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2013.01.20.08.41

『ウィ・スリー (WE THREE WITH PHINEAS NEWBORN, PAUL CHAMBERS)』 by ロイ・ヘインズ (ROY HAYNES)

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一見、三者均等のユニット名の様に思えてしまうかもしれないが、アルバムのクレジットをよく読めば解る様に、本作品のリーダーは、ロイ・ヘインズ (Roy Haynes)。ドラマーが主役となるべき作品である。

だけれども、この作品を聴く殆どのモノは、リーダーであるロイ・ヘインズ (Roy Haynes) ではなくて、サイドマンである筈のピアニストを聴く事になる。そして、その結果、この作品の評価は充分なものとなっている。

ところでドラマーではなくてピアニストをという、それは制作側の意図でもあるかもしれないし、もしかしたら、リーダーである筈の、ロイ・ヘインズ (Roy Haynes) 自身の意図なのかもしれないのだ。

アルバム・ジャケットを観れば、左からロイ・ヘインズ (Roy Haynes)、フィニアス・ニューボーン (Phineas Newborn) そしてポール・チェンバース (Paul Chambers) という並びであり、座ったふたりと立ち姿のひとりという構図はそのまま、ステージ上でのピアノ・トリオ (Piano Trio) のポジショニングだ。

本作品が制作された当時、ロイ・ヘインズ (Roy Haynes) は知名度こそ他の著名ドラマーには劣るものの、ミュージシャン・サイドからの評価と人気は確固たるものであって幾つもの、セッションやレコーディングに起用されている。

それは、ポール・チェンバース (Paul Chambers) にしても同じ事で、彼はむしろ、ミュージシャン・サイドのみに留まらず、リスナーや評論家を含めても、圧倒的な評価と人気と実績を誇っているのである。
この時代の、この種のジャズ作品のベースと言えば、彼かダグ・ワトキンス (Doug Watkins) であって、殆どの作品が、どちらかでなければ、もう一方であるという様な状況であったと聴く。しかも、ふたりは同郷出身の、同級生で従兄弟同士という関係なのである。

それに引き換えて、本作品の真の主人公であるフィニアス・ニューボーン (Phineas Newborn) はデヴュー・アルバム『ヒア・イズ・フィニアス (Here Is Phineas)』 [1956年発表] を発表しての2年後、新進気鋭のピアニストとして、俄然、注目と人気を集め出したばかりの頃なのである。

だから、ロイ・ヘインズ (Roy Haynes) とポール・チェンバース (Paul Chambers) という、盤石の土俵を用意したその上に、若力士フィニアス・ニューボーン (Phineas Newborn) をたたせてみた、という構図なのである。

だけれども、実際問題として、この様な構図を考えたのは一体、誰であるのか、というと、それは解らない。

最初に、ロイ・ヘインズ (Roy Haynes) のリーダー作をという企画意図があったのか、それとも、新進気鋭のピアニストをフィーチャーする為の企画意図が先にあったのか。
リーダー作をオファーされたロイ・ヘインズ (Roy Haynes) 自らが、フィニアス・ニューボーン (Phineas Newborn) を起用したのか、それとも、リーダー作制作の条件としてレーベル側から、ロイ・ヘインズ (Roy Haynes) に打診があったのか。
その辺は謎だし、いくら考えても、そのどちらもあり得そうで、仕方ならないのだ。

何故ならば、もし仮に本作品がブルー・ノート (Blue Note Records) 作品ならば自ずと答えが観えてきそうなところなのだけれども、本作品は残念ながら、ブルー・ノート (Blue Note Records) 作品ではない。
プレスティッジ (Prestige Records) の作品なのである。
[プレスティッジ (Prestige Records) は、本作発売当時、ニュー・ジャズ (New Jazz) と名乗っており、オリジナル盤にもその記載がみえる。]

プレスティッジ (Prestige Records) には、名盤も数多くあるけれども、それは殆どの場合、"その結果"産まれたのに過ぎないからだ。
例えば、マイルス・デイヴィス (Miles Davis) 作品で言えば、所謂"クリスマスの喧嘩セッション (Christmas Eve 1954 Session)"もあれば"マラソン・セッション (Sessions On 11 May and 26 October 1956)"もあるけれども、それらから名演 / 名作 / 名盤が産まれたのは、偶々の偶然の産物でしかないからだ。
そおゆう状況を事前に設定したのは、あくまでもレーベル・サイド、ビジネス・サイドの戦略なり戦術なのだけれども、実際のレコーディング当日に、その様な演奏が産まれる事までは想定していない。
そこに居た、個々のミュージシャン自身の、プロデュース能力によるものなのだ。

だから、本作でも、収録曲6曲のうち、フィニアス・ニューボーン (Phineas Newborn) 作曲作品は『シュガー・レイ (SUGAR RAY) 』のみ、その代わりに、レイ・ブライアント (Ray Bryant) 作品が2曲も収録されている [『リフレクション (REFLECTION)』と『スニーキン・アラウンド (SNEAKIN' AROUND)』]。
普通ならば、プレスティッジ (Prestige Records) はこの2曲のレイ・ブライアント (Ray Bryant) 作品の著作権 / 出版権を押さえているのだろうなぁという辺りまで、考えを及ばすべきなのかもしれないが、そこまで考える必要はない。

それとは逆に、既にシーンにその場を見いだしている筈のレイ・ブライアント (Ray Bryant) 作品を何故、フィニアス・ニューボーン (Phineas Newborn) が取り上げたのかと、考えるべきなのだ。
ふたりのピアニストに共通する技術と表現力と度量を考えるべきかもしれないし、それとは逆に、一方にあって他方にないものを考えるべきなのかもしれない。

大雑把に言ってしまうと、フィニアス・ニューボーン (Phineas Newborn) もレイ・ブライアント (Ray Bryant) もバド・パウエル (Bud Powell) の流れを汲む所謂パウエル派 (Bud Powell School Of Bebop Rhythm And Harmony) に分類されるのだろうけれども、それぞれにそうではない要素を多いに主張している様なのだ。
後期印象派 (Post-impressionnisme) が、印象派 (Impressionnistes) という言葉を呑込みながらも決して印象派 (Impressionnistes) の傍流ではない様に、このふたりのピアニストも所謂パウエル派 (Bud Powell School Of Bebop Rhythm And Harmony) でありながらも、そこからはみ出た部分が彼らの特色である様なのだ。

では、そこから先にさらに踏み込んで、ふたりのピアニストそれぞれの特色を述べよと言われてしまうと、もう、手の施しようはない。
それを語るのに充分な聴込みは、今のぼくには、まだ出来ていないからなのだ。

尤も、文章の流れ上とは言え、選曲をあたかも唯一のメロディー楽器奏者であるピアニストの責にあたる様に書いているけれども、本来ならば、収録楽曲の選曲の権利と責務は、リーダーが追うべきものなのだ。
つまり、この2曲を選んだのがロイ・ヘインズ (Roy Haynes) ではないとは言えないのだ。

そこまで考えを及ばせてしまうと、頭の中の疑問符はまた、冒頭に立ち返ってしまう。

だけれども、そんな疑問符をいくつも抱えても、この作品はそれを一向に解消してくれない。

収録曲のひとつである『アフター・アワーズ (AFTER HOURS)』に代表される様に、ここで聴くべきものは、リラクゼーションに徹した、和やかで穏やかな、三人の演奏なのである。
こむつかしい事を考えるのはせめて、音楽が終わってからの事であって、ふたりのピアニストの略歴やら当時の音楽シーンの状況を調べるのは、それからであっていい。

ちなみに、ぼくは本作品を、ポール・チェンバース (Paul Chambers) の演奏を聴きたくて、入手した。

ものづくし(click in the world!)124. :
『ウィ・スリー (WE THREE WITH PHINEAS NEWBORN, PAUL CHAMBERS)』
by ロイ・ヘインズ (ROY HAYNES)


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ウィ・スリー (WE THREE WITH PHINEAS NEWBORN, PAUL CHAMBERS))』 by ロイ・ヘインズ (ROY HAYNES)

1. リフレクション
 REFLECTION (Ray Bryant) 4:21
2. シュガー・レイ
 SUGAR RAY (Phineas Newborn) 6:22
3. ソリティアー
 SOLITAIRE (Guion - Borek - Nutter - Wigham) 8:47
4. アフター・アワーズ
 AFTER HOURS (Parrish - Feyner - Bruce) 11:14
5. スニーキン・アラウンド
 SNEAKIN' AROUND (Ray Bryant) 4:21
6. アワ・デライト
 OUR DELIGHT (Tadd Dameron) 4:01

ロイ・ヘインズ (ds)
 Roy Haynes (ds)
フィニアス・ニューボーン (p)
 Phineas Newborn (p)
ポール・チェンバース (b)
 Paul Chambers (b)

1958年11月14日録音
Recorded November 14, 1958

Original recordings produced by Bob Weinstock
Original recordings engineered by Rudy Van Gelder
(Van Gelder Studios, Hackensack, New Jersey.)
Cover Design by Esmond Edwards
Original notes by IRA GITLER

This album is remastered on JVC DAS-900 audio mastering system using 20 bit A/D converter with K2 interfaces.

Mastering Engineer : Tamaki Beck for JVC Studios

ぼくの所有している国内盤CDは、悠雅彦 (Masahiko Yuh) のライナーノーツが掲載されており、その末尾には「本解説はLP発売時のものを使用しております」とある。
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