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2013.02.12.10.24

ねろんが

透明怪獣ネロンガ (Neronga) はTV番組『ウルトラマン (Ultraman)』 [19661967年放映 TBS系列] 第3話『科特隊出撃せよ (Science Patrol, Move Out)』 [監督:飯島敏宏 脚本:山田正弘 特技監督:的場徹] に登場した。

その名の通り、物語の前半では透明化した実体、みえない存在として顕われる [と、書くと語義矛盾を抱え込んでしまうが仕様がない]。これから語られる同シリーズ全39話の中に登場する様々な怪獣達の様態のヴァリエーションのひとつとして観る事が出来るかもしれない。だけれども、実質はむしろ、その逆だ。
同シリーズの第1話『ウルトラ作戦第一号 (Ultra Operation #1)』 [監督:円谷一 脚本:関沢新一金城哲夫 特技監督:高野宏一] の宇宙怪獣ベムラー (Bemular) も第2話『侵略者を撃て (Blast The Invaders)』 [監督:飯島敏宏 脚本:千束北男 特技監督:的場徹] の宇宙忍者バルタン星人 (Alien Baltan) も、宇宙から飛来した存在、地球外部にその出自を求められる存在だけれども、透明怪獣ネロンガ (Neronga) は地底に生棲する生物であって、文字通りの"怪獣"なのだ。そして、彼の様な"怪獣"の物語がこの後にいくつも語られるのである。つまり、第3話にして初めて、シリーズとしての保守本流の物語が綴られるのであり、その主役となるのが、この透明怪獣ネロンガ (Neronga) なのである。
[そして、第1話や第2話の様な、外部からの侵入と侵略を主テーマとしたのが、次に続くTV番組『ウルトラセブン (Ultra Seven)』 [19671968年放映 TBS系列] なのである。]

物語は科学特捜隊 (SSSP : Science Special Search Party) の準メンバーとも言うべき、ホシノ・イサム (Isamu Hoshino) [演:津沢彰秀 (Akihide Tsuzawa)] 少年を主軸に据えて、語られてゆく。
本作の脚本を担当した山田正弘は、前シリーズであるTV番組『ウルトラQ (Ultra Q)』 [1966年放映 TBS系列] において、第6話『育てよ! カメ (Grow Up! Little Turtle)』 [監督:中川晴之助 特技監督:小泉一] や第12話『鳥を見た (I Saw A Bird)』 [監督:中川晴之助 特技監督:川上景司] や第15話『カネゴンの繭 (Kanegon's Cocoon)』 [監督:中川晴之助 特技監督:的場徹] や第18話『虹の卵 (The Rainbow's Egg)』 [監督:飯島敏宏 特技監督:有川貞昌] といった、こどもを主役にした物語、ないしは、こどもの視点から語られる物語を紡いで来ていたので、ある意味で、山田正弘にとっても、番組の製作陣にとっても、王道のドラマツルギーを発揮させたと言うべきかもしれない。
だけれども、ホシノ・イサム (Isamu Hoshino) [演:津沢彰秀 (Akihide Tsuzawa)] 少年は第4話『大爆発五秒前 (Five Seconds To Detonation)』 [監督:野長瀬三摩地 脚本:南川竜 特技監督:高野宏一] や第6話『沿岸警備命令 (The Coast Guard Command)』 [監督:野長瀬三摩地 脚本:山田正弘 特技監督:高野宏一] や第11話『宇宙から来た暴れん坊 (The Rascal From Outer Space)』 [監督:満田かずほ 脚本:宮田達男 特技監督:高野宏一] や第19話『悪魔はふたたび (Demons Rise Again)』 [監督:野長瀬三摩地 脚本:山田正弘南川竜 特技監督:高野宏一] や第21話『噴煙突破せよ (Breach The Wall Of Smoke)』 [監督:樋口祐三 脚本:海堂太郎 特技監督:高野宏一] 等に登場する事はあっても、本作品の様に事件の渦中に巻き込まれたり、そこで目覚ましい活躍を魅せる事は、その後、殆ど行わない / 行えない様になってしまう。特に、シリーズ後半には殆ど、姿すらも顕わさなくなってしまう。
[外形的な要因は、彼を演じた津沢彰秀 (Akihide Tsuzawa) の怪我の為らしいが、もしもその物語の主要を成す登場人物ならば代役も不可能ではない。同シリーズのライバル番組であったTV番組『マグマ大使 (Ambassador Magma)』[19661967年放映 フジテレビ系列] でのガム (Gam) [演;二宮秀樹吉田次昭] の様に。]

恐らく、番組制作開始直後は、怪獣とウルトラマン (Ultraman) と科学特捜隊 (SSSP : Science Special Search Party) というみっつの主軸とその行動を、番組のメイン・ターゲットであるこどもたちに如何に魅せるのか、苦心したのに違いないのだ。どこかにこどもたち自身が番組の中へと、己を投影させ己を参加させる場所が必要ではないか、と。
つまり、江戸川乱歩 (Edogawa Rampo) の推理小説のヒーロー / 名探偵はあくまでも明智小五郎 (Kogoro Akechi) だけれども、そのジュヴナイルである怪人二十面相シリーズ (Niju Menso) のヒーローは小林芳雄少年 (Yoshio Kobayashi) である。しかも、小林芳雄少年 (Yoshio Kobayashi) は、少年探偵団 (Boy Detectives) の団長なのである。それと同じ構造を、このシリーズも欲したのではないだろうか。
そして、その結果、設定されたのが、ホシノ・イサム (Isamu Hoshino) [演:津沢彰秀 (Akihide Tsuzawa)] 少年なのである。

だけれども、このTV番組『ウルトラマン (Ultraman)』では、回を重ねるに従って、制作者側の想いもよらぬ程に、こどもたちが物語の中に、より積極的に介入してきたのである。
つまり、誰もホシノ・イサム (Isamu Hoshino) [演:津沢彰秀 (Akihide Tsuzawa)] 少年という特別な存在を必要としなくなったのだ。
逆に言えば、ホシノ・イサム (Isamu Hoshino) [演:津沢彰秀 (Akihide Tsuzawa)] 少年の様な、常住坐臥、常に"怪獣"が出没する現場に立ち逢う人物よりも、偶然に事件に遭遇してしまって、その結果、"怪獣"との闘いに於いて、重要な役割を演ずる方が、彼らの眼からみれば"現実的"であり、"理想的"な関わり方なのである。
第20話『恐怖のルート87 (Terror On Route 87)』 [監督:樋口祐三 脚本:金城哲夫 特技監督:高野宏一] のムトウ・アキラ (Akira Muto) [演:榊原秀春]、第26・27話『怪獣殿下 (The Prince Of Monsters)』 [監督:円谷一 脚本:金城哲夫若槻文三 特技監督:高野宏一] の鈴木治 (Osamu Suzuki) [演:稲吉千春]、第30話『 (Phantom Of The Snow Mountains)』 [監督:樋口祐三 脚本:金城哲夫 特技監督:高野宏一] の雪ん子 (The Snow Child) [演:富永幸子]、第33話『 (The Forbidden Words)』 [監督:鈴木俊継 脚本:金城哲夫 特技監督:高野宏一] のフジ・サトル (Satoru Fuji) [演:川田勝明]。それ以外にも登場する、名もなきこども達。みんなそうだ。毎週TVを観ているぼく達は、ホシノ・イサム (Isamu Hoshino) [演:津沢彰秀 (Akihide Tsuzawa)] 少年ではなくて、彼らの中に同じもの、己自身を観いだしているのである。
例えば第15話『恐怖の宇宙線 (Terrifying Cosmic Rays)』 [監督:実相寺昭雄 脚本:佐々木守 特技監督:高野宏一] で、己らが描いた二次元怪獣二次元怪獣ガヴァドン (Gavadon Type A) が実体化した時、二次元怪獣ガヴァドン (Gavadon Type A) の生みの親であるムシバ (Bad Tooth) [演:川田勝明] を代表とするこどもたちは、ウルトラマン (Ultraman) を文字通り、敵視し、敵対するのである。「ウルトラマン、やめろ」と。
少なくとも、この様な役割は、科学特捜隊 (SSSP : Science Special Search Party) 〜ウルトラマン (Ultraman) の側にいるホシノ・イサム (Isamu Hoshino) [演:津沢彰秀 (Akihide Tsuzawa)] 少年ではなす術もない役回りである。
しかもそれは、二次元怪獣ガヴァドン (Gavadon Type A) に限った話でもない。それ以上に、番組を観ている当時のこどもたちの殆どが、ウルトラマン (Ultraman) の側でなく、"怪獣"の側に立つ事は、決して少なくはないのである。

ふと、TVアニメ『機動戦士ガンダム (Mobile Suit Gundam)』[ 19791980年放映 名古屋テレビ系列] で、物語冒頭は主人公アムロ・レイ (Amuro Ray) の恋人然として登場して来たフラウ・ボゥ (Fraw Bow) が次第に、この物語を観るぼく達にとっては、徐々にその存在意義を喪っていった事を憶い出した。

さて。

images
そのホシノ・イサム (Isamu Hoshino) [演:津沢彰秀 (Akihide Tsuzawa)] 少年が、謎の怪音の正体を暴きに、古城の古井戸に侵入する事から、物語は始まる。そして、そこで彼は、巨大な眼に遭遇するのだ [上記掲載画像はこちらから]。

と、書き綴ってみると、古典的な怪奇モノにも古典的なSFにも相通じる出だしだ。
少なくとも、怪異の第一発見者が地下の巨大な物体に遭遇する物語と言えば、映画『空の大怪獣ラドン (Rodan)』 [本多猪四郎 (Ishiro Honda)監督作品 1956年制作] がぼくにとってのデフォルトだ。
しかも、その巨大な眼は、巨大な透明な生物のモノであり、それが己の食糧を求めて、人間社会を蹂躙するのだ。そこで、ハワード・フィリップス・ラヴクラフト (H. P. Lovecraft) の短編『ダンウィッチの怪 (The Dunwich Horror)』 [1928年発表] をも想起してしまうのは、飛躍し過ぎだとしても。
つまり、透明怪獣ネロンガ (Neronga) が透明なままの得体の知れない存在 / 不気味な存在から、己の正体を完全に顕わすまでは、SFというよりも怪奇や幻想の密度の方が濃いのである。
有り体に言えば、『ウルトラマン (Ultraman)』の物語であるよりも、『ウルトラQ (Ultra Q)』の物語であると、断定出来るのかもしれない。ここでは『ウルトラマン (Ultraman)』はまだ、独自のドラマツルギーを獲得していないのだ。

[例えば同じ事は前話である第2話『侵略者を撃て (Blast The Invaders)』 [監督:飯島敏宏 脚本:千束北男 特技監督:的場徹] にも言える。物語全体をイデ・ミツヒロ (Mitsuhiro Ide) [演:二瓶正也 (Masanari Nihei)] 隊員の回想というオブラートでくるんではいるものの、その中で描かれるのは、いくつもの怪奇的な演出なのだ。宇宙忍者バルタン星人 (Alien Baltan) の手によって凝結してしまったヒトビトの描写や、夜の街にその巨大化した姿を顕す宇宙忍者バルタン星人 (Alien Baltan) の異様や、その分身の術など。前シリーズ『ウルトラQ (Ultra Q)』に登場した誘拐怪人ケムール人 (Kemurloid) の声をそのまま流用した不気味さも、だ。
つまり、回想というオブラート、しかも設定上はコメディ・リリーフ的なイデ・ミツヒロ (Mitsuhiro Ide) [演:二瓶正也 (Masanari Nihei)] 隊員のものという外枠を設ける事によって、かろうじて『ウルトラマン (Ultraman)』の物語足りえているのである。]

だから、逆に言えば、いったいいつどこで、『ウルトラマン (Ultraman)』の物語が生成しえたのかは、もう一度、見直してみる必要はあるのかもしれない。
勿論、そこにヒーローであるウルトラマン (Ultraman) の在 / 不在は、関係ない。彼が登場しても『ウルトラマン (Ultraman)』の物語足り得ないドラマもあり得るし、それとは逆に、彼の不在にも関わらず、『ウルトラマン (Ultraman)』の物語としての構成要件を満たすドラマもあり得るのである。
前シリーズ『ウルトラQ (Ultra Q)』のなかにきみは、正義の味方ウルトラマン (Ultraman) が超然と立つその幻を観た事は、なかったのだろうか。

次回は「」。

附記 1.:
透明怪獣ネロンガ (Neronga) の着ぐるみの変遷については、既にあちらこちらで書かれているので、ここでは指摘しない。
敢て書くとすれば、友好珍獣ピグモン (Pigmon) が隕石怪獣ガラモン (Garamon) の改造であり、有翼怪獣チャンドラー (Chandrah) が冷凍怪獣ペギラ (Peguila) の改造であり、エリ巻き恐竜ジラース (Jirass) がかの怪獣王ゴジラ (Godzilla) の改造である事は、当時のおさないぼく達から観ても、嫌になるくらいに明確だったけれども、地底怪獣バラゴン (Baragon) と地底怪獣パゴス (Pagos) と透明怪獣ネロンガ (Neronga) と地底怪獣マグラー (Magular) とウラン怪獣ガボラ (Gabora) が同じ着ぐるみを母体としていたとは、全く気づかなかった。長じて読み耽った幾つもの研究本を通じて、ようやくにその事実を知りえたのである。
それは、宇宙怪獣ベムラー (Bemular) が脳波怪獣ギャンゴ (Gyango) となって、どくろ怪獣レッドキング (Red King) が青色発泡怪獣アボラス (Aboras) となって、二次元怪獣ガヴァドン B (Gavadon Type B) が灼熱怪獣ザンボラー (Zambolar) となった事も、同様の事である。

附記 2.:
そおゆう意味で、透明怪獣ネロンガ (Neronga) は、円谷作品 (Tsuburaya Productions) に登場する幾つもの地底怪獣の文脈を、物語上の設定ばかりではなくて、その形態上も引き継いでいる事になる。
ある種の恐竜の巨大な体躯を連想させると同時に、猛牛の様な巨牛の様な、鷹揚な体躯は、円谷作品 (Tsuburaya Productions) での地底怪獣ならではのモノである。
だけれども、それとは別に忘れてはならないのは、その連想を裏切るナニカが、彼らには皆、備わっている事である。
透明怪獣ネロンガ (Neronga) で言えば、己の食糧である電力を吸収する摂食器であると同時に、そこから外敵に向けて放電する武器でもある、頭上にある一対の突起物だ。仮令、そのふたつの役割を度外視したとしても、鋭角的なその形状は、昆虫的なナニカを彷彿とさせるのだ。
そうして、その様な、非脊椎動物的なモノや非生物的なモノは、他の地底怪獣にも散見されるのである。

附記 3.:
物語冒頭で透明怪獣ネロンガ (Neronga) の巨大な眼に脅かされたホシノ・イサム (Isamu Hoshino) [演:津沢彰秀 (Akihide Tsuzawa)] 少年は、物語後半において、スパイダー・ショット (Spider-shot) の一撃で、透明怪獣ネロンガ (Neronga) の視力を奪う。その結果、これまで観えない事によって優位にあった透明怪獣ネロンガ (Neronga) は、今度は己自身が視界を喪う事によって、ウルトラマン (Ultraman) との闘いにおいて、不利な立場へと追い込められ、敗北を喫する事になってしまう。
つまり、ここでも前シリーズ『ウルトラQ (Ultra Q)』の有名な導入句「これから30分間、 あなたの眼はあなたの体から離れ、この不思議な空間へと入っていくのです (For the next 30 minutes, your eyes will leave your body and enter inside this fantasy time.)」[ナレーション:石坂浩二 (Koji Ishizaka)] の変奏曲が奏でられているのである。
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