2012.12.24.12.59
こんな夢をみた。

"La Lecon Particuliere
" directed by Michel Boisrond
つまらない用事で、母校へ行かなければならない。卒業して以来、初めての事だ。数十年振りとなるだろうか。
母校と言っても、名称がそのまま引き継がれているだけで、なにもかもが違う。そもそもとっくの昔に移転してしまっている。
その母校とやらには、初めて訪れるのだ。
市街地にいくつも建っている高層建築の中にあって、その数フロアを借り受けている。校舎と言うイデアは既にない。
では、体育の授業はどうするのかと言うと、教師と生徒がこぞって、公営のスポーツ・ジムに通う。
ぼく達の頃からみれば、遥かに整った設備が提供されているのだろうけれども、もはや、学校という集団は解体されて、教えるものと教わるものの、個々それぞれの関係性だけが遺されている。
否、それさえもとっくに、潰えてしまっているのかもしれない。
高速のエレベーターに乗って、向かうべきフロアに向かう。片付けなければならない用向きは事務的なものなので、職員室なぞには用はない。例え、あったとしても、ぼくが教わった人々は既に退任したか転勤したか、誰もいないのに決まっている。
だが、教師ではないものの、たったひとりだけ、学生時代のぼくを知るものがいる。
用件の前に、彼女に声だけでもかけておこう。
重い扉の向こうには、簡単な診察室と、いくつかのベッドがある筈だ。
ノックをして、保健室にはいる。
そこに、彼女がひとり、白衣をまとって座っている。
訪れたぼくに驚いた彼女以上にぼくが驚いたのは、あの時のままの彼女がそこにいる事である。
昔とちっとも、変わっていない。陳腐な台詞でしかないが、それがありのままの事実なのだ。
ほんの一瞬、不意の訪問者が誰なのか、解らない。
名乗る前に、一歩、室内に脚を進め、扉を閉めようとして、ようやく、ぼくがぼくであると気づく。
扉は閉めてはいけない、あけたままにして。
あの時の彼女の台詞がそのまま再現される。
だから、ぼくはわざと大きな音をさせて、扉を閉める。
だめ、扉を開けて。きっと他の生徒が来るから。
彼女は、ぼくの一挙一動に向けて、禁止の言葉を投げかけるが、それをそのまま総て、ぼくはその反対の行動をとる。
何故ならば、それがふたりの約束だからだ。あの時の約束がそのまま、今でも通用している。
彼女の発することばに逆らいながら、すこしづつ、彼女の許へと歩み寄る。
彼女がそれを望んでいるからだ。
己のことばがすべて無視されて行く中で、後ずさりする彼女の頬は、次第に紅潮する。くちからは、叫びにも似た禁止の命令を発しながら、ふたつの瞳は、輝き、そして、潤んでくる。
そんなたわいのないゲームに勤しんで、ようやく、ぼくは彼女の唇に触れる。厚くて熱いものがぼくのくちのなかに侵入して来て、そのなかのすべてを舐め尽くし、呑み干そうとしている。
眼が醒めたらベッドの中にいる。くちのなかは、彼女の舌の蠢きがそのまま遺っている。
夢なんだろうか。
いつもの部屋のベッドの中に、潜り込んでいるのが今のぼくだ。
きっと、夢なのだろう。
そうして、起きると寝るのふたつの選択肢の間を逡巡していると、部屋の外が騒がしい。
個々の部屋部屋の扉を開け放つ音と、駆け回る足音、そして、怒号や悲鳴の様なものが聴こえる。
ベッドの中のぼくは身を固くしたが、自室そのものはしっかりと施錠されている事を必死になって憶い起こす。
なにが起きているのか皆目、検討はつかないが、一切を黙していれば、ここは留守だと思うだろう。そして、落ち着いたころを見計らって、逃げるなり助けを求めればよい事なのだ。
それにこれは夢かもしれないのだ。焦る必要も怖れる必要もないのに違いない。
だが、その数分後、ベッドごと、ぼくの身柄は捕獲されて、何処かへと連れ去られてしまう。
数人の男達が侵入して来た結果の事だが、あたまからすっぽりとシーツにくるまったぼくは、相手の一切を知る事なく、彼らの思うが侭にされてしまうのだ。

"Don't Bring Me Down" from the album "Animalisms
" by The Animals

"La Lecon Particuliere
つまらない用事で、母校へ行かなければならない。卒業して以来、初めての事だ。数十年振りとなるだろうか。
母校と言っても、名称がそのまま引き継がれているだけで、なにもかもが違う。そもそもとっくの昔に移転してしまっている。
その母校とやらには、初めて訪れるのだ。
市街地にいくつも建っている高層建築の中にあって、その数フロアを借り受けている。校舎と言うイデアは既にない。
では、体育の授業はどうするのかと言うと、教師と生徒がこぞって、公営のスポーツ・ジムに通う。
ぼく達の頃からみれば、遥かに整った設備が提供されているのだろうけれども、もはや、学校という集団は解体されて、教えるものと教わるものの、個々それぞれの関係性だけが遺されている。
否、それさえもとっくに、潰えてしまっているのかもしれない。
高速のエレベーターに乗って、向かうべきフロアに向かう。片付けなければならない用向きは事務的なものなので、職員室なぞには用はない。例え、あったとしても、ぼくが教わった人々は既に退任したか転勤したか、誰もいないのに決まっている。
だが、教師ではないものの、たったひとりだけ、学生時代のぼくを知るものがいる。
用件の前に、彼女に声だけでもかけておこう。
重い扉の向こうには、簡単な診察室と、いくつかのベッドがある筈だ。
ノックをして、保健室にはいる。
そこに、彼女がひとり、白衣をまとって座っている。
訪れたぼくに驚いた彼女以上にぼくが驚いたのは、あの時のままの彼女がそこにいる事である。
昔とちっとも、変わっていない。陳腐な台詞でしかないが、それがありのままの事実なのだ。
ほんの一瞬、不意の訪問者が誰なのか、解らない。
名乗る前に、一歩、室内に脚を進め、扉を閉めようとして、ようやく、ぼくがぼくであると気づく。
扉は閉めてはいけない、あけたままにして。
あの時の彼女の台詞がそのまま再現される。
だから、ぼくはわざと大きな音をさせて、扉を閉める。
だめ、扉を開けて。きっと他の生徒が来るから。
彼女は、ぼくの一挙一動に向けて、禁止の言葉を投げかけるが、それをそのまま総て、ぼくはその反対の行動をとる。
何故ならば、それがふたりの約束だからだ。あの時の約束がそのまま、今でも通用している。
彼女の発することばに逆らいながら、すこしづつ、彼女の許へと歩み寄る。
彼女がそれを望んでいるからだ。
己のことばがすべて無視されて行く中で、後ずさりする彼女の頬は、次第に紅潮する。くちからは、叫びにも似た禁止の命令を発しながら、ふたつの瞳は、輝き、そして、潤んでくる。
そんなたわいのないゲームに勤しんで、ようやく、ぼくは彼女の唇に触れる。厚くて熱いものがぼくのくちのなかに侵入して来て、そのなかのすべてを舐め尽くし、呑み干そうとしている。
眼が醒めたらベッドの中にいる。くちのなかは、彼女の舌の蠢きがそのまま遺っている。
夢なんだろうか。
いつもの部屋のベッドの中に、潜り込んでいるのが今のぼくだ。
きっと、夢なのだろう。
そうして、起きると寝るのふたつの選択肢の間を逡巡していると、部屋の外が騒がしい。
個々の部屋部屋の扉を開け放つ音と、駆け回る足音、そして、怒号や悲鳴の様なものが聴こえる。
ベッドの中のぼくは身を固くしたが、自室そのものはしっかりと施錠されている事を必死になって憶い起こす。
なにが起きているのか皆目、検討はつかないが、一切を黙していれば、ここは留守だと思うだろう。そして、落ち着いたころを見計らって、逃げるなり助けを求めればよい事なのだ。
それにこれは夢かもしれないのだ。焦る必要も怖れる必要もないのに違いない。
だが、その数分後、ベッドごと、ぼくの身柄は捕獲されて、何処かへと連れ去られてしまう。
数人の男達が侵入して来た結果の事だが、あたまからすっぽりとシーツにくるまったぼくは、相手の一切を知る事なく、彼らの思うが侭にされてしまうのだ。

"Don't Bring Me Down" from the album "Animalisms
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