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2013.05.14.09.54

ずのうけいさつってのはどいつらなんだよ

って問われれば、日本のロック史 (Rock And Roll History In Japan) に明るいモノであるならば、間髪を入れずに答えるのに違いない。
パンタ (Panta) とトシこと石塚俊明 (Toshiaki "Toshi" Ishizuka) だよ」っと。
また、妙にすれっからしたモノであるのならば、このふたりに加えて次のふたりを答えるのかもしれない。
「そして藤井一彦 (Kazuhiko Fujii) とジゲン (Jigen)。2001年以降ならば」

だけれども、残念ながらこの記事でとりあげるのは、"日本の"頭脳警察 (Zunou Keisatsu) というバンドのネーミングの元となった、フランク・ザッパ (Frank Zappa) の楽曲、ザ・マザーズ・オブ・インヴェンション (The Mothers Of Invention) 名義で発表されたファースト・アルバム『フリーク・アウト! (Freak Out!) 』[1966年発表] 収録楽曲『フー・アー・ザ・ブレイン・ポリス? (Who Are The Brain Police?)』なのだ。
頭脳警察 (Zunou Keisatsu) に関しては、最期の方にこっそりと再登場する。

ところで、本題に入る前に書かなければならないのは、拙稿のタイトルについて、だ。
このタイトルの元となったのは、ウィキペディア日本語版 (Japanese Wikipedia) での頭脳警察 (Zunou Keisatsu) について書かれたこの記事だ。正式には『頭脳警察ってのはどいつらなんだよ? (原題:Who Are The Brain Police?)』と、ある。
この記事での叙述に素直に従えば、まるで『フー・アー・ザ・ブレイン・ポリス? (Who Are The Brain Police?)』の邦題が『頭脳警察ってのはどいつらなんだよ』であるかの様に、読めてしまう。
だけれども、現行はオリジナルの英題をそのまま仮名書きにした『フー・アー・ザ・ブレイン・ポリス? (Who Are The Brain Police?)』で、流通している様なのだ。
それでは一体、あたかも邦題の様な面構えでその頁に書かれている『頭脳警察ってのはどいつらなんだよ』ってのは、なんなのだろうか。

と、引っ張っておきながら、あらかじめ断っておくと、実は良く解らない。しかも、良く解らないが上に、邦題としてはいい味を出している。少なくとも、現行の英文をそのままに仮名に書き下ろしたモノよりは遥かに魅力的だ。

images
最初は、国内盤『フリーク・アウト! (Freak Out!) 』が初めて発売された際に付けられた邦題かと、想ったのだけれども、実はそうではない。
その際の邦題は『ボスは誰だ』という。
しかも邦題が付けられただけではない。本国盤と同様に『トラブル・エヴリィ・デイ (Trouble Every Day aka Trouble Comin' Every Day)』とのカップリングB面曲としてシングル・カットもされている。上に掲載したのは、その際の国内版シングル・ジャケットである。
ちなみに、A面曲である『トラブル・エヴリィ・デイ (Trouble Every Day aka Trouble Comin' Every Day)』は『つらい浮世』という邦題を与えられていて、そのジャケットには、都合2曲の英詞のみならず、湯川れい子 (Yukawa Reiko) によるバンドの紹介と簡単な楽曲解説が掲載されている。
もしかしたらその一文こそが、本邦に初めてフランク・ザッパ (Frank Zappa) を紹介したモノなのかもしれない。

せっかくなので、『フー・アー・ザ・ブレイン・ポリス? (Who Are The Brain Police?)』ならぬ『ボスは誰だ (Who Are The Brain Police)』の曲目解説の部分を引用してみよう [全文はこちらで読む事が出来る]。

「エコーをかけ、わざとテープの回転をおとし、突然の悲鳴でショックを与え、『疲れた、死にそうだ』というつぶやきが空間にこだまする、凝りに凝った曲。まるで悪夢でも見ているようです。LSDとはこんな気持ちにさせる薬なのでしょうか?ザッパの曲です。」

リゼルグ酸ジエチルアミド (LSD : Lysergic Acid Diethylamide) 云々の件りを今は亡きフランク・ザッパ (Frank Zappa) 御大に告げたら、大嘆きの末に、彼の大怒りをかってしまうだろう。
と、言うのは、言うまでもなく、御大フランク・ザッパ (Frank Zappa) 自身は、アンチ・ドラッグで主義一貫しているからである。彼の楽曲から紫煙 (Sidestream Smoke) が立ち上る事はあっても [酷いヘヴィー・スモーカーなのだ]、紫のけむり (Purple Haze)が立ち上る訳は決してないのだ。
何故ならば、一例として挙げれば、有能なスライド・ギター (Slide Guitar) の名手でありながらも、ドラッグ・ソングばかりを持ち込むという理由で優秀なバック・メンバーを馘首してしまう程なのだ。ちなみにそのミュージシャンの名前はローウェル・ジョージ (Lowell George) と言い、後に自身のバンド、リトル・フィート (Little Feat) で大成したと、知っているヒトは当然知っている筈の事実をここでも自慢げに書き添えておく。

ぢゃあ、と言って、湯川れい子 (Yukawa Reiko) に非があるのかというと、確かに非はあるのだけれども、我が国に最初にフランク・ザッパ (Frank Zappa) を紹介する事になっているのかもしれない一文を書いたモノとしては立派な非があるのだけれども、だからと言って、大声であげつらう程のモノではないのではないのかもしれない。
当時はそういうモノが時代の最先端として、蔓延していたモノでもあるし、それに第一に『フリーク・アウト! (Freak Out!) 』という語句自体が、『パニック状態になる、訳の分からないことをする (To Panic, To Lose Control)』という本来の意味から離れて、『麻薬による幻覚状態、麻薬幻覚者 (A Wild Delusion Especially One Induced By A Hallucinogenic drug)』という意味合いを持たされて流通しているのである。
湯川れい子 (Yukawa Reiko) が片面的な先入観でもって、そんな一文をものしてしまうのも宜なるかな、なのである。
尤も、アルバムに掲載された、フランク・ザッパ (Frank Zappa) による『ホワット・イズ・"フリーキング・アウト" (What Is "Freaking Out")』と題された『フリーク・アウト! (Freak Out!) 』の定義をきちんと読む事が出来たとしたら、当時蔓延っていたドラッグ・カルチャーの申し子の様なバンド群 / アーティスト群とは、隔絶したところに既に、フランク・ザッパ (Frank Zappa) と彼のバンドがいる事には、気づいた筈なんだけれども、ね。

さて、話題を元に戻す。

最初に発売された国内盤での邦題『ボスは誰だ』だけれども、これは明らかな誤訳というべきなのかどうか判断に苦しむところではあるのだけれども、厳密に解釈すると、誤訳なのである。
もしも題名が『フー・アー・ザ・ブレイン・ポリス? (Who Are The Brain Police?)』ではなくて、『フー・アー・ザ・ブレイン、ポリス? (Who Are The Brain, Police)』ならば、正しいのかもしれない。つまり、カンマ (Comma) の在不在という問題なのだ。勿論、往々にして、この種の様な場合、必須である筈のカンマ (Comma) が省略されたり忘却されたりする事は多々ある事である。だから、本来ならば、その正味である本文にあたって、カンマ (Comma) の在不在によって解釈が左右される曲名の、何れの解釈が正しいのかは、そこで判断しなければならないのだ。

ところで、先程辺りから、なし崩し的に、本題に突入しているのだ。今、ここで書き綴っている与太話めいたモノは、落語の枕でも、余談でも、なんでもない。
つまり、この駄文のタイトルは『ずのうけいさつってのはどいつらなんだよ』と、言うのである。

フー・アー・ザ・ブレイン・ポリス? (Who Are The Brain Police?)』の歌詞を読んでみても、『ボスは誰だ』という邦題が正しい訳であるという確たる保証は一切、出来ない [邦訳はこちら、原詞はこちらで読む事が出来る]。
歌詞にあたってみても、只只管、タイトルと同じ様に、「頭脳警察は誰だ (Who Are The Brain Police)」と疑問を投げかけられているばかりなのだ。つまり、『ずのうけいさつってのはどいつらなんだよ』という根源的な問いには、ここでも何ら回答が用意されていないのだ。

頭脳警察 (The Brain Police) という言葉に対して、生真面目に正面から立ち向かうと、恐らく先ずは最初に、思想警察 (The Thought Police) 的なモノを想い浮かべるのではないだろうか。
太平洋戦争 (The Pacific War) 終結前にこの国に実在した所謂特高こと特別高等警察 (Special Higher Police) とか、小説『一九八四年 (Nineteen Eighty-Four)』 [ジョージ・オーウェル (George Orwell) 作 1949年発表] や小説『華氏451度 (Fahrenheit 451)』 [レイ・ブラッドベリ (Ray Bradbury) 作 1953年発表] とかの、統制国家の中に登場する、ヒトビトの内心を支配し統御しようとする組織の事だ。
確かにそれがまさに頭脳警察 (The Brain Police) なのかもしれない。
だけれども上の表記を観れば明らかな様に思想警察 (The Thought Police) と頭脳警察 (The Brain Police) の表記 [特に英文上の] を並べてみると、微妙なニュアンスの違いが潜んでいる様にも観える。

と同時にその一方で、また異なる解釈も頭をもたげる。
例えば、映画『セルピコ (Serpico)』 [シドニー・ルメット (Sidney Lumet) 監督作品 1973年制作] のモデルとなったフランク・セルピコ (Frank Serpico) が、警察内部の汚職と腐敗を初めて内部告発したのが1967年。アルバム『フリーク・アウト! (Freak Out!) 』発表の翌年だ。その辺りから想像を巡らすと、頭脳警察 (The Brain Police) という語句が活用され得る場所が確保されそうな気がする。
例えば、巨悪としての警察組織とか、もしくはそれとは逆の、それに対抗しうる本来はあり得べき警察組織とか、その様なモノを連想してしまうのだが、どうだろうか。

ついでに書いておくと、旧くはC・オーギュスト・デュパン (C. Auguste Dupin [エドガー・アラン・ポー (Edgar Allan Poe) 創造] やシャーロック・ホームズ (Sherlock Holmes) [アーサー・コナン・ドイル (Sir Arthur Conan Doyle) 創造] やアルセーヌ・ルパン (Arsene Lupin) [モーリス・ルブラン (Maurice Leblanc) 創造] が悪し様に批判する、古典的な正統派ミステリに登場する、無知蒙昧なる集団である警察組織の、反語なのかもしれない。彼らは、懸命に地道に丹念に捜査するのだけれども、得るべき成果は決して挙げられない。彼ら単なる名探偵登場の婢でしかない。木を観て森を見ずに、便せん差しの中の封書を調べようとしない輩だ。そんな警察組織を否定し止揚する概念として、頭脳警察 (The Brain Police) という言葉が編み出されても不思議ではない。

だけれども、どの解釈もなんとなく無理がある。

では、フランク・ザッパ (Frank Zappa) 本人はどういう解釈なのだろう。彼自身の言葉で、頭脳警察 (The Brain Police) を説明しているモノは、ないだろうか、と漁ってみると、以外とあっさりと登場した。ここで英文だけれども、読む事が出来る。都合みっつの解説があるが、歌詞の内容に踏み込んでいると想われるのは、その最期のみっつめ、1988年にボブ・マーシャル (Bob Marshall) のインタヴューに応じたモノだ。
最初からそれをそのまま紹介しろと批難する向きもないでもないが、そんな輩は無視するのに限る。
ともかく、作者自身の解釈があるので、それをかいつまんで、ぼくなりの言葉で咀嚼してみると、次の様なモノになるのではないか。

誰もが、己自身の中に、己自身の思考や行動を監視し規制し抑止しようとする、警察組織にも自警団にも似た、権力機構が存在する。

そして、この説明は、その楽曲を収めたアルバムのコンセプトとなんら抵触しないばかりか、そこでの提言をさらに補い得るモノなのだ。というか、その主張『フリーク・アウト! (Freak Out!) 』を阻止しようとする最大の抵抗勢力が頭脳警察 (The Brain Police) なのである。
なぜならば、『フリーク・アウト! (Freak Out!) 』とは、『既成の社会の価値観からの逸脱としての突然変異を、個人レベルで達成すること (On a personal level, Freaking Out is a process whereby an individual casts off outmoded and restricting standards .... )』という謂いなのだから。

と、言う具合に、とりあえずの結論に辿り着いたのだけれども、古今東西、ブレイン・ポリス (The Brain Police) を名乗るバンドはいくつか存在しているのだけれども、ブレイン・ポリス (The Brain Police) とそう名乗る彼ら自身も、ここで辿り着いた結論と同じ位置にいて、そんな名称を名乗っているのだろうか。
勿論、この疑問は、"日本の"頭脳警察 (Zunou Keisatsu) にも向けられ得るモノなんだけれども。

次回は「」。
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