応しい様な気もしない訳ではないのである。

と、いう理由で、今回はこれまでの論旨を一切台無しにしてしまう様だけれども、スタジオ・レコーディング作の『マザーシップ・コネクション (Mothership Connection)』 [1976年発表] を選んでみた。
収録曲総てが彼らの代表曲とも謂えるし、ここに現出したUFO (Unidentified Flying Object) の母船 (Mothership) は、その後の彼らの主要なコンセプトのひとつとなる。
ライヴ!! Pファンク・アース・ツアー (Live : P-Funk Earth Tour)』 [1977年発表] では、その母船 (Mothership) がライヴ会場に飛来し、ジョージ・クリントン (George Clinton) が降臨するのだ [アルバム・ジャケットはそのシーンを撮影したモノ]。

尤も、この作品を選んだ最大の理由は、この作品からぼくは、彼らを聴き始めた、という事なんだけれども。

ものづくし(click in the world!)132. :
"mothership connection" by PARLIAMENT


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"mothership connection" by PARLIAMENT

1. P.FUNK (WANTS TO GET FUNKED UP) G. Clinton, B. Collins, B. Worrell
2. MOTHERSHIP CONNECTION G. Clinton, B. Collins, B. Worrell
3. UNFUNKY UFO G. Clinton, B. Collins, G. Shider
4. SUPERGROOVALISTICPROSIFUNKSTICATION G. Clinton, B. Collins, B. Worrell, G. Shider
5. HANDCUFFS G. Clinton, J. Mclaughlin, G. Goins
6. GIVE UP THE FUNK (TEAR THE ROOF OFF THE SUCKER) G. Clinton, B. Collins, J. Brailey
7. NIGHT OF THE THUMPASORUS PEOPLES G. Clinton, B. Collins, G. Shider

PRODUCED AND CONCEIVED : George Clinton

All tunes published by Malbiz and Ricks Music, Inc., BMI

VOCALS :
George Clinton, Calvin Simon, Fuzzy Haskins, Raymond Davis, Grady Thomas, Gary Shider, G. Goins, Bootsie Collins

MUSICIANS :
HORNS : Fred Wesley, Macco Parker, Michael Brecker, Randy Brecker, Boom, Joe Farrell
BASS : Bootsie Collins, Cordell Mosson
GUITARS : Gary Shider, Michael Hampton, Glen Goins, Bootsie Collins
DRUMS AND PERCUSSION : Tiki Fulwood, Jerome Brailey, Bootsie Collins, Gary Cooper
KEYBOARDS & SYNTHESIZERS : Bernie Worrell
HORN ARRANGEMENTS : Fred Wesley, Bernie Worrell
RHYTHM ARRANGEMENTS : Bootsie Collins, George Clinton
EXTRATERRESTIAL VOICES & GOOD TIME HAND CLAPPERS : Gary Cooper, Debbie Edwards, Taka Kahn, Archie Ivy, Bryna Chimenti, Rasputin Boutte, Pam Vincent, Debra Wright and Sidney Barnes

P. FUNK LABS :
Limited Sound, Detroit, Michigan
Hollywood Sound, Hollywood, California

STIRRERS & BLENDERS
Jimi Vitti - Detroit
Ralph (Oops) Jim Callow - Hollywood

Mastered for compact disc by Tom Ruff at PolyGram Studios
Photography by David Alexander
Art Direction and Designed by Gribbitt

Special thanks :
Cherry Bassoline, Ron Strassner, Robert Mittleman, Nick Byrne, Screwia, Bob Bishop, Chris, Ina meibach, Arron Schechter, and "Pencil" Epstein.

(P) (C) 1975 PolyGram Records Inc.
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