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2008.01.22.20.06

るけいちにて

フランツ・カフカFranz Kafka)の短編小説であって、彼の他の多くの作品同様に、これも作者の死後発見された遺構のひとつ。
未完の作である。
フランツ・カフカFranz Kafka)の遺言では、ごくわずかの作品を除き、ほとんどの作品を焼却処分する事になっていた。だがしかし、友人のマックス・ブロートMax Brod)がその遺言を執行せずに発表した。
そのひとつがこの作品である。

流刑地にてIn der Strafkolonie)』もまた、一編の物語としてみれば、他のフランツ・カフカFranz Kafka)作品同様に、恐ろしく単純な構造となっている。

物語の冒頭、主人公が一匹の毒虫と化してしまった、その後の顛末を描く『変身Die Verwandlung)』。
いつまでたっても目的地に辿り着ずに堂々廻りばかりを繰り広げる『Das Schloss)』。
謂れなき理由で己の預かり知らぬ処で、既に判決が下されている『審判 Der Process)』。
等々。
本来ならば、小説として書きあげられるその前や、小説の最期のページが閉じられたその瞬間から、物語が始る様な、物語以前の物語。

もしくは、それは記憶の澱に沈澱する得体の知れぬもの。

なぜならば、なにかの原因で己の身体が変容していく過程が描かれている物語はいくらでもあるし、目的地に守備よく忍び込んで、そこからなにかを盗み出す過程が描かれている物語はいくらでもあるし、それになによりも、判決が下される以前の犯罪の物語や、その犯罪を裁く過程が描かれている物語はいくらでもあるからだ。
嘘だと思ったら「映画」を観なさい。特にハリウッド資本のそれら(Hollywood Movies)を。

しかしながら、フランツ・カフカFranz Kafka)の小説はその対極のものとして、位置付けられる。本来ならば「映画」の導入部に続くはずの、その前の物語。もしくは。「映画」が終了してエンドクレジットが長々と流れ出した、その瞬間に始る物語。なのである。

そして、フランツ・カフカFranz Kafka)の小説は、常にその様なものとして構築されて、その様なものとして読まれていく。だから、起承転結Kishotenketsu)や登場人物の喜怒哀楽(Emotions)が物語の構成要素だと信じて疑わない様なヒトビトは、酷く不安な状況に放置される。

何故ならば、それは記憶の澱に沈澱する得体の知れぬもの。

永遠に奈落の底に堕ち続けている住宅の中でくりひろげられるホームドラマや、名探偵や真犯人が次から次へと脈絡もなく殺され続けるミステリーや、終始キスシーンのみを延々と垂れ流しているメロドラマの様な様相を呈しているからだ。

images

流刑地にてIn der Strafkolonie)』で描かれているのは、一風変わった処刑機械であり、公開処刑の模様である。その処刑機械が所与のコマンドに従って、忠実に、処刑すべきモノを処刑していく、ただそれだけの叙景を描写したものである。

掲載した画像は、その処刑機械のデッサン図。既にSPKの作品を紹介したこのページで紹介している。

もしかしたら、この掌編は、20世紀初頭のオートマティズム(Automatism)への幻想が結晶化した作品として位置付けられて、ヒトビトの記憶から忘れ去られる運命にあったものかもしれない。
実際には、フランツ・カフカFranz Kafka)の遺言が忠実に執行されていたとしたら、そもそも、我々はそれを読む事さえもできなかったのだけれども。

しかし、かのミッシェル・カルージュ(Michel Carrouges)が、マルセル・デュシャン(Marcel Duchamp)の『彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも(La mariee mis a nu par ses celibataires, meme)』[通称大ガラス(The Large Glass)]と結び付けて、オートマティズム(Automatism)幻想に囚われた様々な創造物と比例検証したのである。
所謂『独身者の機械(Les Machines Celibataires)』。その象徴のひとつとして、この小説で描かれているものが位置付けられている。

と、本来ならば『独身者の機械(Les Machines Celibataires)』論に従って、小説『流刑地にてIn der Strafkolonie)』を読みすすめるべきなのかもしれないけれども、フランツ・カフカFranz Kafka)のひそみにならって、ここで中断してみる事にする。

次回は「」。
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