2019.12.11.08.35
春はまだきのふ産屋の聲をきく
糸1筋さかさに吊らるる赤児の掌
まだ3日ひずけ違へて申告す
ひきつづき靴下のしたに痕があり
2019.12.11.08.35
嗤ふ妻かけたる林檎が歯がゆくて
春はまだきのふ産屋の聲をきく 糸1筋さかさに吊らるる赤児の掌 まだ3日ひずけ違へて申告す ひきつづき靴下のしたに痕があり |
2019.12.04.08.33
ぼくも居ぬ夜に校庭きみひとり
ゆへ知りて争ふ蜥蜴のおよび腰 庖丁を紅くそめたり紅生姜 今宵より棺のなかに我も睡む 舌たらず1 - Aで尻拭い |
2019.11.27.08.46
はな咲かば火付けにいかむ納骨堂
黒ころも豹がごときに眠るをんな 鱗より垂線おろししらばくれ 西むいて割つた玉子の風見かな 枕を背あめを舐めたり昨夜の児 |
2019.11.20.08.36
怯えてるひとみに映ゑる映写技師
あかい陽をおもいおこせば散弾銃 蜥蜴きて喰らふかぎりのつちくれを 殴られて畝の向かふに陽のしずむ 後ろ手に丸腰のうへつつかるる |
2019.11.06.08.52
ぢぢ婆が3日遅れて灰となり
ねこのこと寝惚けてよぶなゆきえさん 子守婢が骰の紅はく弄ぶ しはぶくも洟もかみたし瓦斯マスク 常夏の狗のなまへがちんかじょん |
2019.10.30.08.52
平体で烟草みじかし唇うすく
聴き込みに不在証明として最初の句 はたちまへ慣れぬ銃器を笠とせり ひとり逃げをんな喰らゐに白い花 その娘だけトランクスのしたしつている |
2019.10.23.08.48
伍のうちでひときわ怖ひ眼鏡つ娘
ゆの花が噴きこぼれる朝にちよう日 嬉々として立ちむかふ也そのをんな 鯖2貫きこしめす母こんぶ茶も はつかまへ母のみるゆめ娘のせ |
2019.10.16.09.19
野辺にをり神のみぞ知るながるるを
大団円ののちにふたりは顚落し 指立つるかの女の小脇に本は『彗星』 仲なをりさしだす掌が鋲付き かへり討ち杖だけ遺し昇天す |
2019.10.09.08.48
つま愚痴る此れさいわいに雨のふる
やむ雨に戸板のかづだけ人の死ぬ お女臈の捲いた晒のはしはここ 梟の眼玉の奥の拍子抜け 跳ねたあときった鯉口よるのそこ |
2019.10.02.08.35
あかく濡れ噛ましたあとの猿轡
後悔はきゐろく爛れてぶらさがる 弁当の紐をといたり首級のゐる 安置所でけふも遭ふたりしらぬひと 侍女はまつうせた鍵こそおもふ壺 |