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2012.12.16.07.11

"Poupee de son" by France Gall

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このベスト盤が発売された当時は、本作品と同時にCD5枚組のよりコンプリートに近いものも、発売された [ヴィジュアル・デザインは両者共通のモノである]。

当時のぼくは、先ず殆どと言っていい程に、彼女と彼女の作品は初体験にあたるので、その5枚組にそそられながらも、通常盤であり普及盤である、本作品を入手したのである。つまり、CD1枚組だ。
ところが、程なくして、友人のひとりが、ぼくが諦めてしまった方の、CD5枚組を購入したというのである。しかも、それを態々、ぼくのところまでやってきて見せびらかすのである。当時は、そんな風に輸入盤専門店でせしめた最新の作品や、なかなかおめにかかれない貴重な作品を、閑さえあれば持参して、情報交換していた時代だから、毎度の事と言えば、毎度の事だ。
ただ、普段と違うのは、その友人がいつも手当たり次第に漁り、手当り次第に買い集めていたモノとは、無縁のモノなのである。

にも関わらずに、大枚をはたいてぽぉんと彼に、CD5枚組を購入した理由はなんなのか、それとも、彼にそこまでの行為をさせたモノはなんなのか。
それは大きな疑問符であると同時に、ぼくになにかを気づかせる為の、大きな感嘆符であったのだ。

フランス・ギャル (France Gall) というシンガーに辿り着く道筋は、大きく分けて、ふたつある。
ひとつは、フレンチ・ポップス (French Pop Music) というジャンルへの興味と関心であり、もうひとつはセルジュ・ゲンスブール (Serge Gainsbourg) という異端な作詞作曲家への興味と関心である。

と、断言してみたモノの、事はそう簡単なモノではない。上の文章で、異端という烙印を押されたセルジュ・ゲンスブール (Serge Gainsbourg) 自身が、フレンチ・ポップス (French Pop Music) を開拓し続けていた、そのジャンルの保守本流でもあるからだ。

しかも、さらにややこしい事に、異端であると同時に保守本流であるというポジショニングは、彼だけの専売特許ではない。
フィル・スペクター (Phil Spector) 然り、ブライアン・ウィルソン (Brian Wilson) 然り。
さらに言えば、大瀧詠一 (Eiichi Ohtaki) も、山下達郎 (Tatsuro Yamashita) も、きっとそうなのだ。
ただ、違うのは、どちらの側面が、彼らのパブリック・イメージとして流通しているのか、という事なのである。

そおゆう意味では、セルジュ・ゲンスブール (Serge Gainsbourg) だけが、他のアーティストとは異なるモノを、ぼく達に観せているのかもしれない。

と、言う風に書き進めて行くと、セルジュ・ゲンスブール (Serge Gainsbourg) 史観に従って、フランス・ギャル (France Gall) というシンガーへと、ぼくが辿り着いた様に思われるかもしれない。
だが、実際は、逆なのだ。

冒頭で"殆どと言っていい程に、彼女と彼女の作品は初体験にあたる"と綴ってしまっているけれども、厳密に言えば、この表現は、あまり正しくはない。
何故ならば、意識的に、意図的に、彼女と彼女の作品に向かうのが、その時が初めてであるという様に、語るべきなのだ。
無意識で、もしくは、あたかも、空気の様な存在として、彼女と彼女の作品を聴いていた筈なのである。しかも、それは"意識的に、意図的に"、音楽に向かう遥か以前の昔、10代はおろか、学校に上がるよりも前の時の事なのである。

何故そんな事が、と語るとしたら、恐らく、ザ・ビートルズ (The Beatles) という存在と彼らの音楽について語る事になると思うので、ここではこれ以上は、突っ込まない。

ただ、指摘出来るのは、冒頭に登場した友人も、ぼくと同じ様な経路を辿って来たという事なのだ。彼にとっても、フランス・ギャル (France Gall) は、既に既知のモノである以上の存在なのである。

だけれども、その存在と言うモノを"懐かしさ"とか"ノスタルジック"という、そんな後ろ向きの想いだけによって、支えられているのではない、という事は、きちんと書いておくべきかもしれない。

何故ならば、彼女の音楽は、この作品が発売された当時でも、そして今でも、斬新で刺激的な新しさがあるからだ。
古びる事がない、のではない。
永遠に、新しいのである。

ここから先は、附記 [もしかしたら本論よりもながい]:

音楽を聴くモノ、しかもそれが男性であるのならば、誰だって皆、セルジュ・ゲンスブール (Serge Gainsbourg) になりたいのは当然なのだ。
小西康陽 (Yasuharu Konishi) は言うに及ばず、かつての小室哲哉 (Tetsuya Komuro) もつんく♂ (Tsunku) も、今またぶいぶい言わしてる秋元康 (Yasushi Akimoto) も、それぞれの音楽の方向性は違えども、セルジュ・ゲンスブール (Serge Gainsbourg) の存在を看過する事は、先ずありえない。

だけれども、その理由は、公私を共にしたジェーン・バーキン (Jane Birkin) という存在がいるからではない。
手玉にとるつもりが逆に手玉に取られたブリジット・バルドー (Brigitte Bardot) という存在がいるからではない [決して靡かないおんな、そんなおんなに翻弄され続けるのも、逆説的には、誰だって快楽な筈なのだ]。

実は、フランス・ギャル (France Gall) あってのセルジュ・ゲンスブール (Serge Gainsbourg) という位置づけが、実は非常に羨ましくも悩ましくもさせるのである。上に挙げた"プロデューサー"達の意識には、ジェーン・バーキン (Jane Birkin) でもない、ブリジット・バルドー (Brigitte Bardot) でもない、フランス・ギャル (France Gall) の様な存在を、自己薬籠中のモノにしたい筈なのである。

ふたりの関わるエピソードの有名なモノに、ヒット曲『アニーとボンボン (Les sucettes)』に関するモノがある。
セルジュ・ゲンスブール (Serge Gainsbourg) の作詞作曲によるモノで、1966年にフランス・ギャル (France Gall) がシングル・ナンバーとして発表して大ヒットした、あの曲だ。
この曲が、フェラチオ (Fellatio) のアナロジーで出来ている事は、既に有名な話で、スタッフや関係者には、御馴染みのモノだった。勿論、作者であるセルジュ・ゲンスブール (Serge Gainsbourg) 本人は、そおゆう曲として創り、そおゆう曲としての詞を書いた。確信犯なのである。
ただ、そのフェラチオ (Fellatio) の歌を唄う本人には一切知らされないモノであり、綴られている言葉の現義通りに解釈し、その様に唄っていた。だから、その曲の真意を理解しているモノにとっては、さらに、魅力的な曲として、響き渡る事になる。
後日、その真実を知らされたフランス・ギャル (France Gall) は、大ショックを受けたというのである。

と、いうのが『アニーとボンボン (Les sucettes)』に関する逸話、御馴染みのものだ。セルジュ・ゲンスブール (Serge Gainsbourg) を知るモノも、フランス・ギャル (France Gall) を知るモノも、いずれのファンも知っている。
このエピソードを伝えられている通りに解釈すれば、無垢な少女を言葉嬲りに嬲った中年男性の嫌らしさばかりが浮かんでしまう。
だが、そんな解釈がまかり通ればまかり通るだけ、無垢な少女の役を演じたフランス・ギャル (France Gall) も、嬲る中年男性を演じたセルジュ・ゲンスブール (Serge Gainsbourg) も、得るモノは大きくなるだけで、喪うモノはなにもない。
それぞれが、己自身のアーティスト性として確保したいパブリック・イメージが補填され補強されるだけで、決して、損なわれる事はないのだ。

[あぁ。勿論。実際に起こった実話だとしても、求められる解は同じ事だし、もし仮に、ここで語られている逸話が、まるっきりのデマでまかせ出鱈目の類だとしても、躍起になって火消しに廻るよりも、この際、その都市伝説に順応して行く方が、ふたりにとっては、遥かに得策なのだ。実際にこの曲以降も、アーティストとしてのふたりの関係性は続いている。この作品の中だけでも、セルジュ・ゲンスブール (Serge Gainsbourg) 提供楽曲は8曲もあるのだ。]

そして、そんな微妙な共犯関係を保ち続ける事の出来る"シンガー"を、"プロデューサー"達は、常に己の理想の中に育んでいるのである。
コドモでもいけないし、成熟したオトナでも駄目。そのどちらにも属さない、そのどちらからも乖離している、ある存在を、己のモノにしたいのである。

フランス・ギャル (France Gall) と言うシンガーは、そんな夢の様な理想的な存在である事を、セルジュ・ゲンスブール (Serge Gainsbourg) に許した、唯一の女性なのである。

ものづくし(click in the world!)123. :
"Poupee de son" by France Gall




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"Poupee de son" by France Gall

1 Popee de cire, poupee de son (S. Gainsbourg)
2 Christiansen (M. Vidalin / J. Datin)
3 Bebe requin (J. M. Rivat - F. Thomas / J. Dassin)
4 Les sucettes (S. Gainsbourg)
5 Laisse tomber les filles (S. Gainsbourg)
6 Dis a ton capitaine (M. Teze / G. Magenta)
7 Ne sois pas si bete (J. Wolf / P. Delanoe)
8 N'ecoute pas les idoles (S. Gainsbourg)
9 Mes premieres vraies vacances (M. Vidalin / J. Datin)
10 Sacre Charlemagne (R. Gall / G.Liferman)
11 L'Amerique (G. Magenta / E. Marney)
12 Baby pop (S. Gainsbourg)
13 Quand on est ensemble (R.Berthier - R. Gall / R. Lefevre - F. Pourcel)
14 Jazz a gogo (R. Gall / J. Datin)
15 Les rubans et la fleur (A. Goraguer / R. Gall)
16 Attends ou va-t'en (S. Gainsbourg)
17 Nous ne sommes pas des anges (S. Gainsbourg)
18 Pense a moi (R. Gall / J. Datin)
19 Teenie weenie boppie (S. Gainsbourg)
20 Bonsoir John John (G. Thibaut / C.H. Vic)
21 Le coeur qui jazze (R. Gall / A. Goraguer)
22 Avant la bagarre (R. Bernet / G. Magenta)
23 Ne dis pas aux copains (M. Teze / G. Magenta)

photo J.C. Dewolf
photo Odile Montserrat
photo Mayfair

photo de couverture Patrick Bertrand. Graphisme ALD.

Ed. Sidonie, souuf 7 : Ed. Integrity Music Corporation / Nancy Music Company
[P] 1964 Polydor (France) sauf Ne sois pas si bete et 18 [P] 1963 Polydor (France)
4, 12, et 20 [P] 1966 Polydor (France)
1, 6, 11, 16, 17 et 21 [P] 1965 Polydor (France)
3, 19 et 22 [P] 1967 Polydor (France)
[C] 1992 Polydor (France)
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