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2013.09.03.03.56

ちーずのあな

それは初めて観る映画『モダン・タイムス (Modern Times)』 [チャーリー・チャップリン (Charlie Chaplin) 監督作品 1936年制作] での事だった。

ぼくにチャーリー・チャップリン (Charlie Chaplin) という喜劇俳優 [と限定的に言うよりもむしろ、映像作家と言うべきだろうか] の存在を教えてくれたのは、萩本欽一 (Kinichi Hagimoto) という喜劇役者 [彼の場合はむしろ、その地位に留まるべきだったと想ってもいる] だったけれども、その作品群について教えてくれたのは、漫画週刊誌のグラビア頁だったと憶えている。いくつもある彼の名作のリヴァイバル上映とのタイアップ記事なのだ。

ぼくの記憶に間違いがなければ、通常ならばカラー頁として割かれるグラビア企画に、彼の作品からの名シーンやら迷シーンを抜粋して掲載、そしてさらにモノクロの本文頁でその時に公開される10作品あまりの粗筋は勿論の事、チャーリー・チャップリン (Charlie Chaplin) という、俳優でもあり映画監督でもあり音楽家でもあるエンターティナーの一切合切があます事なく紹介されていた。
今では誰もが知っている彼の浮浪者としてのアイコン (The Tramp)、山高帽 (Bowler Hat) にステッキ (Walking Stick)、ぼろぼろのどた靴 (A Large Pair Of Shoes) とだぼだぼのズボン姿 (A Pair Of Baggy Pants) を認知したのは、この時だった。

そしてこの特集をぼくよりも貪る様に読み耽っていたは、これらの作品を本邦初公開の時にリアル・タイムで観ていた父であって、ぼく達家族は、彼の作品がリヴァイヴァル公開される度に、観劇に通う事になるのだ。
その時にぼくは初めて、椅子席100にも満たないちいさな劇場、名画座 (Revival house) というシステムを体験する事になるのだけれども、それを綴るのは本題から外れる事になるから、ここではそこでのエピソードについては、これ以上書かない事にする。

この拙い文章の本題は「ちーずのあな」なのだから。

さて、リヴァイヴァル上映の第一作は、『モダン・タイムス (Modern Times)』 [チャーリー・チャップリン (Charlie Chaplin) 監督作品 1936年制作] だった。
作品としての映画については、既にここで紹介済だ。

ウエイターとして、主人公がある酒場で働きだした際のワンシーンの事である。
厨房の一角に、巨大なしろい固まりがある。その一角に、手回しのドリル (Drill Bit) で数箇所に (Eyes) を空け、そしてその一角をひょいと削り取って、皿に盛り合わせて配膳する。
それはなにかと言うと、チーズ (Cheese) なのである。

ぼくはそのシーンを観て、長年の疑問がようやくに氷解したと想った。
つまり、米国産の漫画やアニメに登場するチーズ (Cheese) の、謎の一端が、そのシーンを観て、やっと解決したと、想ったのだ。
と、いうのは、そこに描かれているチーズ (Cheese) の殆どが大抵、三角柱 (Triangular Prism) の様な三角錐 (Tetrahedron) の様な形状をしている上にさらに、数箇所におおきな (Eyes) が空いているからなのだ。
当時、ぼくが知っているチーズ (Cheese) と言えば、 学校給食 (School Meal) の際に支給されるペースト状の [不味い] プロセス・チーズ (Processed Cheese) か、肴として父親の前に出される [不味い] 6pチーズなのだった。後者は辛うじてその形態は、米国産の漫画やアニメのそれに似ていなくもないが、 (Eyes) は空いていない。一体、あの (Eyes) はなんなのだろう、というのが、ぼくの中のいくつもある疑問のなかのひとつだったのである。

images
ただ、不思議なのは、身の回りに穴のあいたチーズ (Cheese) なぞないのにも関わらずにぼく達は、あれをチーズ (Cheese) だと誰しもが認識していた事だ。
しかも、それはチーズ (Cheese) だけに留まらない。マンガ肉なる名称をもつあの肉も、赤塚不二夫 (Fujio Akatsuka) 描くチビ太 ( Chibita) のおでんも、そんなモノは実際に観た事も聴いた事もないくせに、それぞれをとして、おでんとして、否が応でもなく、ぼく達はその存在を認知しているのだ。
[上記掲載画像は、謂うまでもなく、アニメ番組『トムとジェリー (Tom And Jerry)』 [ハンナ=バーベラ (Hanna-Barbera) 制作 19401958年制作] から第2話『夜中のつまみ食い (The Midnight Snack)』 [本国では1941年7月19日の放映]。]


だから、『モダン・タイムス (Modern Times)』 [チャーリー・チャップリン (Charlie Chaplin) 監督作品 1936年制作] のそのシーンを観て、チーズ (Cheese) というモノは本来、ああいうふうに、わざわざ (Eyes) を空けて喰らうモノだと、ぼくは理解したのだ。

と、ここでこの一文を終わらせてみたい誘惑にもかられるけれども、事実は事実として、ちゃんと書いておかないと、不味いよね。

穴のあいたチーズ (Cheese) というのは、実際にある。
エメンタール・チーズ (Emmental Cheese) と謂って、チーズ (Cheese) の王様とも呼ばれる高級品種だ。
その製法の結果、プロピオン酸 (Propanoic Acid) の発酵 (Fermentation) によって発生する炭酸ガス (Carbon Dioxide) の気泡によるモノで、結果的に、 (Eyes) が出来てしまうモノ、らしい。

つまり、映画の中では、プロセス・チーズ (Processed Cheese) かなんかの安チーズ (Cheese) をさも、高級なエメンタール・チーズ (Emmental Cheese) に見せかける細工をしていた、というのが、あのシーンの正しい理解の仕方なのである。

と、謂う事は本来ならば、あのシーンでも、観客から笑いがこぼれるべきシーンなんだろうな。その後、この映画は何度か観る事になるのだけれども、ぼくの記憶の中では、そんな観客からの反応も一切なかったんだけれども。

そして、猫のトム (Thomas "Tom" Cat) と鼠のジェリー (Jerry Mouse) は、随分と高級食材を巡っての攻防を常態化させていた、という訳なのである。
その辺の事情は、本邦で謂うところの、♩お魚くわえたどら猫 追っかけて 素足でかけてく 陽気なフグ田サザエ (Sazae Fuguta) とは、随分と違う光景なのかもしれない。

次回は「」。
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