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2013.03.26.06.50

まんどらごら

マンドラゴラ (Mandragora)、またの名をマンドレイク (Mandrake)。
場合によっては、アルラウネ (Alraune) とも呼ばれているが、その名をも巻き込んで語るとすると、その名を冠した小説『アルラウネ (Alraune. Die Geschichte eines lebenden Wesens)』 [ハンス・ハインツ・エーヴェルス (Hanns Heinz Ewers) 作 1911年発表] とその映画化作品『妖花アルラウネ (Alraune)』 [ヘンリック・ガレーン (Henrik Galeen) 監督作品 1928年制作] にも言及しなければならなくなるから、ここではその呼称に関しては触れない様にしておく。

マンドラゴラ (Mandragora)、もしくはマンドレイク (Mandrake) とは、実在の植物の名だ。
ナス科 (Solanaceae) マンドラゴラ属 (Mandragora) に分類されるそれは、地中海地域から中国西部にかけて自生し、3種が認められている。根にアルカロイド (Alkaloid) を含み、その結果、古来より、薬用とされていた。そして、同じ理由によって、毒物でもあり、使用方法や使用量によっては、致死となる。

創世記 (Liber Genesis)』第30章 (30) に登場する「恋茄子 (Mandragora)」とは、この植物の事である。

「さてルベンは麦刈りの日に野に出て、野で恋なすびを見つけ、それを母レアのもとに持ってきた (And Reuben went in the days of wheat harvest, and found mandrakes in the field, and brought them unto his mother Leah. )」 [第30章14節 (30 - 14)]

ぼく達が、この実在の植物としてのマンドラゴラ (Mandragora)、もしくはマンドレイク (Mandrake) を知る、最大の遠因は、ぼくが書いた上の文章に於ける、最期の部分である。
つまり、「毒物でもあり」「致死となる」からである。
仮令、致死量に満たなくとも、嘔吐や散瞳 (Mydriasis) のみならず、幻覚や幻聴をもたらすのである。

そして勿論、ぼく達に馴染み深いのは、実在の植物としてのそれではない。

その証拠に、『悪魔の事典 (Dictionary Of Demons A Guide To Demons And Demonologists In Occult Lore)』 [フレッド・ゲティングズ (Fred Gettings) 著 大瀧啓裕1988年出版] にある、次の一節を紹介しよう。

「マンドレイクは根が二叉になっており [二本の足をほのめかす]、しばしば人間の姿をしていると受けとられ、地面から引き抜くときには、悲鳴をあげると考えられた」

かのウィリアム・シェイクスピア (William Shakespeare) の幾つかの作品にも、その様な植物として、登場している。

「曼陀羅華を根びくやうな、凄い氣味のわるい聲を聞いたら (Shrieks like mandrakes' torn out of the earth.)」『ロミオとジュリエット (Romeo And Juliet)』第4幕第3場:ジュリエットの部屋 (Act 4, Scene 3 : Juliet's Chamber) 15911596年頃成立]

「罌粟でも、惡魔林檎でも、世界中の如何な睡藥でも、 もう昨日だでのやうに心持よく眠ることは出來まい。 (...Not poppy, nor mandragora, nor all the drowsy syrups of the world, shall ever medicine thee to that sweet sleep which thou owedst yesterday)」『オセロー (Othello)』第3幕第3場:城の庭 (Act 3, Scene 3 : The Garden Of The Castle) 1602年成立]

前者での「曼陀羅華」、後者での「惡魔林檎」がそれにあたる。
翻訳はいずれも坪内逍遥 (Shoyo Tsubouchi) のモノで1910年の出版である。

これ以外にも、『アントニーとクレオパトラ (Antony And Cleopatra)』第1幕第5場:アレクサンドリア クレオパトラの城 (Act 1, Scene 5 : Alexandria. Cleopatra's Palace) 16061608年頃成立] や『ヘンリー4世 第2部 (The Second Part Of King Henry The Fourth)』第3幕第2場:グロスタシャー シャロー判事邸前 (Act 3, Scene 2 : Gloucestershire. Before Shallow's House) 15971598年頃成立] にも登場しているらしい [掲載すべき邦訳がネット上になかったので割愛するけれども、興味がある方は原文をご覧になるといい。上掲にリンクを貼ってある]

だけれども、ぼくがマンドラゴラ (Mandragora) ないしはマンドレイク (Mandrake) の存在を知ったのは、ウィリアム・シェイクスピア (William Shakespeare) の諸作からでもないし、その前に引用した『悪魔の事典 (Dictionary Of Demons A Guide To Demons And Demonologists In Occult Lore)』 [フレッド・ゲティングズ (Fred Gettings) 著 大瀧啓裕1988年出版] からでも、ない。

ずっと、昔、小学生だった頃に入手した『世界妖怪図鑑』 [佐藤有文1973ジャガーバックス刊行] からだ。そこでは、己の身体の倍以上もある大きな植物を頭に生やした、一組の男女の、恐らく木版画と想われる、稚拙な挿絵と共に、紹介されていたのだ。

この本から、マンドラゴラ (Mandragora) 別名マンドレイク (Mandrake) という存在を知ったのは、決して少なくはない筈だ。ぼくと同世代のモノの、少なからざるモノ達が、この書物の恩恵を受け、この書物から薫陶を与えられている筈なのだ。
ちなみに当時、ぼく達クラスでは数名のモノがこの書物を有しており、さらにクラス内で皆が皆、回し読みしていたから、40数名全員が、その植物の知識を得ていた事になる。

それは、より長じた頃に、澁澤龍彦 (Tatsuhiko Shibusawa) や荒俣宏 (Hiroshi Aramata) 経由で、知識や影響を得るモノよりも、遥かに、おおきいモノだと想うのだけれども、果たして、実際は、どうだろうか。

images
それは例えば、上の画像だ [こちらに掲載されている]。
マンガ『マカロニほうれん荘』[鴨川つばめ19771979週刊少年チャンピオン連載] の『輝ける青春の虫干し!!』の回の、扉絵である。
このマンガの主人公のひとり、きんどーちゃんこと金藤日陽 が、その植物に扮しているのだ。
ぼく達は、その様なモノとして、マンドラゴラ (Mandragora) さもなければマンドレイク (Mandrake) に遭遇するのである。

しかもそれは、この回『輝ける青春の虫干し!!』だけではない、と想う。
[原典が手許にないので、記憶に基づいて書く、もし、事実誤認があるのならば、ご指摘を請う次第である。]

これとは別の回だ。
登場人物のひとりが、見知らぬ奇妙な植物が繁茂しているのを認める。そして、一本の紐を用意し、一方の端をその植物の根元に結わえ、もう一方の端を狗の頚に縛る。つまり、狗を走らせて、その植物を根こそぎ、地中から引っ張り抜こうというのである。
果たして、その結果、悲鳴とも雄叫びとも言える大音声「きゃ〜!!」と共に、その植物に化したきんどーちゃんこと金藤日陽 が、地中より登場するのである。

さて、大事な事は他でもない。知っているモノは誰でも知っている。
この一見奇妙な、狗を使った収穫方法が、古来より定められているこの植物の採取方法なのである。
何故ならば、地中より姿を顕わす際の、マンドラゴラ (Mandragora) やマンドレイク (Mandrake) の叫び声を聴いたモノは、死んでしまうからだ。
上に掲げた『ロミオとジュリエット (Romeo And Juliet)』第4幕第3場:ジュリエットの部屋 (Act 4, Scene 3 : Juliet's Chamber) 15911596年頃成立] での言及は、実はその事なのだ。

マンガ『マカロニほうれん荘』[鴨川つばめ19771979週刊少年チャンピオン連載] では、このシーンはほんの数齣を割いただけの描写であり、その前後に、マンドラゴラ (Mandragora) 云々マンドレイク (Mandrake) 云々の説明も描写も、一切ない。
しかも、きんどーちゃんこと金藤日陽 の「きゃ〜!!」は、彼のギャグ・ネタのひとつでもある。彼はことある事に、叫び騒ぎ雄叫ぶのである。
それ故、このマンガの当時の読者の一部は、単純な、きんどーちゃんこと金藤日陽 登場シーンとしてしか、理解出来なかった事と想う。

しかし、その一方で、きんどーちゃんこと金藤日陽が扮したモノが、マンドラゴラ (Mandragora) それかマンドレイク (Mandrake) であると、既に知っている読者は決して少なくない筈であり、しかも、その一部は、この登場シーンがこの植物の唯一にして絶対の入手方法であると、確実に知っているのである。

そしてまた、ゆうまでもなく、後に長じて幾つかの文献に遭遇した結果、あのマンガのあのシーンには、そおゆう意味合いがあったと、知らされるモノも、決して少なくはない筈なのである。

次回は「」。

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