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2013.03.03.20.08

死のうとした夜のお終り 第5話:The End Of Nights We Tried To Die episode 5.

列は遅々として進まなかった。
まだ、陽の光の方が早かった。気がつけば頭上に煌々と照り、また、気がつくと、西の空から長い長い影法師をつくり出している。
ああ、これでは一日が終わってしまう。
このまま、夜通しで明日の朝まで待たなければならないのか、それとも、ここを管理しているモノから解散を命じられるのか。いや、そんな事はない、せめて整理券の一枚でももらえれば、次の手立ての目処が着く筈なのだが。

そんないくら自身の中で反芻しても詮無い事ばかりが、あたまの中を駆け巡る。そうして、それだけに、ぼくも他のやつらと同様の、救い様もないどうしようもない輩に、ぼく自身をも分類しかねない。こうやって、並んで立っている、己の前にいるやつらの後頭部の連なりだけを観ていると、どんどんと、自信もプライドも反吐も吐瀉物もひっくるめた一塊にしか、感じられなくなってくるのだ。

そんな煩悶をくりかえしているうちに、ようやく建物の中に入る事が出来た。そして、これまで悶々としていた自分自身の葛藤が、とても莫迦らしいモノに想えて来る。
何故ならば、建物のぐるりを廻っていた幾筋ものヒトの列は、その建物のいくつもある入口に呑込まれながらも、結局は、一本の太い列へと集約されているのだ。
つまり、どの列に並んでも、どの入口から入ろうとも、結局は同じなのだ。

何人かの担当官がいくつもある列を右往左往し、そこに並んでいるモノに、順番に質問をしている。どうやら、その質問の回答次第で、命運が決せられるらしい。

何時頃、ここに着いたのか、移動手段はなにか、今、何時か、それまでの時間なにをして過ごしていたのか、昼食は喰べたのか。

そんな些末な質問で、ひとりひとりの次への対応を決めている様だ。一見、無茶苦茶な段取りの様にも想えるが、それでもクレームも反論も一切、出ないのはどうしたものなのか。
それだけ、彼らの判断が的確で公正なモノなのだろうか。それとも、彼らの決定を覆す事も異を唱える事も、疾うに出来ない程、彼らは疲れ衰弱し麻痺しているのだろうか。

そして、それはぼくも同じなのだろうか。
ここに来て、ぼくの列の先頭はいっかにしても動こうとしていないのだ。何故、ぼくはそれに対して、なんの反応を示さないんだろう。それは先頭の男の不首尾のせいなのか、それとも、担当官の恣意的な判断のせいなのか。そして、ぼくは一体、誰に対して、文句や不平をぶつけるべきなのか。それとも、そんなコトを荒立てたが一切、総てが終わってしまうのか。

己自身の不手際に、焦れて焦れて仕様がなくなって、その仕様もなさに腹立たしさを募らせているその最中、担当官のひとりがぼくの眼の前にやってきた。

「きみ、はじめてだろう」

その言葉に反応しようとした矢先に、彼が、一枚の紙切れを差し出す。
「これに必要事項を埋めておく様に」
そう言い放つが早いか、背中をみせて向こうへ行ってしまった。
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