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2013.05.17.10.52

Sweet Pain

真新しい靴を履かされて、その児は初めて、自宅の玄関から外へと出た。

そこは初めて観る様な光景だった。
母親に抱かれて、父親に抱かれて、もしくはその両親のいずれかに抱かれて、観た景色には違いない。さもなければ、彼らの誰かによって据え置かれた、乳母車から観た風景であるのに違いない。

にも、関わらずに、そこは、その児にとって未知なるものばかりに感じられた。

それは、初めて自身の脚で起っていたからかもしれない。
それは、これまでよりも、随分、低い位置に、その児自身とその視座があったからかもしれない。

だから、自分自身を取り巻く、ありとあらゆるものの、情報量の多さとその密度の濃さに、一体、なにをすべきなのか、瞬時には判断がつかなかったのだ。

恐らく、その場にいたのがその児独りだったのならば、その児は、いつまでもいつまでもそこに立ち尽くしていたのかもしれない。
それ程に、めのまえにひろがるものと、そこからとどけられる音や匂いや気配は、濃厚で豊穣だったのである。

だけれども、だれかがそっと、囁いたのだ。
いつまでそこにいるのか、と。

そして、その声に促されるままに、その児は一歩、二歩と歩き出そうとする。そうして、実際に、一歩、二歩と歩く。

最初はおぼつかない、恐る恐るのものだった。だが、それも次第に、速度が早まる。
それはその児に自信をもたせた結果かもしれないし、歩く事が今度は、起つ事を忘れさせてしまったのかもしれない。

つまり、その結果として、その児はものの見事に転倒してしまったのだ。

前のめりに地面に腹這いになり、おおきな衝撃が身体を襲う。
一体、なにがあったのか解らない。だけれども、めのまえが一瞬ひかり、次の瞬間には真っ暗闇に包まれる。そして、今、目の前には暗い色をした地面しか観えない。

その児は、おおきな声をあげて泣きじゃくり始めた。

[the text inspired from the song "Sweet Pain" from the album "Destroyer" by Kiss.]

images
the single "Shout It Out Loud" for the B side as "Sweet Pain" by Kiss

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