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2013.05.03.11.54

Quiet Man

デスクの上にある雑多なものを総て、払いのける。

電話はあっけらかんと軽い音をたて、筆記用具はどこまでも転がっていき、書類の束は無様にそのまま雑音と共に直滑降だ。
ここでも、己の想い描いた通りの事態が起きず、男はまた無念の溜息を漏らす。

キャビンから接客用のボトルを取り出して、なにもないデスクに据える。
グラスをふたつ用意したのは、これまでの習慣が成せる業で、そこにも己の愚かさが立ち顕われる。

大声で笑い出してしまおうか。
だが、男は習慣に従うままに、ふたつのグラスに均等に酒を注ぐ。

窓の外は激しい風が吹き始めた様で、得体のしれないモノがまるで吹雪の様に、舞い始める。

今に屍体も空を舞う。
あきれた男は、シャッターを下ろし、暗い部屋の中に独り佇む。
電気が途絶えてもう、随分になるのだ。

明日になれば、このビルも根絶やしになる。
探し求めるべき恋人も、己にかしづくべき部下も既にいない。

ようやく男は、グラスのひとつに手を伸ばす。
だから、なんだと言うのだ。
絞り出す様にして、そのことばを発し、一気に呑んだ。

遥か彼方から、怒号の様な地響きが聴こえる。

[the text inspired from the song "Quiet Man" for the album "Systems Of Romance" by Ultravox in John Foxx Era.]


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