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2013.04.02.07.03

らーめんのすすりかた

ぼくの目の前に一杯の拉麺がある。
多分、ぼくの記憶に間違いがなければ、それは産まれて初めて喰べる拉麺であって、それをぼくはその店でその後、何度も何度も味わう事になるモノなのである。

それは醤油味の拉麺であって、供された店は、近所の定食屋である。主な品書きは、饂飩や蕎麦だから、今、ぼくの目の前にある拉麺は、俗に言う蕎麦屋の拉麺と呼んでも差し支えないと、思う。
それとも、拉麺の代わりに支那蕎麦とか中華蕎麦と、呼ぶべきモノであろうか。

その店は、ぼくの叔母が任されている化粧品雑貨店の入った、マーケットの隣にあって、ぼくは昼食やおやつ代わりに、母や叔母等によく連れて行かれた店なのである。

だから、ぼく自身が喰べた拉麺の記憶は曖昧かもしれないけれども、3歳下の弟を始めとする、ぼくよりも幼い親戚連中が、ぼくの隣の席で同じ様に、母や叔母達から、拉麺を供されているのである。
つまり、ぼく自身がその店の拉麺を卒業して、それ以外の品書き、例えば、炒飯やかつ丼を喰べているその横で、彼らは、母や叔母の言いなりになるがままに拉麺を喰べていたのだ。

「○○ちゃん、らーめんたべようか」

「いま、おわんたのんだから、ちょっとまってね。よそってあげるから」

「あついからね、ふーふーして、たべようね」

そんな光景を鼻で笑いながら、当時のぼくは目の前にある料理をかっ喰らっていた訳だけれど、ほんの数年前、もしかしたら僅か数ヶ月前かもしれないけれども、同じ様な扱いをされて、その拉麺を喰べていたのに、違いない。

勿論、当時のぼくはそんな自己相対化をした視点を持ち様もなく、幼い彼らにかかりっきりの彼女達の振る舞いや、それに成すが侭に任せている彼らの傍若無人とは独り離れて、それに比して冷静な自身の"お兄さん"ぶりの喰いっぷりに、熱中していたのである。

さて、問題は、そんな"お兄さん"になる前の、自身の拉麺の喰いっぷりの事だ。

何故ならば、当然の事ながら、「おわんで」「ふーふーして」喰べていた時代から、一挙に炒飯やかつ丼の時代が訪れた訳ではないからである。
つまり、独りで一人前の拉麺を喰べていた時季というモノが、相当永かった様に記憶しているからだ。

目の前にある拉麺は、醤油味である。念の為に、ここで繰り返しておく。

そして、その拉麺には、次の様な具が添えられていた筈だ。
叉焼。麺媽。鳴門巻。茹で玉子。焼き海苔。青葱。

今、憶い出しながら列挙してみると、結構、豪華なトッピングに思えるが、これは当時の平常なのである。所謂、蕎麦屋の拉麺は、この様なモノであり、当時の百貨店のファミリー・レストランで供されるモノも、似た様な装備であった筈である。もしかしたら、昭和の拉麺は完全食を目指していて、栄養価が高く、一見、豪華な具が麺の上一面に、据えられていたのかもしれない。

さて、問題は、叉焼、麺媽、鳴戸巻、茹で玉子、焼き海苔、青葱、これをどの順番で喰べるのか、という問題なのである。

ひとつには、好物もあれば苦手なモノもある、という事だ。
ひとつには、その時その時の、はらのへり具合である。冒頭に記した様に、昼食の場合もあれば、おやつの場合もあるのだ。今ならば平然と、替え玉のお代わりを二三回はいけてしまうモノだけれども、当時は、さすがにおぼつかない時もあるのだ。
そしてしかも、なぜかこの店にはいる時は、母も叔母も「無理して喰べなくていいからね」というのである。自宅での食事の際は、総て平らげるまでは、席を離れてはいけないと厳命されているのに、である。
しかも、そんな母や叔母の甘言に文字通りに甘えて、好物だけを平らげ、嫌いなモノを遺してばかりいると、後から後から、小言ばかりが繰り返されてしまう。
だから、「無理して喰べなくていいからね」をそのまま言面通りに受け取るのは危険で、きちんと総て遺らず平らげるにしくはないのだ。

と、いうか、それは無言の圧力でもあるのだ。
むしろ、彼女達はこう言いたかったのではないか。
大人しく、静かに、手間のかからない様に、と。
さもなければ、もう、二度と連れてこないからね、と。

と、言う様な、厳しい条件下で、この拉麺を喰べなければならないのである。

images
さて、どうしたものだろう。
[イメージとしては、こちらが当時のそれに、最もちかいと思う]

次回は「」。
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