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2013.03.22.07.52

Kick In The Eye

或るおんなが親友と仲違いした。

同い年で、小学生からずっと、同じ学校、同じクラス。
背格好はもとからそっくりで、そのうえに、いつのまにか、ヘアスタイルはおろか、服装もお揃いにするようになった。
そして、いつもふたり一緒に行動するから、親でも取り違えてしまうことも多々あった。
見知らぬひとからみれば、仲のよい姉妹にも、双子にも、みえただろう。

幼いときは、それでもいい。
だけれども、いずれは、道を分たなければならない時がくる。

このみの味や、お気に入りのアクセサリーや、大好きなマンガのヒロインや。
いずれは、すこしづつ、自身だけの好みや嗜好が、顕われるようになる。

いや、こんな場合はたいしたものではない、なんの問題も起きないし、たとえ、ふたりのあいだで口論や喧嘩となっても、それぞれがそれぞれの選んだものを手に入れればいいだけのことなのだ。
目の前にいる自身にそっくりな人物の、趣味の悪さが気に障るだけなのだから。

そうではなくて、たったひとつのものしかないものを、ふたりが同時に欲しくなった時に、事件が起きてしまうのだ。

つまり、ふたり同時に恋をした。しかも、相手はたったひとり。
つまり、同じ人物に対して、ふたりは恋をした。

そんな、どこにでもある、恋の行く末は、ここでは関係のない物語。
きっとだれかがどこかで話してくれるだろう。そして、その語り手は、そんな恋の物語の、当事者なのかもしれない。

ある日、おんなが大喧嘩をした。
幼馴染みとも呼べる、親友と。
原因は、端から見ればほんの些細なもので、単なる思い過ごしや勘違いの様なもの。
二三日もすれば、自然と忘れ去られて、その間の数日が、何事もなかったかの様に、忘れ去られてしまう様なもの。
現に、過去に、そんな仲違いや喧嘩や口論は、何度もあったし、きっと恐らくこれからも、あるだろう。
そんな程度のものが、今回も原因だ。

涙を泣き枯らしてかえってきたおんなは、なにを思ったのか、ふたりの思い出の品々をぶちまけてしまう。
投げて投げて、叩きつけて叩きつける。そうして、思いつくまま、気のすむまで、やつあたりすれば、あとは再び、大泣きに泣けばいい。それで、気が晴れる筈なのだ。

だけれども、そこでそのおんなは、アルバムをみつけてしまう。そして、そこにたくさんの写真が収まっている事に気づいてしまう。
さっき大喧嘩して別れたあのおんなの、だ。

あとはもう誰も止められない。あとはもう何も止められない。
剥がして剥がして剥がして剥がして、破って破って破って破る。
幼い頃からずっと一緒だったから、どの写真にもどの写真にも、あのおんなが写っている。

おのれのだいじなヒトビトとの間にそのおんながなぜかいて、おのれのだいじなじかんとだいじなばしょをおかしている。

逆上したおんなは、そのおんなこそ自身にとって最愛のひととしていたことをとうに、忘れてしまっている。

そうして、剥がして捨てただけでは気が収まらずに、破って捨てただけでは気が収まらずに、いつのまにか手にした鋏のその先で、写真のなかのそのおんなの顔を抉り始めたのだ。

もう涙は流れていない。とうの昔に枯れ果てた。流れているのは汗だけだ。いや、それだけではない。鋏を手にしたその掌からは、あかいものが滲んでいる。流した汗で掌が滑り、そしてそれが刃の行方を誤らせて、血飛沫となる。

最初は、大声を上げていた。そのおんなを罵倒し、罵り、怒りと呪いのことばを放っていた。だが、次第に、喉はかすれ、声は細り、今はただ、黙々と、鋏をふるうだけだ。

あれから、何時間がたっただろう。

それとも、すべては一瞬のことなのかもしれない。

ふと、眼をあげると、鏡の中に、おんなが映っている。
あの、おんなだ。
血まみれの右掌には、鋏がある。

その日、彼女は、視力を喪った。
おんなの顔をみることはもう二度と、ない。


[the text inspired from the song "Kick In The Eye" for the album "Mask" by Bauhaus]


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