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2013.04.12.11.35

Nice Age

壮観だった。
一夜にして王となる、たしかそんな表現がその昔、まかり通っていた。
今は昔の、表現だ。
だが、その時のぼくにとって、その言葉程、ぼく達を語る言葉として相応しいものはなかった。

その駅の中央口を出れば、繁華街が広がる。そして、正面にある幾つものおおきなストリート・ヴュー。そこに映し出されているものこそ、ぼく達の成果だった。
勿論、そこだけではない。そこにある量販店のどれでもいい、そこに並べられている総ての、ありとあらゆるモニターには、同じものが映し出されているのだ。

しかも、それはこの繁華街に限っての事ではない。この都市の総て、この国の総て、そしてもしかしたら世界中に、同じ映像が配信されて、誰もが皆、それに見入っているのだ。

ああ、誓ってもいい。

かつて、見張るものの寓話が語られていた。だれもがどこでもなにをしようと、そのものが観ている、と。
じっと、黙って、だけれども、絶対的な権力をもって、ぼく達を観ている。
そんな神話だ。

そして、そのものの監視に威圧されて、ぼくらは萎縮した生活を強いられてきた。
無言の圧力に屈服しているのだ。

だが、どうだ。今や。
神話は神話でしかない。伝説は伝説でしかない。

それを語るものと、それに耳を傾けるもの、その双方が信仰していない限り、神話も伝説も、単なる虚構だ。決して、それは現実のものとはなりえない。

ぼく達がかつて囚われていたその寓話も、ほかの数多くの神話や伝説と共に、ちからを喪い、潰えてしまった。

そして、今や、観るものと観られるものは、その立場を完全に違えた。
ぼく達がそれを観、ぼく達がそれを観察し、ぼく達がそれを監視する。
そうして、ぼく達は、観る事が快感である事を知ったのだ。

いま、ありとあらゆるモニターを占拠して、映し出されているあれこそが、ぼく達が欲したものなのだ。

ははははは。
笑いがとまらない。
まさに、文字通りに。
ぼくは可笑しくて可笑しくて、そこに突っ伏して、大声を上げて、笑い出してしまったのさ。

[the text inspired from the song "Nice Age" for the album "X∞Multiplies" by Yellow Magic Orchestra]


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